医療情報ほっと

 

医師会長就任にあたって その2

2020/7/11 土曜日

 

 今回は、弘前市医師会の新しい会長はどういう人物なのか、どのようなことをしてきたのかを書いて、自己紹介としたいと思います。
 私は西目屋村生まれの68歳です。当時は今のように交通が便利ではなく、高校と大学は弘前の叔母の家に住んで通っていました。1977年に大学を卒業。内科の中でも消化器や血液、免疫の分野を担当する弘大医学部第一内科に就職しました。具体的に目には見えないためか、多くの人が敬遠する血液疾患を専門にしたいと思い選びました。
 医学博士の学位論文は、出血に関する内容で書きました。82年から84年までの2年間は、アメリカのメイヨークリニックという大きな病院で血液の研究に従事しました。この後の88年から92年までは、県立中央病院消化器内科に勤務しました。ここは消化器内科の中に血液内科がありましたので、半分が消化器、半分が血液という仕事内容でした。92年に弘前市立病院に移り、95年には市内で沢田内科医院を開業しました。
 血液の病気は白血球が少ないなど免疫が低下していることが多く、半分は感染症との闘いです。朝は元気な患者さんが夜には亡くなるなど急激な経過を取ることが時々あり、検査に頼っていては手遅れになることが少なくありません。ですから、症状の変化を聞き出したり、自分の体を使って診察するということが自然に身に付きました。このことは、詳しい検査がすぐにはできない開業医になって非常に役に立ちました。
 自分の専門を生かして開業している人もいますが、多くの内科の開業医に要求されるのは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症など患者さんの数が多い病気を診ることです。糖尿病は目が悪くなったり腎臓が悪くなったり、全身の病気が起こってきます。また、血圧やコレステロールなどと密接な関係にあります。ですから、沢田内科医院では看護師には糖尿病の勉強をしてもらっています。これまで日本糖尿病療養指導士の資格を取得したのは7人です。
 ちょうどいいタイミングで、この4月に沢田内科医院を長男にバトンタッチしました。これまで医師会理事、副会長として14年間活動してきましたので、引き続き医師会長として運営していきたいと思っています。
(弘前市医師会会長・沢田内科医院 澤田美彦)

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医師会長就任にあたって その1

2020/7/4 土曜日

 

 2020(令和2)年6月12日に弘前市医師会長に就任致しました。医師会がどのような活動をしているのかご存じない方もいらっしゃるかも知れませんので、医師会の紹介を兼ねて自己紹介したいと思います。
 医師会には、大きく分けると三つの役割があると思っています。会員のための役割、会員を含めた医療従事者のレベル向上のための役割、予防接種や検診など弘前市とその周辺の住民のための役割の三つです。
 弘前市医師会は270人の会員で成り立っています。約6割が開業医で、病院の勤務医などが約4割です。医師会の会員のためには、医療機関の運営のためにさまざまな事務手続きや情報提供を行っています。また当然のことですが、医師や看護師など医療従事者の最新の知識、医療技術の向上のためたくさんの講演会や研修会を開催しています。
 弘前市医師会には非常勤を含めると約140人の職員がいます。一つの企業体です。健診センターでは弘前市の特定健診や後期高齢者健診、各種がん検診などのほか、弘前地区の企業健診の多くを担っています。もちろん市内の医院に受診した患者さんの血液検査もここで行っています。
 看護専門学校は津軽地区へ看護師を供給する重要な役割を果たしています。看護学科の学生は准看護師として市内の医療機関で働いていますし、卒業生の大部分は地元に就職しています。
 急患診療所は、夜間は小児科と内科、休日には外科診療も行っていて、弘前市だけでなく周辺市町村の重要な一次救急の役割を担っています。
 このほかにも産業医、学校医、救急災害、介護などたくさんの活動をしています。また、感染症対策として、07(平成19)年の麻疹、09(平成21)年の新型インフルエンザの流行では医師会が中心になって対処しました。新型コロナウイルス感染症でも、軽症あるいは無症状の感染者の治療に当たる医師会の役割が重要になります。
 これらの活動は時代の要求に応えて変えていかなければなりません。今後も引き続き何ごとも挑戦的な姿勢で弘前市医師会を運営していきたいと考えています。また、私たちの活動を多くの人たちに知ってもらうことも重要ですので、これまで以上に広報に力を入れていきたいと思っています。
(弘前市医師会会長・沢田内科医院 澤田美彦)

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弘前市でのピロリ菌対策

2020/6/27 土曜日

 

