医療情報ほっと

 

膀胱がんのロボット手術

2019/9/14 土曜日

 

 今日は膀胱(ぼうこう)がんに対するロボット手術(ロボット支援下膀胱全摘除術)についてお話しいたします。膀胱がんは根が浅いタイプ(表在性)と根が深いタイプ(筋層浸潤性)に分けられます。表在性がんは膀胱鏡で削る手術で治療できますが、根が深い筋層浸潤性がんは膀胱を全部摘出する手術(膀胱全摘除術)が必要です。さらに膀胱を摘出した後は尿の出口を新たに作る必要があります(尿路変向といいます)。
 2018年4月に膀胱がんに対するロボット手術が保険適用となり、日本中で行われるようになりました。膀胱全摘除術は平均出血量が2リットル程度と、とにかく出血量が多いため多くの症例で輸血が必要になります。しかしロボット手術では150ミリリットル程度の少ない出血量で安全に行うことができるようになります。膀胱を取った後の尿路変向もロボット手術で行うのが理想的なのですが、難易度が高く、全国的にも尿路変向だけは開腹手術で行うのが一般的です。
 弘前大学医学部附属病院では全国に先駆けて、腸で新しく膀胱を作る術式(新膀胱造設術)をロボット手術で成功し、非常に良好な手術成績を報告しています。しかし全てをロボット手術で行えるわけではありません。前立腺がんのロボット手術同様、(1)心臓が悪い方(2)緑内障がある方(3)脳血管障害がある方(4)肺機能が悪い方―などはロボット手術を行えないことがあります。また、この手術は弘大附属病院か県立中央病院でしか行うことができません。まだまだ課題はありますがロボット手術の登場で前立腺がん、腎がん、膀胱がん全てにおいて、低侵襲かつ安全な手術が可能になりました。
 4回にわたる泌尿器がんとロボット手術についてお読みいただきありがとうございました。弘大附属病院ではロボット手術に限らず、泌尿器科疾患一般の相談やセカンドオピニオンなども積極的に受け入れております。どうぞお気軽にご相談ください。
(弘前大学附属病院泌尿器科講師 畠山真吾)

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腎がんのロボット手術

2019/9/7 土曜日

 

 今日は腎がんに対するロボット手術(ロボット支援下腎部分切除)についてお話しします。転移のない腎がんは手術で摘出が大原則です。4センチ以上の場合は腎をすべて摘出する「根治的腎全摘除術」が基本です。腫瘍の大きさ、位置により開腹手術と腹腔(ふっくう)鏡手術を使い分けます。腎臓は残せるなら残した方が良いので、比較的小さい腎がん(4センチ未満)の場合は腫瘍のみをくりぬく「腎部分切除術」が適応になります。腎部分切除術は開腹でも腹腔鏡でも可能ですが、開腹手術では大きな傷が必要になってしまい、腹腔鏡手術では腫瘍をくりぬいたあとの腎臓を縫い合わせる操作が非常に難しいのが難点でした。
 腎がんに対するロボット手術はこれらの弱点を解決できる画期的なものでした。ロボット支援下腎部分切除は4センチ未満の小さな腎がんに対して、おなかに5カ所、約1・5センチの穴を開け、腎臓から飛び出した腎がんのみをくりぬく術式です。最大の利点は、腎臓の縫合操作のやりやすさです。腹腔鏡手術で要求された高難度の縫合操作が簡単に行えるため、あっという間に普及し、現在では小さな腎がんの標準治療として世界中で行われています。さらに以前は困難であったやや大きな腫瘍や、内部に埋もれている難しい腫瘍も部分切除可能になりました。術後の腎機能や手術成績は他の術式と同等なのですが、正常な腎臓を残せる患者さんが増えたことは医学の進歩と言ってよいでしょう。腎部分切除を小さな腎がんにしか行わない理由は、(1)大きい腎がんは取り残す危険性が高いこと(2)大きく切除すると術後出血などの合併症が多くなること―などが挙げられます。以上の理由から腎がんすべてに適応があるわけではありませんが、ロボット手術により低侵襲かつ安全な手術が可能になっております。
 次回は膀胱(ぼうこう)がんに対するロボット手術(ロボット支援下膀胱全摘除術)について解説します。
(弘前大学附属病院泌尿器科講師 畠山真悟)

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前立腺がんのロボット手術

2019/8/31 土曜日

 

