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寝たきりの女性の血圧などをチェックする加福さん(右)。超高齢社会が加速する中、地域包括ケアの連携強化が求められる |
団塊世代が75歳以上になる2025年には超高齢社会がさらに進展すると予測される。18年2月現在の本県の高齢化率は31・32%、西北五地域の自治体の大半は35%を超えている。住み慣れた地域で人生の最期まで自分らしい暮らしができるよう、医療、介護、介護予防、認知症対策、生活支援などの面で高齢者を切れ目なく支える地域包括ケアの連携強化が一層求められている。
「家に帰って来てから表情が変わって、声も出すようになった。入院していた時は目も合わせなかったのに」。こう語るのは、脳梗塞で倒れ寝たきりになった母親(81)を在宅介護する、つがる市の女性(58)だ。母親は口からの飲食が困難なため胃ろうになり、退院時に医師から「長くない」と言われた。最期の時間を自宅で過ごさせたいと思った女性は54歳で介護職を早期退職し、在宅で介護することを決意。間もなく4年になる。
母親は週に1度、同市の訪問看護ステーション「にじの樹」の訪問看護を受けるほか、自宅に浴槽を持ち込んで入浴介助をしてもらう訪問入浴サービスを利用している。訪問診療を受ける市民を対象に同市が17年度に導入した「医療介護連携連絡帳」も活用し、日常生活や体調の変化などを記録。その情報を医師、看護師、ケアマネジャー、家族らが共有し、一体となって支えている。
女性はいわば介護のプロ。だが「1人ではどうにもならない」と周りの支援を受け、介護保険サービスをうまく活用することが重要だと説く。
にじの樹の看護師で介護福祉士の加福かすみさん(48)は「連絡帳」を通じて連携できる体制を評価するが、一歩市外へ出ると「連携しづらい」とも。「県がバックアップして医療、介護、福祉が連携できる様式を統一してくれたらもっとやりやすくなる。患者さんは生活を整えてあげるだけで病気も落ち着いたりするから」と話す。
また、患者に適したケアプランを作成し、どんな介護保険サービスが必要かを見極めるケアマネジャーの資質や負担、仕事量や責任に見合わない低賃金問題も浮かび上がる。加福さんは「介護職は急速に必要性が伸びてきた職種。ニーズに人材が追い付いていないし、見返りも見合わない」と指摘。「頑張っている事業所が潤うよう、県には助成してほしい」と求める。
19年4月30日現在の高齢化率が36・9%のつがる市。15年に市地域包括ケアシステム準備会を発足させ、「医療・介護」「住まい・介護予防・生活支援」「認知症支援」の3チームを基盤に地域包括ケアシステムの構築に取り組んでいる。
市介護課の小山真貴子課長補佐は「横のつながりはできてきた」と評価する一方、医師不足を課題に挙げ「地域の医師が高齢化している現状もある。市単独では解決できないので、県単位で医師を増やす必要がある」と提言。ケアシステムについては「3チームが全体で集まり連携を深めることが今後の課題」とし、「元気なお年寄りを増やしていく。そのためにもシステムを充実させることが重要」と語る。