’19知事選 検証三村県政

 

観光=4

2019/5/6 月曜日

 

「青森港国際クルーズターミナル」の供用開始式で、テープカットする三村知事(右から4人目)=2019年4月24日

 2016年3月26日、県や観光関係者が〝第3の開業〟と位置付ける北海道新幹線が本州と北の大地をつないだ。10年12月の東北新幹線全線開業の直後、11年3月の東日本大震災により、本県の誘客は不完全燃焼に終わった。県は鉄道やフェリー、飛行機などの交通網を組み合わせた「立体観光」による広域観光を提唱し、三村申吾知事自らが各地に赴き、青函圏を新たな観光テーマとして売り込みリベンジを図った
 本県の年間延べ宿泊者数は16年に約500万人泊、翌年の17年は462万人泊と落ち込んだが、18年は約503万人泊に回復。だが、県の観光戦略「未来へのあおもり観光戦略セカンドステージ」(14~18年度)で設定した目標550万人泊は達成できず、現行の観光戦略(19~23年度)に持ち越された。
 こうした中、三村知事はいち早く訪日外国人客獲得に向け、各国や地域ごとに積極的なトップセールス、プロモーション活動を展開。新たな空路開拓にも力を入れた。
 エバー航空(台湾)は17年11月から18年3月にかけて、青森空港と台北を結ぶ初の定期チャーター便を運航。17年5月に就航した奥(オー)凱(ケー)航空(中国)の青森―中国天津線は冬期間(2018年10月28日~19年3月30日)を週2往復から週4往復に増便。大韓航空(韓国)の青森―ソウル線も17、18年と2年連続で冬期間を以前の週3往復から週5往復にアップさせた。7月17日に国際定期便が就航するエバー航空の青森―台北(桃園)線も冬期間の週5往復を決めるなど、働き掛けが結実した。
 ソフト面においても、11年に本県の公式アカウントを開設した中国のインターネット交流サイト(SNS)「微博」は、いまや全国の自治体の中でも断トツ1位のフォロワー数120万を誇る。〝拡散力〟を味方に付け、効果的なプロモーションやSNSの活用、情報発信力が高いインフルエンサーやブロガーの招へい、旅行エージェントらに対する商品造成の働き掛けに加え、多言語案内や表記への支援など、取り組みを加速させた。
 県内の宿泊施設(従業員数10人以上)に宿泊した外国人客数は年々伸び続け、15年が約11万人、16年が約14万人、17年約24万人、18年が約29万と過去最高を更新し続けている。
 空路だけではなく、海路にも力を入れる。国の直轄事業として青森港の新中央埠頭の岸壁が延伸。より大型のクルーズ船が受け入れられるようになった。県などは専用施設がなく、これまでは船内で行っていた税関や出入国管理、検疫などのCIQ手続きを担う「青森港国際クルーズターミナル」を整備し、4月24日に供用を開始。手続き時間の大幅短縮が実現した。
 青森港のクルーズ船寄港数は14年に20回だったのが、15、16年が各21回、17年22回、18年は26回と右肩上がり。今年は過去最高の27回となる予定だ。
 三村知事は4月25日の定例会見で「立体観光の推進により、外国人延べ宿泊者数も震災以降、約5倍に増加し(18年の本県延べ宿泊者数は)国内外合わせて503万人泊となった。これをいかに観光消費額2000億につなげていくかが課題」とした。
 本県観光の長年の課題とされてきた〝通過型〟をどう〝滞在型〟に転換し、県内の滞在時間、消費額を増やせるか。稼げる観光地域の構築に向け、一層の工夫が求められる。

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健康長寿=5

2019/5/8 水曜日

 

