’17衆院選 暮らしと政治

 

エネルギー=6・完

2017/10/20 金曜日

 

六ケ所村の中心街にあるショッピングセンター。平日はにぎわいを見せるが、週末は原子力関連産業の従業員が周辺市町村に帰省するため、来客は大幅に減るという

 衆院選の公約で各党の原子力政策における立ち位置の違いは明確化。原子力施設の立地自治体では関連産業が地域経済の支えとなっていることを理解しつつ、各候補は重要な争点としてエネルギー政策の訴えを展開している。一方、立地自治体の有権者からは、関連産業が地域の雇用経済に与える影響を考慮すると施設を容認せざるを得ないとして、エネルギー政策よりも地域活性化策などを重要視する声が聞かれる。
 国の中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」では、原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける。2030年度の電源構成割合の目標は、原発を20~22%、再生可能エネルギーを22~24%とし、残りを火力発電で賄うとしている。
 原子力施設が集中する下北半島を選挙区とする本県1区では、原子力政策に絡む3候補の訴えは他選挙区よりも熱を帯びる。
 自民党前職の津島淳候補(51)は、同計画に基づき「われわれが進めるベストミックス(最適な電源構成)に理解を」と訴える。原発の安全確保を第一にしつつも「電力は安定供給こそ命」とし、原発ゼロを訴える他候補を念頭に「原子力施設が青森の経済、雇用にどのような効果をもたらしているか。理想だけではなく現実を見なければいけない」と強調。本県における原子力関連産業の人材育成にも注力する考えだ。
 「福島の原発事故を経験した以上、国民の命を守るためにも原発をゼロにするのは政治の責任」と共産党新人の赤平勇人候補(27)。街頭では全原発の廃炉プロセス入り、核燃料サイクル撤退の立場を鮮明にする。原子力政策の進展を前提とする県、立地自治体の成長戦略には「政治決断」が必要とし、再生可能エネルギーの開発を抜本的に強化することで「雇用が必要になり地域活性化にも役に立つ」と語った。
 希望の党は30年までの原発ゼロを公約に掲げる。同党前職の升田世喜男候補(60)は「原発をなくすことに異論は全然ない」とするが、公約については「現実視点」と前置きし「あくまでも目標だと思っている。そう簡単にできる話ではない」と主張。原発ゼロに向けては電気の安定供給を条件に挙げるほか「(立地自治体が)原発がなくなっても景気対策ができるものがなければ賛成しない」と力を込めた。
 原子力政策に関する3候補の訴えは異なるが、関連産業が地域経済に根付く原子力施設立地自治体の有権者は現実路線だ。
 核燃料サイクル施設が集中する六ケ所村の飲食店経営男性(62)は「(原子力事故に対し)当然不安はあるが、ほかの産業がほとんどない」として、施設は容認せざるを得ないとの意見。「福祉に関してはやり尽くしたのでは」と立地地域の恩恵も実感しており、候補者には「十数年、何も変わっていないように感じる。魅力ある村にしてほしい」と求めた。
 東通原発に程近い東通村白糠の無職女性(70)は「心配はみんなあるんじゃないか」としながらも「(関連産業に)勤めている人はいるので何とも言えない」と語り、投票は地域活性化策や消費増税で判断するとした。

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社会福祉=5

2017/10/19 木曜日

 