 きょうは前立腺がんに対するロボット(ダ・ヴィンチ)手術についてお話いたします。早期前立腺がんの治療には手術や放射線療法があります。どちらが良いかは患者さん個々によって異なりますが、元気で手術可能な方にはロボット手術をお勧めしております。
 開腹手術時代の前立腺がん手術が決して悪かったわけではありませんが、ロボットの登場により、わずか1・5センチの傷7カ所で、「前立腺周囲の構造がよく見える3Dカメラ」と「繊細に動くロボット」のおかげで、繊細かつ低侵襲に手術することが可能になりました。特筆すべきは出血量で、開腹手術では平均800ミリリットルであった出血が、ロボット手術では50ミリリットル程度になりました。傷も小さいため、退院する頃には痛みを感じない方が大半です。また、術後におきやすい尿漏れの回復スピードもとても速くなっています。さらにロボット導入後、前立腺がんの再発率も明らかに低下しておりますので、機能を十分に残しながら「がん」を根治することが可能になりました。
 ただ、残念ながらすべての患者さんにロボット手術が行えるわけではありません。頭を25度下げた状態(頭低位)で2~3時間の手術を行いますので、(1)心臓が悪い方(2)緑内障がある方(3)脳血管障害がある方(4)肺機能が悪い方―などはロボット手術を行えないことがあります。また弘前大学医学部附属病院、県立中央病院、三沢市立三沢病院でしか行えないため、すぐに手術を行えるわけではありません。受診したらすぐ手術、と覚悟を決めていらっしゃる方もおりますが、前立腺がんは急速に進行することは極めてまれですので、少しの待ち時間をご容赦いただければ幸いです。
 次回は小さな腎がんに対するロボット手術(ロボット支援下腎部分切除術)について解説いたします。
(弘前大学附属病院泌尿器科講師 畠山真悟)

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泌尿器科とロボット手術

2019/8/24 土曜日

 

 皆さん、こんにちは。泌尿器科は「おしっこで困った時に行く科」というイメージがあると思いますが、実際は、おしっこのトラブル(排尿障害)だけでなく、尿路結石、尿路感染症、腎不全(透析)、腎移植、そして泌尿器がん(抗がん剤治療と手術)を扱う科です。そのため、外科も内科も含んだ総合的な診療科ということになりますが、どちらかというと「腎臓や尿路の外科的治療(手術)を主に行う科」というのが正しい泌尿器科の位置づけです。
 今日はロボット(ダ・ヴィンチ)手術についてお話しします。昨年放送され話題になった医療ドラマ「ブラックペアン」で、最新手術支援ロボット「ダーウィン」が登場しますが、このモデルとなったのが実際の医療現場で既に使われている「ダ・ヴィンチ(da Vinci(R) サージカルシステム)」です。ダ・ヴィンチは3D内視鏡カメラと3本のアームを患者さんの体に挿入し、術者が離れた操縦席に座り遠隔操作で手術を行います。操縦席で手を動かすと、その手の動きがロボットに忠実に伝わり、繊細かつ低侵襲な手術が可能になります。特に体内の深い所にある臓器を、1~2センチの小さな傷から少ない出血で摘出するのを得意とします。2018年4月に肺がんや胃がんなど、幅広いがんの手術において保険適用になり急速に普及しています。現在、県内には弘前大学医学部附属病院に2台、県立中央病院に1台、三沢市立三沢病院に1台と計4台体制で治療しています。
 現在、ダ・ヴィンチ以外にも複数のロボット支援システムが開発され、数年内にはさらに進化したロボットも登場する予定です。今後の改良に大きな期待をしたいところですが、ロボット手術とはいえ実際に手術を行うのは医師であるため、優秀なロボットを上手に使いこなす医師の腕が重要である点は今も昔も変わりません。
 次回は前立腺がんに対するロボット手術の実力を解説します。
(弘前大学附属病院泌尿器科講師 畠山真悟)

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こどもの虐待2

2019/8/17 土曜日

 

 前回は児童虐待が疑われる場合は、それを察知した人が法律的にも通告の義務があることまで話しました。現在、ほとんどの市町村に広範囲にわたる関係者で構成された要保護児童対策地域協議会が設置されており、虐待を受けた子どもをはじめとする要保護児童、要支援家庭に関する情報を共有しながら子どもの健全育成を目指して活動しています。
 具体的に見守りや支援が必要な事例が生じた場合、豊富な経験を持った信頼のおける人を中心に、多職種の専門チームが連携しながら十分話を聞き、保護者から信頼される対応をすることが肝心です。
 初期対応につまずくと、その後、かたくなに接触を拒否し、最悪の結果を招いて事件化し、ニュースになることが時に見られます。また、転居した場合、情報の伝達が不十分だったり、状況の把握評価が異なったりして、虐待を防ぎえなかった例なども見られるので、関係者の緊密な連携が求められるところです。
 児童相談所には、状況によって親子分離や一時保護等の権限が付与されています。
 近年、子どもの貧困が社会問題となっていますが、経済的な面ばかりではなく関連した課題として取り扱われるべきです。いじめ、不登校、若年者の自殺、スマホ依存など子どもの生活習慣が大きく変わりつつある現代、子どもたちの心身の健全な発育と幸せを保障するにはどうしたらいいのか、その対応策を国を挙げて取り組むべき時です。
 私はある関連施設の嘱託医をしています。虐待のみならずさまざまな要因で収容されている子どもの養育に関わっています。中には養育環境が整わないままの若年者の望まぬ妊娠、突然の出産、育児放棄―。この世に生を受けた子どものあまりにも理不尽な運命を思うと胸が痛みます。
 適切な性教育の徹底が望まれます。子どもの虐待が発生しやすい養育環境の世代連鎖を断ち切るには、子どもがその環境から自立できるような教育を受けさせてあげることです。そのための「愛の手」が必要なのです。
(田口小児科医院院長 田口鉄治)

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