医療情報ほっと

 

皮膚がんの治療

2019/11/9 土曜日

 

 皮膚がんの治療は、手術、薬物療法(抗がん剤、免疫療法、分子標的薬など)、放射線療法を単独あるいは組み合わせて行います。
 早期の皮膚がんであれば、手術で切除することで、良好な予後が期待できます。しかし、切除後に大きな皮膚欠損ができることがありますし、例えば鼻やまぶたのような部位では、単純に縫い合わせると変形が生じて、見た目にも機能的にも問題になることもあります。そのような場合、他部位の皮膚を欠損部に移植する「植皮」や、皮膚と周囲組織(脂肪や筋肉など)を一緒に移動して欠損をふさぐ「皮弁」などの手術を行います。リンパ節転移がある場合は、周りにあるリンパ節も根こそぎ切除するリンパ節郭清(かくせい)を行うこともあります。
 手術で取り切るのが難しい場合例えば身体の奥深くのリンパ節や内臓への転移がある場合は、薬物療法や放射線療法を行うことがあります。薬物療法で使う薬剤としては、抗がん剤の他、がんの増殖や転移に関わる分子だけを狙い撃ちにする分子標的薬や、患者さんの身体にもともと備わっている“がん細胞を排除しようとする力(腫瘍免疫)”を回復させる免疫チェックポイント阻害薬などの新薬が開発されています。皮膚がんの種類や患者さんの状態により使用可能な薬剤は異なり、副作用にも注意が必要ですが、治療成績の良い新薬が出てきたことは患者さんにとり福音となっています。
 このように皮膚がんにはいろいろな治療法がありますが、すべての患者さんに対して、一律に治療法を選択することはできません。皮膚がんの状態(皮膚がんの種類や進行具合)や患者さんの状態(年齢や持病、日常生活の状態)、患者さんの要望などを総合的に考え、患者さんと主治医とが十分に相談して選ぶことが大切です。
 今回まで4回にわたり、皮膚がんについて説明させていただきました。皮膚がんについて少しでも理解いただけましたら幸いです。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座助教 六戸大樹)

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皮膚がんの診断

2019/11/2 土曜日

 

 皮膚科医は皮膚がんをどのように診断するのでしょうか。皮膚がんに限らず、皮膚の病気は体の表面に見えているため、その見た目が診断に重要であることは言うまでもありません。皮膚科医は、皮膚に起こった変化の経過に合わせ、発生部位、皮膚病変の形状や硬さ、色合い、場合によってはにおいなどの情報から、まさに五感をフル活用して診断を絞り込んでいきます。これは皮膚の腫瘍でも同じです。今回は皮膚がん診断で行われる検査について説明します。
 ダーモスコピーという、特殊な拡大鏡を用いて観察する検査があります。皮膚表面の特徴、メラニン色素の分布や濃さ、血管の形状などを詳しく評価し、見た目の臨床診断の正確さを高める検査です。皮膚がんの種類によっては、腫瘍の深さや転移の有無を確認する必要があるため、CT検査、PET-CT検査、MRI検査のような画像検査を行うこともあります。
 腫瘍の種類をしっかり特定する必要があるときは、病理組織検査を行います。これは、局所麻酔を施して、腫瘍の一部あるいは全体を切り取り(これを皮膚生検といいます)、顕微鏡で観察して診断する方法です。皮膚を顕微鏡で見ると、表皮、真皮と二層に分かれていて、さらに奥に脂肪組織があります。腫瘍が皮膚のどの層から出てきているのか、どのような細胞が、どのような増え方をしているのか、などの情報を総合して診断します。
 メラノーマや大きな皮膚がんの場合、リンパ節転移の有無を確認するため、センチネルリンパ節生検を行うことがあります。これは皮膚がんから一番最初にがん細胞がたどり着くリンパ節(センチネルリンパ節)を見つけ、そのリンパ節だけを摘出して転移があるかどうかを調べる方法で、早期のリンパ節転移を見つけることができます。
 以上のような検査を組み合わせて、皮膚がんの進行具合を評価し、治療計画を立てるのです。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座助教 六戸大樹)

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皮膚がんにも種類がいろいろ

2019/10/26 土曜日

 