自宅で母の由美さん(右)=仮名=に寄り添う娘の育子さん=同=。親子の静かな語らいがそこにはあった

 65歳以上の高齢者が総人口の3分の1を占める「2030年問題」がにわかに叫ばれ始め、わが国の人口構造が大きな過渡期を迎えようとしている。高齢化社会を超えた“超高齢化社会”真っただ中で始まった今回の衆院選。県内有権者を対象に本紙が実施した電話世論調査でも「年金などの社会保障・子育て」が重視政策として、最も関心が高いとの結果が示されている。最後まで自分らしく、生き生きと―。そんな“当たり前”を願う有権者は多い。
 弘前市在住の高木育子さん(70)=仮名=は要介護3の母・由美さん(91)=同=と2人暮らしをしている。認知症が進行している由美さんは週5回、デイサービスなどを利用。服の着替えから食事の時間も、由美さんのそばに寄り添う育子さんは「一人一人が笑ってこの世を去れる社会になるのであれば、もう少し保険料などの負担は高くてもいい。これからは、若い人のことも十分に考えてあげなくては」と理解をにじませる。
 介護事業所などで働いた経験を持つ立場から「もう少し介護者に余裕のある現場づくりが必要。昔、子どもを大学まで行かせられないと施設を辞める人がいた。給与待遇を含めてのやりがいであり、ひいては人としての尊厳を持って生きる社会福祉にもつながってくると思う」と話した。
 少子と高齢化は表裏一体の関係にある。国立社会保障・人口問題研究所の推計で30年の総人口は現在から1000万人減の約1億1700万人。現在の本県の総人口が約130万人、東北6県全てを合わせても約900万人で、13年後には東北地方の人口規模が丸ごと消失する計算になる。
 年金や介護、医療などに使用された社会保障給付費は、15年度が対前年比2・4%増の約114兆8600億円で過去最高を更新。全体の5割近くを占めるのが年金、次いで医療、福祉その他が続く。年金の占める割合が最も高く、受給者の生活に直結する。
 年金生活をしている同市の無職男性(72)は「息子がいるが、東京で家庭を持っていて、年に数回帰ってくる程度。最近、足腰が痛く、これから雪も降ってくるため、年々生活がつらくなってきた」とため息。「いつ、自分も介護される側になるか分からない。今後の消費増税を考えると、これから先が不透明。安心して暮らしたい」と声を詰まらせた。
 現在、年金の受給開始年齢は65歳が基準だが、60~70歳の間で自由に選ぶことが可能。だが、65歳前の受給を選ぶと減額されるため、将来を見据えた判断が求められる。
 要介護2の夫(64)が市内の介護老人保健施設に入所している同市の主婦(59)は「障害年金でぎりぎり、入所費用は賄えているが、今後の生活に不安がないわけではない」とする一方、「来年から年金の受け取りを始める気持ちはない」と慎重に考えている。「現在、娘2人の支援でなんとか生活している。これからの日本を考えると、子育て世代が大事なのは分かるが、どうか私たちのことも忘れないでほしい」と声に力がこもった。

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教育無償化=4

2017/10/18 水曜日

 

幼児教育無償化は必要との声が多いが、保育士などの人材確保をどうするべきかとの課題もある

 安倍政権は消費税率を10%に引き上げる際の増税分の使い道を変更し、幼児教育などを含む教育無償化に2兆円を充てる方針を示し「国民に信を問う」として解散総選挙へとかじを切った。これに対し野党は、財政健全化の先送りなどを懸念し、消費増税以外の方法で財源を捻出し教育無償化を実現すると訴える。本県の子育て世帯の間では消費増税での幼児教育無償化についてはおおむね賛成との声が目立った一方、教育現場からは幼稚園教諭や保育士の確保といった教育環境の整備にも力を入れてほしいとの声が漏れる。
 弘前市の自営業花田一男さん(50)は妻と共働きで、19歳の専門学校生と13歳の中学生、5歳の保育園児の3人の子どもを育てる。「教育費は家計の大きな負担。子どもが大きくなるにつれて、教育に掛かるお金も増していく」と子育ての苦労を語り「幼児教育無償化が実現すれば本当にありがたい」とする。
 6歳の子どもが保育園に通っている同市の会社員女性(38)は「消費増税で幼児教育無償化の財源を賄うのは賛成。子どもの未来を担うものだから」と話す。
 教育現場からも賛成の声が上がるが、同時に人材確保といった保育環境の施策を求める声も上がる。弘前市内の私立幼稚園園長(59)は「市内の学校に通って幼稚園教諭の資格を取得しても条件のよい都会の園に就職してしまう。地元で働けるような環境を行政は検討するべきだ」と訴える。同市の保育園の副園長(38)は「保育士の資格を持っていながら一般企業に就職した人々を、保育業界に呼び戻す工夫が必要だ。人材がいなければ、無償化になっても子どもたちを受け入れられない」と苦しい現状を吐露した。
 野党が掲げるように、消費税ではなく別の財源で教育無償化をするべきだとの意見もある。2歳の子どもを持つ弘前市の主婦(32)は家計の負担を懸念しつつ「国の借金もあるので幼児教育を無償化するなら消費増税ではなく、国の予算を圧縮してからにしてほしい。増税は最後の手段だ」と厳しく指摘した。
 与野党は返還不要の給付型奨学金の拡充なども公約に掲げる。無利子と有利子の奨学金を借りている大学生の井畑礼さん(18)は「給付型奨学金の拡充は歓迎する。欧州では高等教育を無償化しているところもある。日本もそこまで進めてほしい」と求める。大学で教育学を学ぶ横関七海さん(21)は「教育実習先の学校では貧富の差が広がっていた。貧困世帯の子どもは後ろ向きな発言が目立つ。給付型奨学金があれば、将来の夢が描けるのではないか」と指摘する。

