’19知事選 暮らしと争点

 

2019/5/22 水曜日

 

  6月2日に投開票が行われる知事選。本県経済や市民生活をめぐる、選挙戦の争点を探る。

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健康増進=1

 

バランスの良い献立を提案する食育コーナーを常設しているカブセンター神田店。県内で健康意識を高める取り組みが広がっている

 「短命県返上」への取り組みが奏功し、着実な成果が上がる一方で、厚生労働省が2017年に公表した都道府県別の結果では本県の平均寿命(15年)は全国最下位のまま。健康増進への取り組みは今が踏ん張りどころだ。
 紅屋商事(本社青森市)は11年12月から、経営する県内スーパー10店舗で食育活動を展開してきた。献立を提案するコーナーを常設するほか、毎月1回「食育大試食会」を開催。多様化するライフスタイルを意識し、コンシェルジュが顧客と商品の懸け橋を担っている。
 同社の顧客サービス課の工藤健二マネジャー(47)は「爆発的ヒットを飛ばす減塩商品もあり、健康に対する意識の高まりを感じる」と指摘しつつも「味の好みもあり減塩やカロリーオフ商品が総じて劇的に伸びているわけではない。食育といっても常に新しい工夫が必要だ」と多様化するニーズへの対応に追われる。
 斎藤明子・弘前市食生活改善推進員会長(56)は、20年以上にわたり食のプロとして健康づくり運動の変化を見詰めてきた。
 食改の活動は県や自治体とタイアップしたものから町内会単位のものまでさまざまだ。「主食、主菜、副菜をきちんと取ろう」という基本とともに、年間140回を数える3歳児健診時の親子試食会では「子どもの時に与えられた味が味覚の基準になる」と、だしを活用した減塩みそ汁を提供。県の飲食店の塩分測定事業では「ラーメンを食べてもいい。ただ、塩分が高いことを知り、数日かけて塩分摂取量を調整しよう」と知識を広める。
 斎藤会長は「働き盛り世代、一人暮らしといった層や子どもへの教育面での浸透はまだまだ。いろいろな方と手を組み、青森の健康増進への一翼を担いたい」と奔走する。
 09年度平均0・29倍だった県内の有効求人倍率は、18年度1・30倍にまで上昇した。一方で、人手不足が深刻化する業界も多い。
 こうした中、働き盛り世代への健康づくりのアプローチとして17年度にスタートした県の健康経営事業所認定制度は、優遇措置の得られる建設業だけでなく、“お墨付き”と捉える向きもあり、認定事業所は170社にまで増加した。
 社員の健康意識向上を職場の“魅力”の一つと捉える津軽警備保障(弘前市、山口道子社長)は、15年に「ひろさき健やか企業」、18年に県健康経営事業所の認定を受けた。経済産業省と日本健康会議による「健康経営優良法人2018」の認定経験もある。
 07年ごろから立て続けに社員に大病が見つかったことを契機に、会社が経費負担し、がん検診、インフルエンザ予防接種を推奨、全社禁煙も行った。結果、検診再検率は100%、加熱式たばこ『アイコス』への移行も含めば社員の約8割が禁煙という成果につながった。
 山口社長(62)は「成果は出てきたがまだまだ」と語り、共働きや外食が多い食環境の変化から「例えば会合時に野菜から食べることを行政側が呼び掛けるなど、積極的な働き掛けが必要だ」と強力なリーダーシップを求めた。

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観光振興=2

2019/5/23 木曜日

 

