’19知事選 暮らしと争点

 

企業の子育て支援=4

2019/5/25 土曜日

 

ESTクリニックグループでは企業内託児所を運営し、子育て中の職員を支援している

 人口減少が加速する地方において、「子どもがいても働きやすい会社」は従業員にとってはもちろん、働き手確保が課題となる企業にとっても必須条件になりつつある。県は女性活躍や子育て参画推進などに手厚い企業を認定するなどの取り組みを進めるが、「働きながら子どもを育てやすい地域」の実現に向け、より多角的な支援が求められている。
 「子育て真っ最中の方々を仲間として支えていただきたい。一生のうちの数年というほんの限られた期間、温かい目で見守って」。2007年、弘前市のESTクリニックグループでは角田悟最高経営責任者が「子育て支援宣言」を行った。背景には、04年のクリニック開所以降、退職者32人のうち約6割が、結婚や出産を理由としていた状況があった。「有能な人材を失うことは大きな痛手」と三上明事務長は話す。
 経営トップの宣言は大きな変化をもたらした。09年には、当時珍しかった企業内託児所を開設。育児での長期休業に関しては、代替要員を確保(有資格者に関しては正職員として採用)することを確約、「迷惑をかける」といった精神的負担減にも努めた。短時間勤務では法令上の3歳未満を超えて小学校就学前まで拡充。今では結婚・出産を理由に退職する人はいない。
 しかし課題も残る。託児所は365日預かりを行っており、6人の保育スタッフがいるが、休みを取ったり交代したりするため常駐は2人。必然的に受け入れを制限せざるを得ないことも。さらに開設から10年間の国の人件費補助期間は残りあとわずか。福利厚生が目的の不採算部門ではあるものの、民間企業にとっては小さくない問題だ。三上事務長は「ほかにも困っている企業はあるはず。県などから何かしらの支援があれば、スタッフを増員し受け入れを増やすことも可能なのだが」と話す。
 弘前市の総合キャリアスクールI・M・Sでは子育て中の女性が数多く活躍。社員約30人はほとんどが正社員で、このうち8割が女性だ。
 同社の野宮真美総務部長(39)は、当時1歳と小学1年生の子どもを抱えてパートで入社、その後正社員に登用された。「風通しがよく日ごろからお互いコミュニケーションが取れているから、支え合いやすい」と話す。4歳の子を持つ高谷永さん(38)もパートから正社員になり、講師として働く。「子どもの急な体調不良などにも快く対応してもらえ働きやすい」と笑顔だ。
 三上友子代表取締役は「子育て支援に特に力を入れてきたつもりはなく、一人ひとりが仕事をしやすいよう生活とのバランスを考えた結果。習い事などでも有休を取りやすく、そこは子育てに限らず平等に。お互いさまの精神があるから成り立つこと」と話す。
 「これからの時代、(働きやすさに配慮しなければ)入る人もいなくなり、会社としての存続は難しい」と三上代表。同社は県のあおもり働き方改革推進企業などに認証されているが、「認証を受けることで社外向けのアピール、そして社員に向けた約束にもなる。取り組みを進めている小規模の事業所がもっと応募しやすい形であるといいと感じる」と望む。
 加えて「働く母親が仕事終わりに子どもを連れて立ち寄れる場所があれば」とも話し、企業への直接支援だけでなく、後方から女性の働きやすさを手助けする支援の在り方も提言する。

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農業振興=5

2019/5/26 日曜日

 

津軽の基幹産業である農業。課題も多く、産地は正念場を迎えている(写真は青天の霹靂の田植え)