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安全保障と憲法改正=3

2017/10/17 火曜日

 

米陸軍車力通信所が近接する、つがる市の航空自衛隊車力分屯基地

 衆院選で争点になっている安全保障関連法と憲法改正の是非。昨年11月、陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊(青森市)を中心とした第11次隊が、国連平和維持活動(PKO)で南スーダンに派遣されたことは記憶に新しい。
 同国への派遣は2012年からだが、緊急時に他国の部隊などを救助可能な「駆け付け警護」など、新たな任務が付与された状態では初めて。施設整備などに一定の区切りがついたとして撤収するまでの約5カ月間、同隊は道路補修や医療支援活動などに従事した。
 新任務は行われなかったが、16年7月に首都・ジュバで武力衝突が起きるなど、治安情勢の危うさは明らか。自衛隊が戦闘行為に関与せざるを得ない状況に置かれるリスクを考えると、国際貢献への関わり方は今後の課題と言えよう。
 県自衛隊家族会の会長對馬敦夫さん(77)=青森市=は息子2人が自衛隊員。憲法改正には賛成の立場だが、「むやみに血を流すのではなく、世界諸国の軍の扱いを参考に議論してほしい。国民全体の理解が大事」と慎重な姿勢も示す。
 国際状況は緊迫の一途をたどっている。北朝鮮は8月29日と9月15日、弾道ミサイルを北海道方面に発射。ミサイルは双方とも日本上空を通過して太平洋に着水したが、国内では早朝から全国瞬時警報システム(Jアラート)が作動し、列島全体が混乱と恐怖に襲われた。
 国連安全保障理事会は経済制裁を発動したが、北朝鮮は核実験を強行するなど反発。制裁の中心を担う米国は軍事的行為も辞さない態度を示しており、米朝間の緊張は高まったままだ。
 津軽で唯一米軍が駐留するつがる市には早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が配備され、航空自衛隊車力分屯基地に近接する米陸軍車力通信所で運用が続けられている。近隣には住宅街や漁業地などもあり、国際情勢の危うさを懸念する声も聞かれる。
 車力漁業協同組合の代表理事組合長を務める尾野明彦さん(55)は、Xバンドレーダーについて「国の防衛上どこかに置かなければならない」としながらも、「実際にミサイルが飛ぶのなら、ここか自衛隊の基地がある場所だと思ってしまう」と話す。漁業に与える影響について「決められた時間、日数で操業しており生活が懸かっている」とし、避難誘導に苦慮していることも明かした。
 同市で9月1日に行われた今年の県総合防災訓練では、弾道ミサイル発射を想定した国民保護訓練(住民避難訓練)を初めて実施し、参加者が指示に従って建物内などに避難した。
 参考になったとする意見があった一方、一部住民からは「建物に隠れろと言われてもどうすればいいのか。ミサイルが飛んできたら助からないのでは」などと、戸惑いの声も聞かれた。
 世界情勢の混迷に伴い、国家安全と国際秩序への関わり方は目下の課題となる。對馬さんは「北朝鮮問題は話し合いでの解決が望ましいと誰もが思っている。だが、話し合いも効果がないように思える。心配だ」とつぶやいた。