 平均寿命の延伸は本県の重要な課題だ。厚生労働省が2017年に公表した都道府県別生命表によると、15年の本県の平均寿命は男性78・67歳、女性85・93歳でいずれも全国最下位。男性は1975年から9回連続、女性は阪神・淡路大震災の影響を除去すれば95年から5回連続ワーストと不名誉な記録が続いている。
 死因は、がん(悪性新生物)や心疾患、脳血管疾患、糖尿病など生活習慣に起因するものが多い。厚生労働省が18年に発表した2017年の人口動態統計の概況によると、本県のがんの死亡率(人口10万人当たりの死亡者数)は過去最高の391・4で、全国順位は16年に続きワースト2位。糖尿病の死亡率もワースト2位、脳血管疾患は同4位と高かった。さらに、本県は自殺による死亡率も全国ワースト3位で、平均寿命の延伸には幅広い分野からの取り組みが不可欠だ。
 県は前基本計画「未来を変える挑戦」(14~18年度)で戦略プロジェクトの一つに「健康長寿県プロジェクト」を掲げてきた。平均寿命の延伸が経済活動の増加を招き、県民所得の向上につながるといった観点から事業を展開。とりわけ、課題である働き盛り世代の男性の死亡率低下に向けて策を講じた。
 17年度は部局横断的な取り組みとして、健康経営事業所認定制度を開始。がん検診費用の補助や禁煙支援など従業員の健康管理に力を入れる事業所を認定し、入札参加時の加点など優遇措置を与えている。「職域への事業はこれまでも行ってきたが、個人だけでなく、事業所全体の意識変化が制度の狙い」(蛯名勇登がん・生活習慣病対策課長)。認定は約2年で建設業を中心に170以上に及び、事業所の意識変化が進みつつある。
 18年度からは三村申吾知事と県職員で構成する「高血糖ストッパーズ」を結成し、県内のスーパーなどで、踊りや寸劇を用いて糖尿病の知識を紹介している。結成のきっかけは職員からの発案。同課によると、発案時点の構成メンバーは職員だけだったが、「自らが示すことで伝わることもある」と三村知事自ら名乗りを上げてメンバーに加わった。観衆からの反応も回数を重ねるごとに上向きになっているという。
 平均寿命は医学的進歩もあって毎年伸び続けており、15年は本県の男性の延び幅が全国3位と躍進した。県保健医療政策推進監を務める大西基喜県立保健大学特任教授は「『生活習慣を改善しよう』という意識や方向性はつくった」と県の取り組みを評価した上で、「今後はいかに知識を普及できるか。事業期間の2~3年だけではなく、長期的な視点を持った事業が必要だ」と指摘する。
 喫煙や飲酒、運動不足などの生活習慣を改め、取り組みが結実するには20~30年とかかる可能性がある。「将来を見据えて学校への働き掛けも大切。平均寿命はコミュニティーや経済、教育などさまざまな社会問題の影響を受ける」と大西特任教授は語る。

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縄文遺跡群=6

2019/5/9 木曜日

 

三内丸山遺跡センターのオープンに先立ち、テープカットを行う三村知事(右から3人目)ら=2019年4月4日

 世界自然文化遺産登録を目指す、本県の国特別史跡・三内丸山遺跡(青森市)など4道県17遺跡からなる「北海道・北東北の縄文遺跡群」。
 三村申吾知事が、県内の縄文遺跡群の世界文化遺産登録に向けた取り組みを進める方針を表明したのは2005年10月。それから13年余りが経過し、1月の文化審議会世界文化遺産部会では、今年度の審査対象を縄文遺跡群のみとする方針を決め、ようやく21年夏の登録が視野に入ってきた。縄文遺跡群世界遺産登録推進本部長も務める三村知事は「世界遺産登録実現に向けて大きく前進した」と喜び、引き続き全力で取り組む考えだ。
 21年の登録が視野に入るまでには長い年月を要した。当初は県内7遺跡での登録を目指したが、07年に北海道と岩手県、秋田県に呼び掛け、4道県での共同提案に。09年1月に世界文化遺産登録暫定一覧表に掲載された。
 13年度から毎年審査に挑戦したが、北海道・北東北に地域を限定する理由を問われるなど検討課題が示され、一定の評価はなされたものの、推薦は見送られてきた。
 18年度の審査で、県などは1万年ほど続いた縄文時代を集落の変遷などで切れ目なく説明できるのは国内では北海道・北東北地域しかないことを強調。国内の他の縄文遺跡文化圏との違いを明確に打ち出し、18年7月に文化審の答申までこぎつけた。
 国連教育科学文化機関(ユネスコ)が各国の推薦枠を一つに制限したため、18年度の国内推薦候補は世界自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」(鹿児島、沖縄両県)に決定。今年度は他に競合する候補がなく、最短で21年夏の世界遺産登録が期待される。
 時間を要したことで、民間にも世界遺産登録をサポートする動きが広がった。遺跡ごとにガイドなどを行うボランティア団体が誕生し、熱心な活動を行っている。
 三内丸山遺跡でガイドなどを行う一般社団法人三内丸山応援隊の一町田工代表理事は「世界的な関心が高まっていると感じている」と話し、外国人観光客も年々増加傾向にあるという。各遺跡では外国語のガイドブックや外国語表記の案内板を設置するなどの取り組みが進められているが、ボランティアからは「多言語で最低限、簡単なあいさつができるようにするなどの備えも必要」という声も上がる。
 また、フォーラム開催や遺跡の魅力に触れるイベントなど官民一体となった広報活動を展開してきたが、機運醸成に向けたこれらの取り組みは今後も引き続き必要となる。
 最終的にユネスコに提出する推薦書の充実や学術的価値の浸透はもちろん、世界遺産登録の必須条件の一つとなっている市町村ごとの景観計画、景観条例の整備も急務だ。
 三村知事は「縄文遺跡群のプロモーションに加え、誘客や受け入れ態勢の整備も積極的に進める」と意欲を示している。世界遺産登録はゴールではない。受け入れ態勢の整備や各遺跡の価値を高め、世界に発信する取り組みなど、登録後も見据えた息の長い取り組みが求められる。