 津軽地域の基幹産業であるコメとリンゴ。本県産初の特A米「青天の霹靂(へきれき)」は、生産者所得の向上と県産米ブランドの確立に一定の成果を挙げているが、今年の作付面積は目標値の4分の3ほど。県産リンゴが9割を占める2018年産国産リンゴの累計輸出量は3万トン、輸出金額は100億円を超えて好調だが、担い手不足に加え近年では黒星病がまん延するなど生産現場に危機感が漂う。厳しい環境変化の中で産地は今、正念場を迎えている。
 津軽みらい農協特A米プレミアム研究会長で、平川市で青天の霹靂を作付けする工藤憲男さん(67)は、他県産米との競争で「霹靂は、味で他のブランド米に劣るとは思っていない」と自信を持って語る。しかし、今年産の作付面積が目標を下回った要因の一つに霹靂の〝作りにくさ〟を挙げる。
 「気象条件と(霹靂の)基準を維持する農家の技術がうまくかみ合わず、収量が減ったことが一因では」と話す。高品質なコメを作り続けるには、意欲的な生産者の増加が前提条件と工藤さんは説く。「利益があることを知れば生産者は増える。利益がないと農家は育たない。トップが足しげく首都圏の小売店などを回り、PRすることが売り上げアップにつながる」と県を挙げた販売促進策がさらに必要と語る。
 県中南地域県民局農業普及振興室の長内明人室長は、ブランド維持と生産者増加には、若手農家や初めて取り組む人への手厚い指導がカギになると指摘。インターネットを使った生産指導情報「青天ナビ」の活用などを提案する。「青森と言えばコメよりリンゴのイメージ。本県のコメが売れるためには、霹靂がトップブランドとして他のコメをけん引してもらう必要がある」と強調した。
 黒石市のリンゴ生産者団体「輝く黒石りんご市の会」の会長を務める東正貴さん(40)は「資材や段ボール、運送料など経費が全部上がっている。黒星病の農薬代だけで平年の1・5倍」と窮状を訴え、経費高騰が農家の減少に拍車を掛けるのではと懸念する。
 「農家単体の話ではない。農家が減れば関係業者や農協、市場も厳しくなる」と本県の基幹産業の行く末に危機感を募らせ「現場を見ていないし、理解していないのに何ができるのか。ちゃんと〝わんど〟の目線まで来てもらわないと、どこに問題があるのか分かるわけがない」と、これからの本県のかじ取り役に〝現場目線〟を強く求めた。
 会員制のリンゴ「はつ恋ぐりん」を扱うはつ恋ぐりんの会会長の今智之さん(60)=黒石市=は「青森のリンゴは輸出に支えられ値段が高く好調しかし、大きくて見栄えの良い贈答用一辺倒で良いのか」と疑問を抱く。
 「日本のふじは味が良く人気だが、その品質を超え、値段も安いものが海外から出てきている。輸出を伸ばすために値ごろ感のある品種を開発し、家庭用のリンゴを輸出する必要があるのでは」と提案した。

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エネルギー=6

2019/5/27 月曜日

 

福島第1原発事故を受け、当時の県が設置した県原子力安全対策検証委員会=2011年6月19日

 本県の下北地域には、再処理工場、東通原発、大間原発、中間貯蔵施設の原子力関連施設が集中立地し、それぞれの地域と深く結び付いている。本県のかじ取りを担う知事には原子力政策に対するスタンスが繰り返し、問われてきた。
 今回、一騎打ちとなった佐原若子候補、三村申吾候補の原子力政策の違いは鮮明だ。大きな争点になるかと思われたが、選挙戦が後半に突入しても論戦は盛り上がらないまま。青森市の無職男性(72)は「あまり興味がない。大事なことだというのは分かるが、難しい話なので、いいとか悪いとかはなかなか言えない」と話した。
 政策では、佐原候補が「原発ゼロ」への県政転換を掲げ、原発・核燃に対し、専門家や県民で構成する独自の検証委員会を立ち上げ、情報公開を求めていく―と提示。三村候補は国と事業者に原子力施設のさらなる安全確保対策を求めながら、県地域防災計画に基づき、避難方法の情報提供など防災対策を強化する―と相対する。
 選挙戦で、反核団体メンバーでもある佐原候補は東日本大震災による東京電力福島第1原発事故を踏まえ「過去を変えることはできないが、過去から学ぶことはできる。あすはわが身と思いませんか」と聴衆に呼び掛け、エネルギー政策の転換を強く訴える。
 三村候補が街頭でエネルギー政策に言及することはほぼない。「安全なくして原子力なし」を前提に、原子力・火力・再生可能エネルギーなどを適切に組み合わせた「エネルギーのベストミックス」の重要性を挙げながらも、原発・核燃の是非を前面に出さない。
 弘前市の自営業男性(37)は国の原子力政策自体を「ドイツなど欧州で進む脱原発の流れを踏まえると遅れている」と批判し、福島第1原発事故を踏まえ「安全を保証できないなら政策の転換を図るべき。原子力施設が集中する青森だからこそ、国に提言してほしい」と注文を付ける。
 佐原候補が設置を主張する検証委は、過去に県でも設置したことがある。福島第1原発事故を受け、県が2011年6月に設置した県内原子力施設の安全性を独自検証する「原子力安全対策検証委員会」だが、2年で役目を終えた。現在は同委員会報告に基づく県の要請で事業者が安全対策への取り組み状況を毎年、県に報告する形となっている。
 原子力関連施設を要する本県を含む自治体に、安全についての一石を投じた福島第1原発事故。現在、廃炉に向けた作業が進んでいるが、当初の想定より大幅に遅れている。30~40年の計画で進む廃炉作業だが、課題は山積しており、先行きは見通せない状況が続いている。
 弘前市の無職女性(72)は三村候補の観光面での成果を評価しながら、福島第1原発事故を引き合いに「廃炉にするにも非常に費用と時間を要する。原発に頼らないエネルギーの在り方を日本全体、青森県でも考えるべきでは」とした。
 本県の重要課題であるエネルギー政策だからこそ、活発な議論が求められるはずだが、論戦が深まらないまま民意を問う投開票日が迫る。