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アベノミクス=2

2017/10/16 月曜日

 

弘前市のメインストリートである土手町通り。週末でも人通りはまばらだ=14日午後3時50分ごろ

 今回の衆院選でも争点の一つになっているのが安倍政権の経済政策「アベノミクス」だ。選挙戦では、与党が賃上げや雇用の拡大など実績を強調するが、地方への波及効果は限定的で「景気回復の実感はほとんどない」という声が大半を占める。第2次安倍政権が発足して5年近くたっており、「いつまでも道半ば。もう期待もしていない」と諦めの声さえ聞かれ始めた。
 大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の3本の矢を掲げて始まったアベノミクス。日経平均株価は2万円を超え、4~6月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で2・5%増と、11年ぶりに6四半期連続のプラス成長と「好景気」を示す指標は多い。
 しかし、賃上げや個人消費は力強さを欠き、地方にも恩恵はもたらされていない。弘前市のメインストリートである土手町通り。少子高齢化、若年層の人口流出に歯止めがかからず、かつてのにぎわいは失われたまま週末の人通りはまばらだ。
 中土手町商店街振興組合の平山幸一副理事長は「5年前に比べれば人の動きは出てきている。中央の景気が良くなっているのは確か」とし、「何もしなければ人は来ない。人口減少が続く中、交流人口を増やすことも必要。地域、商店街、店が特色を打ち出していかなければ生き残れない」と話した。
 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた東京都心の再開発ラッシュで、首都圏の建設業はその恩恵にあずかる。しかし、遠く離れた県内に波及効果はほとんどなく、人手不足というしわ寄せも来ている。
 弘前市にある土木会社の男性社長(70)は「工事自体が少なく、入札の予定価格も低いため、利益が見込めない。従業員のために仕事を取らなくてはならないが、経費を削るのにも限界がある」とこぼす。人手不足も深刻で「中央に人を取られ、求人を掛けても全然集まらない。なり手もおらず、このままでは地方の建設業界は大変なことになる」と危惧した。
 管工事や土木工事などを請け負う建設業男性(47)も「現場監督が全然足りない。これから生産年齢人口がどんどん減っていく。人材を育てていかなければ」と危機感を募らせる。仕事で東京に行くことも多く、「景気の良さを感じる。このまま待っていては駄目。中央の仕事を取りに行くことも必要」と力を込めた。
 政権がアベノミクスの成果の一つとして強調するのが、インバウンド(訪日外国人客)の大幅な増加。県内でも今年上期(1~6月)に県内に宿泊した外国人(延べ人数、速報値)は過去最高の9万4740人(前年同期比64%増)に達した
 弘前市内ホテルの役員男性(41)は「宿泊者数は増えているのは確か」としつつ、「震災直後が底だっただけで、アベノミクスの成果なのかは分からない」と指摘。「宿泊者は増えているが、客単価が下がっているのが実情。価格を抑えないと選んでもらえない」と苦境を語った。
 雇用も指標は改善を示す。第2次安倍政権発足時に0・6倍だった県内の有効求人倍率は、昨年1月に初めて1倍を突破し、今年8月には過去最高の1・26倍に。しかし、実際に希望する仕事に就ける求職者は少なく、津軽地方で営業の仕事をしている男性(36)は「給料が上がらないため転職を考えているが、求人は建設、福祉関係ばかり。何も変わっていない」と嘆いた。

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