 「皮膚がん」といっても種類がいろいろありまして、それぞれ、発生しやすい部位や転移のしやすさなどの特徴が違います。今回は、皮膚がんの中でも、頻度の高い三つについて説明します。
 最も多い皮膚がんは、基底(きてい)細胞がんで、皮膚がん全体の約4分の1を占めます。基底細胞がんは鼻、まぶたなどの顔の中心部に発生しやすいという特徴があります。初めは、小さな黒っぽい丘疹(きゅうしん)ですが、ゆっくりと大きくなり、やがて出血しやすくなることもあります。リンパ節や内臓に転移することはめったにありませんが、放置すると周囲の組織を壊しながら大きくなってしまいます。
 2番目に多いのは、有棘(ゆうきょく)細胞がんで、このがんも顔に出やすいです。日光角化症という前癌病変(がんを発生する可能性のある状態)から発生することが多く、転移することもあります。日光角化症は、長年の紫外線の影響で皮膚の表面にカサカサとした赤みができるもので、その一部が盛り上がってきた場合は、有棘細胞がんの可能性があります。
 3番目はメラノーマというメラニン色素を作る細胞から出るがんで、「ホクロのがん」とも呼ばれます。日本人では手足にメラノーマが発生することが多く、これらの部位に不規則に広がる茶色いシミができた場合は注意が必要です。メラノーマは、腫瘍に厚みが出てきたり、表面に潰瘍ができると転移しやすくなります。
 いずれの皮膚がんも、早期に治療できれば予後は良好です。ただ、皮膚がんは高齢になるほど発生しやすくなりますが、中年以降の多くの人の顔には、良性の日光黒子(茶色のシミ)や脂漏性角化症(皮膚の老化や紫外線の影響で生じる良性腫瘍)も生じやすく、見た目では良性か悪性か区別が難しいこともあります。高齢になってから新たにできたシコリが、増大したり、出血するようになったりした時には、皮膚科専門医へ受診することをお勧めいたします。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座助教 六戸大樹)

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紫外線と皮膚がん

2019/10/19 土曜日

 

 皮膚がんの患者さんは年々増えてきており、国内で新たに皮膚がんと診断された患者さんは2000年には約7000人だったのが、14年には約1万8000人まで増加したと推計されています。この推計には、前がん状態(皮膚がんの予備軍)の病気は含まれていないため、それらを含めるともっと多くの人が皮膚がんのリスクがあるといえます。
 皮膚がんの原因は何でしょうか。これまでの研究で、多くの皮膚がん発生に紫外線が関わっていることが明らかになっています。オーストラリアのある地域では紫外線が非常に強いため、メラノーマという皮膚がんが、日本と比べ約100倍発生しやすいことが知られています。しかし、1980年代から子供たちを主な対象に日焼け防止キャンペーンを続けた結果、その子供たちが成人になった世代で皮膚がん発生率が減少し始めました。
 紫外線を浴びすぎると、なぜ皮膚がんが発生しやすくなるのでしょうか。紫外線が皮膚の細胞に当たると、DNAに傷のような変化が起こります。細胞には、このような傷ができても修復する機能があるので大部分は修復されるのですが、ときどき修復ミスが起こり、DNAの傷が「遺伝子変異」という形で残ってしまうことがあります。この遺伝子変異が、がんに関係している遺伝子に起こり、さらに別の遺伝子にも起こり蓄積されると、ついには皮膚がんが発生してしまうのです。
 このように、がんの発生には「遺伝子変異の蓄積」が関わっているため、皮膚がんを予防するためには、紫外線によるDNAダメージを子供の頃から予防しておく必要があります。これからの時期は、夏場ほど紫外線は強くないものの、屋外での活動時には帽子や衣類、サンスクリーンで紫外線から皮膚を守りましょう。すぐには効果が見えないので実感しにくいですが、小さな積み重ねが、数十年後の皮膚がん発生を抑えるために、とても大切なことなのです。
(弘前大学大学院医学研究科皮膚科学講座助教 六戸大樹)

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妊婦のインフルエンザ対策

2019/10/12 土曜日

 

 そろそろ、インフルエンザが流行する季節が近づいてきました。インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症で、感染すると38度以上の発熱・頭痛・関節痛・筋肉痛などの症状を認めます。一般的な感冒(風邪)症状に似ていますが、症状が強いのが特徴です。
 よく聞かれる質問ですが、インフルエンザワクチンを妊婦さんや褥婦(じょくふ)さんに打ってもいいのでしょうか?答えは、「YES」です。打ってもいいどころか、「打った方がいい」のです。妊婦さんがインフルエンザに感染した場合、肺炎や脳炎など「重症化」することがあります。また、流産や早産の可能性も上がるとされています。インフルエンザワクチンを打っておけば、たとえ妊娠中にインフルエンザに感染したとしても、「重症化」を防ぐことができます。また、生まれてくる赤ちゃんにもワクチンは効いており、生後6カ月までインフルエンザに感染しにくくなります。
 ここで重要なのは、「打つ時期はいつでもいい」ことです。妊娠初期の妊婦さんでも、もうすぐお産を控えている妊婦さんでも大丈夫です。妊娠期間に関係なく、インフルエンザワクチン接種は推奨されます。インフルエンザワクチンを打ってから効果が出るまで2~3週間かかるので、流行シーズンが始まる10月、11月に打つことを勧めます。
 では、妊婦さんがインフルエンザにかかってしまった場合はどうでしょうか?答えは「インフルエンザ治療薬を早めに服用しましょう」です。早めに服用することにより、「重症化」を予防するとともに、症状が早く良くなります。
 また、旦那さんやお子さんなど、同居する家族がインフルエンザに感染した場合は、妊婦・褥婦さんへのインフルエンザ治療薬の予防投与が勧められます。うがい、手洗い、マスク着用などの予防対策も大事ですが、インフルエンザワクチンを早めに打っておきましょう!
(ゆざわ産婦人科クリニック院長 湯澤映)

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