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地域包括ケア=7・完

2019/5/28 火曜日

 

寝たきりの女性の血圧などをチェックする加福さん(右)。超高齢社会が加速する中、地域包括ケアの連携強化が求められる

 団塊世代が75歳以上になる2025年には超高齢社会がさらに進展すると予測される。18年2月現在の本県の高齢化率は31・32%、西北五地域の自治体の大半は35%を超えている。住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしい暮らしができるよう、医療、介護、介護予防、認知症対策、生活支援などの面で高齢者を切れ目なく支える地域包括ケアの連携強化が一層求められている。
 「家に帰って来てから表情が変わって、声も出すようになった。入院していた時は目も合わせなかったのに」。こう語るのは、脳梗塞で倒れ寝たきりになった母親(81)を在宅介護する、つがる市の女性(58)だ。母親は口からの飲食が困難なため胃ろうになり、退院時に医師から「長くない」と言われた。最期の時間を自宅で過ごさせたいと思った女性は54歳で介護職を早期退職し、在宅で介護することを決意。間もなく4年になる。
 母親は週に1度、同市の訪問看護ステーション「にじの樹」の訪問看護を受けるほか、自宅に浴槽を持ち込んで入浴介助をしてもらう訪問入浴サービスを利用している。訪問診療を受ける市民を対象に同市が17年度に導入した「医療介護連携連絡帳」も活用し、日常生活や体調の変化などを記録。その情報を医師、看護師、ケアマネジャー、家族らが共有し、一体となって支えている。
 女性はいわば介護のプロ。だが「1人ではどうにもならない」と周りの支援を受け、介護保険サービスをうまく活用することが重要だと説く。
 にじの樹の看護師で介護福祉士の加福かすみさん(48)は「連絡帳」を通じて連携できる体制を評価するが、一歩市外へ出ると「連携しづらい」とも。「県がバックアップして医療、介護、福祉が連携できる様式を統一してくれたらもっとやりやすくなる。患者さんは生活を整えてあげるだけで病気も落ち着いたりするから」と話す。
 また、患者に適したケアプランを作成し、どんな介護保険サービスが必要かを見極めるケアマネジャーの資質や負担、仕事量や責任に見合わない低賃金問題も浮かび上がる。加福さんは「介護職は急速に必要性が伸びてきた職種。ニーズに人材が追い付いていないし、見返りも見合わない」と指摘。「頑張っている事業所が潤うよう、県には助成してほしい」と求める。
 19年4月30日現在の高齢化率が36・9%のつがる市。15年に市地域包括ケアシステム準備会を発足させ、「医療・介護」「住まい・介護予防・生活支援」「認知症支援」の3チームを基盤に地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいる。
 市介護課の小山真貴子課長補佐は「横のつながりはできてきた」と評価する一方、医師不足を課題に挙げ「地域の医師が高齢化している現状もある。市単独では解決できないので、県単位で医師を増やす必要がある」と提言。ケアシステムについては「3チームが全体で集まり連携を深めることが今後の課題」とし、「元気なお年寄りを増やしていく。そのためにもシステムを充実させることが重要」と語る。

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