多言語案内などを行っている津軽藩ねぷた村。外国人観光客向けの施策は県内各地で講じられている

 大型クルーズ船の寄港や海外航空会社の定期便増便の影響もあり、外国人観光客の増加が顕著な本県。年間延べ宿泊者数は2016年度が約14万人だったが、17年度に約24万人、18年度には約29万人となった。
 このような状況を踏まえて県は、観光戦略「未来へのあおもり観光戦略セカンドステージ」(14~18年度)で20万人と定めた外国人宿泊者数の年間目標20万人を、現行の「青森県観光戦略」(19~23年度)では倍の50万人にまで増やした。
 本県観光産業発展に向け、外国人観光客の増加は今後も期待されるが、増加傾向を維持して県の目標を達成するには「施策が不十分」といった声が宿泊・観光施設関係者らからは聞こえる。
 1879年に創業し、140年の歴史を持つ弘前市の老舗旅館「石場旅館」では04年ごろから外国人宿泊客が増え続け、現在では一年を通じて世界各地から訪れている。
 外国人観光客を増やすには「根底にある地元の文化を大切にするべき」と同旅館四代目の石場創一郎さん。外国人だからといって特別なサービスはせず、日本人と同じサービスを提供。純和風の旅館外観や内装、昔から変わらない「日本式」のもてなしが好評を得ているという。
 石場さんは「外国人は日本らしい文化の中での滞在を求めている。宿泊者数の好調維持を目指すのであれば、古い街並みや景観を残す工夫が必要」と指摘し、県など行政にも同様な視点が必要と提言する。
 同市亀甲町の津軽藩ねぷた村(中村元彦理事長)は、国内外から多くの観光客が訪れる津軽地域の観光拠点。毎日のように中国や台湾からのツアー客が訪れ、欧米からの個人客も増加している。
 ねぷた村専務理事の村山佳光さんが「外国人観光客が求めているのは、本県を訪れたからこそできる体験」と言うように、同施設ではねぷた囃子(ばやし)の実演で一緒に掛け声を掛けてもらい、太鼓もたたいてもらう。祭りや囃子の解説は観光客の国籍に応じて、スタッフが英語や中国語を使い分ける。村山さんは「見る・買うだけではなく、実際にその土地の文化に触れられる設備の充実が県内のインバウンド振興にとって喫緊の課題だ」と訴え、県などにも新たな施策を求める。
 現状、県内で観光を楽しみ県外へ移動して宿泊する「通過型」の外国人観光客も少なくない。このため、県は「滞在型」への転換を大きな課題に挙げる。ただ、「通過型観光の充実もインバウンド振興には欠かせないのではないか」と県の方針に疑問を呈する声も聞かれる。
 同市内の観光関係者の一人は、通過型の外国人観光客にも消費を拡大させる努力は必要だと強調。インバウンド対策に必要不可欠とされる多言語案内板の設置数、音声案内の設備も十分ではない―などと訴える。
 今のところ順調とされる外国人観光客の誘致だが、その傾向を維持するには民間の声も生かした一層の工夫が求められているようだ。

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UIJターン=3

2019/5/24 金曜日

 

県外人材の雇用を積極的に進めるコンシス。UIJターン者らからは移住後の支援拡充などを行政に求める声が上がっている

 自然減と社会減の両面で人口減少が急激に進む本県。とりわけ若者の県外流出は深刻な状況で、新規高卒者(2018年3月卒)の県内就職率は全国ワーストの56・7%。多くの若者が高賃金など好条件の働き口を求めて県外へ流れる中、いかにUIJターンの受け入れ環境を整備し、人口減少社会の中で働き手を確保していくか―。県は主に首都圏の学生向けに県内企業の認知度向上や情報発信に注力するが、実際のUIJターン者や受け入れ企業からは移住後の支援拡充や、特定分野の人材に的を絞ったUIJターン促進を求める声が上がっている。
 県が注力する情報発信は、UIJターンを考える層に十分届いているのか。08年の創業時から県外人材の雇用を積極的に進める弘前市のウェブコンサルティング企業「コンシス」の大浦雅勝代表取締役は、IT職向けの移住推進イベントに携わってきた知見から「Uターン希望者には『戻り方がよく分からない』という人が多い」と実感を語る。
 県は学生と企業の就職相談会などを主催し県内企業の採用活動も支援するが、大浦代表取締役は「都市圏との所得格差や職種にあった受け入れ企業が地元にあるかなど、希望者がやすやすと折り合いを付けられないのが現状」と根本的な課題に対する行政支援の不足を指摘した。
 実際にUIJターンを遂げた人への支援も不十分だ。今春に東証一部上場企業からコンシスへUターン就職した田中真希さん(25)は「(前年の額が反映された)所得税の支払いで一気に貯金が減った」と所得格差から生じた苦労を明かす。首都圏からのUIJターンにより収入が落ち込むのと同時に支出が増大するのは移住初期の問題であり、大浦代表取締役は「移住直後の税金の支払額を緩和する制度や雇用側への手厚いサポートが必要」と述べた。
 IT企業・ピースオブケイク(東京)で働く福井烈さん(35)は、家族の体調不良がきっかけで4年前に弘前市にUターン。フルタイムのテレワーカーとして在京企業に在籍しながら移住を果たしたという点ではレアケースだが、「通信システムの発達もありIT業は移住と相性がいいし、親の介護などの理由でUターンを考える人はこれから増えるだろう」と予測。しかし「UIJターンのIT人材を受け入れていくための受け皿は不十分。例えば福岡県が取り組むようなベンチャー支援とセットで呼び込むなどの政策が必須では」と話した。
 非農家出身者を対象に、同市船沢地区のリンゴ園地「キモリ・キャンパス」でリンゴ作りの担い手育成に取り組む百姓堂本舗の高橋哲史代表取締役も、特定分野の人材に的を絞ったUIJターン促進の必要性を訴える。高橋代表取締役は移住希望者向けのセミナーで講師を務めた経験から「現状では『青森はいい場所だから来てください』という程度の呼び掛けにとどまらざるを得ない」と歯がゆさを語った上で、「基幹産業だからこそ、リンゴをやりたい人には住宅手当や研修費を補助するなどの思い切った政策があっていい。それを実現するためには行政の縦割りを超えた取り組みが求められる」と提言した。

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