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エネルギー政策=7・完

2019/5/10 金曜日

 

原子力規制委員による再処理工場の現地視察が行われ、施設の安全対策の現況を確認した=2019年1月18日

 2011年3月の東日本大震災に伴う福島第1原発事故発生以降、施設の安全・安心に向けた取り組みが一層重要性を増している。
 東北電力の東通原発1号機(東通村)は、定期検査のため運転を停止していたときに東日本大震災が発生。再稼働に向け、新たな安全対策を求められることになった。計画では安全対策工事完了は2021年度の予定。
 21年度上期の竣工(しゅんこう)を目指す日本原燃の再処理工場(六ケ所村)は、原子力規制委員会による安全審査が最終局面を迎えているものの、クリアすべき課題はいまだ多く、下北半島に計画される他の原子力関連施設と同様、本格稼働に向けては道半ばの状態となっている。
 三村申吾知事は就任直後の03年に「県原子力政策懇話会」を設置し、毎年、原子力施設の安全性や地域振興
などの課題について専門家などから意見を聞いているが“独自検証”としての要素は薄い。
 原子力関係の会議や県議会で「安全・安心が第一」と訴える三村知事だが、今後の具体的なエネルギー政策の在り方については、原子力政策が国策であることを強調し「国の動きを注視する」と述べるにとどめ、踏み込んだ言及を避けてきた。
 新潟県では東京電力・柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働を判断する前提として、独自に福島第一原発事故の検証を行い、17年8月には「健康と生活への影響」「安全な避難方法」の二つの検証委員会を新たに設置するなど県として断固としたスタンスを表明。
 こうした動きを踏まえ「青森も独自に(原子力施設の)安全性を確認していくべき」と指摘する声もあり、現状の県の姿勢に批判の声も上がる。
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の候補地選定の議論も進んでいない。県は歴代の経済産業大臣と面会し「本県を高レベル放射性廃棄物の最終処分地にしない」という確約を確認している。ただ、全国的に議論は深まらず、「なし崩し的に本県が最終処分場になるのでは」と危惧(きぐ)する声は、いまだ根強い。
 18年8月の定例記者会見で三村知事は「最終処分場の早期選定に向けて国が前面に立って、不退転の決意で取り組みを加速させていただきたい」とし、責任主体である国の動きを見守る考えを示した。
 原子力政策が先行きに多くの課題を抱える一方で、施設の立地が多くの雇用を生み、本県の地域経済に寄与してきたのも事実だ。
 県の自主財源の柱である県税収入のうち、県内の原子力関連施設に県独自に課す法定外普通税「核燃料物質等取扱税(核燃料税)」は14年度から毎年約200億円に上り、総県税収入の1割強を占める。依然として核燃料税への税収依存が大きい状況にある。相次ぐ原子力施設の竣工時期延期に伴い、地元自治体からは経済的苦境の声も聞かれる。
 国策ゆえに見通しが不透明な原子力政策にどう向き合うのか。また、“原子力マネー”に頼らない地域づくりに今後どう取り組むのかが大きな課題だ。

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