 ■大人のピロリ菌検診
 ピロリ菌は飲み薬でやっつけることができます。弘前市では2014年から胃がん層別化検診(ABCリスク検診)を行っています。40歳、45歳、50歳、55歳の市民がピロリ菌に感染しているかどうか、どの程度の胃炎を起こしているかを血液で調べるものです。
 この結果、ピロリ菌の感染率に男女差はなく40歳で約20%、55歳で約40%の市民がピロリ菌に感染していることが分かりました。若い年齢ほど感染している率が低いので、この感染率は年々低下していくものと思われます。この検診で感染が疑われると、胃内視鏡検査を行うと同時にピロリ菌の精密検査を行います。結果、感染していることが確定すると除菌治療を行います。
 弘前市のABCリスク検診でピロリ菌の感染率に男女差がないことが分かりました。しかし、胃がんの死亡数は男性が女性の1・5倍から2倍です。このことから胃がんの発症にはピロリ菌感染だけでなく、たばこ、お酒など生活習慣が関与していることが考えられています。ABCリスク検診は胃がん内視鏡検診が始まったことに伴い、現在は40歳だけで行っています。
 ■中学生のピロリ菌除菌事業
 ピロリ菌の治療は若い時に行うほど胃がんになるリスクは低下します。そこで、弘前市では2017年から中学校2年生に対してピロリ菌の検査を行っています。感染が疑われ精密検査で感染が確定すると除菌治療を行うという事業です。初年度は約1500人に対してピロリ菌尿中抗体を調べました。この結果、一次検査で5・8%がピロリ菌に感染していることが疑われました。一次検査陽性61人のうち、精密検査を受けた人が54人で陽性者は33人でした。つまり、弘前市の中学2年生の3・7%がピロリ菌に感染していることが分かりました。受診率は2017年は71%でしたが2019年は83%と増えています。ピロリ菌は約8割が家族内で感染することが分かっていますので、中学生に感染していることが分かると、両親など他の家族にピロリ菌感染がないか調べることを勧めています。
 これらの事業を実施している市町村は多くはありません。弘前市が行っているこれらの事業と胃がん内視鏡検診を継続すると胃がんで亡くなる人が少なくなります。
(弘前市医師会会長・沢田内科医院 澤田美彦)

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胃がんとピロリ菌

2020/6/20 土曜日

 

 現在、日本では年間約13万人が胃がんを発症し、約4万7000人が亡くなっています。弘前市でも毎年80人から90人の人が胃がんで亡くなっています。しかし、私たち消化器病を専門とする医師から見ると、この死亡数は限りなくゼロに近づけることができるのです。その方法は二つあります。ピロリ菌対策と胃がん内視鏡検診です。
 弘前市では2018年から胃がん内視鏡検診を開始し、早期の食道がんや胃がんが見つかっていることを前回の「医療情報ほっと」でお伝えしました。今回はピロリ菌の情報をお伝えします。
 1994年に世界保健機関(WHO)は細菌の一種であるピロリ菌が胃がんの原因であると認定しました。すべての胃がんがピロリ菌で発症するというわけではありませんが、現在は大部分の胃がんはピロリ菌が原因であると言われています。胃がんは日本、中国の一部、韓国などに多く、欧米では少ないという地域的な偏りがあります。これは胃がんの原因がピロリ菌の感染であるということが原因です。
 ピロリ菌は親からの遺伝ではなく、5歳以下の子どもの頃に口から感染することが分かっています。子どもは免疫が発達していないこと、胃液の酸が不十分であることなどから感染が持続すると考えられています。大人では感染したとしても、急性の胃十二指腸潰瘍を起こすことがありますが、それでも何カ月か後にはピロリ菌を排除してしまい感染が続くことはありません。
 ピロリ菌に感染していると、一生の間に約10%の人が胃がんを発症します。そして、ピロリ菌を除菌すると胃がんの発症は約3分の1に減ることが分かっています。ただ、ピロリ菌がいない場合に特徴的なことがあります。食道と胃の間にできる食道胃接合部胃がんといわれる胃がんの頻度が高いことです。ピロリ菌を除菌した場合に、この食道胃接合部胃がんと食道腺がんが多くなるといわれています。ですから、ピロリ菌がいない場合、ピロリ菌を除菌した場合にはこのタイプの胃がんと食道がんの可能性があるということを忘れてはなりません。
 現在、1週間の内服治療でピロリ菌を治療することができます。ピロリ菌の検査は胃内視鏡検査をすることが前提になっていますので、かかりつけの医院で相談して下さい。
(弘前市医師会会長・沢田内科医院 澤田美彦)

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胃がん内視鏡検査の結果

2020/6/13 土曜日

 

 以前、この「医療情報ほっと」で胃がん内視鏡検診についてお知らせしたことがあります。今回は検診を実施した結果をお知らせいたします。弘前市では2018年から胃がん内視鏡検診を開始しました。内視鏡での胃がん検診は県内では同市が最初です。施設の制約などから胃内視鏡検査を健診センターで行うことはできませんので、同市内の開業医を中心とした個別検診で行っています。
 初年度は4056人の市民が検診を受けました。その結果、胃がんが13例見つかりました。バリウムでの胃がん検診に比べると発見率は約3倍で、特に強調したいことはその中で早期がんが8例だったことです。
 早期胃がんというのはがん細胞が胃の内側の表面だけにしかないもので、外科で手術をするとほぼ完治するというがんです。ですから、私たちはこの程度のがんを見つけて治療することを目標としているのです。
 今回の結果では早期がん8例のうち5例がより早期の粘膜内がんでした。がん細胞がもっとも表面の粘膜にしかありませんので、開腹手術をすることなく胃内視鏡で胃がんの部分だけを剥ぎ取ることで治療ができるのです。おなかを開かないで手術ができ、その上胃を切り取る必要がないので、手術後の負担は開腹手術に比べて非常に小さくなります。そして胃の働きには何ら変化がないのです。
 胃がん内視鏡検診では、内視鏡手術で切除できた食道がんが1例、十二指腸乳頭部がんが1例見つかりました。これらのがんはバリウム検査では見つけられないものです。これも胃がん内視鏡検診のメリットです。市では45歳(今年度から)と50歳以上の偶数年の人が胃がん内視鏡検査の対象です。積極的に受診し、胃を切り取ることなく手術ができる「より早期の胃がん」が見つかるようにしたいものです。
 まとめです。胃がん内視鏡検査の初年度は4056人が受診し13例の胃がんが見つかりました。そのうち早期胃がんは8例。8例のうち内視鏡で治療できる「より早期のがん」が5例でした。
(福士内科医院院長 福士玄)

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