’19知事選 検証三村県政

 

2019/5/3 金曜日

 

  任期満了に伴う16日告示の知事選に5選を目指して出馬を表明した三村知事。4期16年における分野別の政策、政治姿勢を検証する。

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財政再建=1

 

 「青森県を絶対につぶさないとの決意で持続可能な県づくりにまい進してきた」と、4月の定例会見で強調した三村申吾知事。貯金に当たる基金残高が数年内に底を突き、財政再建団体への転落の恐れもあった就任当初からこれまでを振り返り、今任期でようやく実現した収支均衡予算に感慨深げだった。
 2003年7月の就任以来、4期約16年にわたって、危機にひんしていた県財政の再建に取り組んできた三村知事。今任期中は借金に当たる県債残高(臨時財政対策債を含む)を着実に減らし、17年度当初予算で財源不足を補う基金の取り崩し額ゼロを27年ぶりに実現し、収支均衡予算を19年度まで3年連続で継続するなど、行財政改革の一定の成果が表れた4年間となった。
 03年度と19年度(当初予算ベース)を比較すると、基金残高は785億円から339億円に、県債残高は1兆2596億円から1兆571億円となり、貯金を446億円減らしたが借金も2025億円減らしたことになる。今任期中は微増ながら基金残高の増加傾向を維持し、県債残高は毎年度約400億円ずつ減少させた。
 財政再建に向けては、施策の重点化や人件費削減などによる歳出抑制に注力。不要なハコモノ建設を抑え、当初予算で03年度は2138億円を計上した普通建設事業費は、今年度は1191億円に。人件費に係る職員数の適正化では、一般行政部門は4月1日時点で03年度の5483人から今年度は3800人となり、人口や財政規模が近い他県を下回る水準となった。
 県債発行額も今年度は628億円と6年連続で削減し、10年でおおむね半減。それに伴い公債費も年々減少している。また、県債残高のうち4152億円は後年に国が全額を措置する臨時財政対策債で、実質的な県債残高は右肩下がりとなっている。
 近年は財政再建が着実に進んでいると言えるが、歳入環境の先行きには暗雲が漂う。県財政課の山田耕太朗課長は「地方交付税がどれくらい入ってくるのか予断を持って言えない。歳入環境は引き続き厳しく、財政規律を維持するには財政健全化の努力を継続していかないと」と話す。
 政府は経済財政運営の基本指針「骨太の方針」で、景気回復に伴い地方税収の伸びが見込まれることから地方交付税を減少させる方針。今年度は増加したものの臨財債が大幅に抑制され、実質的な地方交付税は減少した。県税は税制改正などにより増加傾向にあったが、今年度は6年ぶりに減少する見通しとなっている。自主財源、依存財源でそれぞれ最も大きい県税、地方交付税の先行きが不透明な状況にある。
 今後も社会保障費の自然増、20年東京五輪・パラリンピック後の景気後退など、財政に影響を与える不安材料は尽きない。臨財債を含む県債残高も改善傾向にあるとはいえ、依然として当初予算規模が同程度だった1991年度の2倍以上を抱えている。最大の課題である人口減少対策は急務となっており、行財政改革の継続は不可欠だ。

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人口減少対策=2

2019/5/4 土曜日

 

今年2月に行われた全国初の試み「ハイブリッド型インターンシップ」の様子

 出生・死亡による自然減は避けられず、転出入による社会減との両面で人口減少が進む本県。柏木司県企画政策部長は「(対策は)一朝一夕の世界ではない」とした上で「打てる手があるところは手を打っていく」と語る。減少ペースを緩和し、人口減少下でも持続可能な地域社会を構築するためには、あらゆる分野で息の長い取り組みが求められる。
 本県の推計人口は近年減少が加速しており、2018年(10月1日現在)は126万2815人で前年比1万5766人減少。県が15年に策定した県長期人口ビジョンでは、40年までに▽合計特殊出生率を2・07▽平均寿命を全国平均▽社会減を移動均衡―にそれぞれ向上させることで、人口減少のペースを緩め80年に約80万人で安定させるとしている。
 定住や移住は、地域の雇用環境が大きな要因となる。「経済的基盤である生業(なりわい)と雇用の場をつくること、県民の命と暮らしを守ることを基本として取り組みを進めてきた」と三村申吾知事。全国最低水準だった有効求人倍率は少子高齢化や景気回復を背景に伸び続け、雇用情勢は近年で様変わりした。
 09年度は平均0・29倍だった県内の有効求人倍率は16年3月に初めて1倍を超え、18年度は平均1・30倍にまで上昇。それに伴い、各産業では人手不足が深刻化している。しかし過去10年の社会減はおおむね5000~6000人台で推移し、18年は5820人減で前年から減少幅がやや拡大。情勢に大きな変化は見られていない。
 特に学校卒業に伴う若者の県外流出が課題で、年齢別の社会減は18歳が突出して多く、22歳、20歳と続く。今年3月に高校を卒業した就職希望者数に対し、2月末時点で県内企業からは約1・7倍もの求人数があったものの、県内内定者は5割強どまり。近年の県内就職率は56~58%台で推移し、18年3月卒の56・7%は全国ワーストで、東北平均を15・9ポイント、全国平均を24・4ポイント下回った。
 雇用情勢の変化に伴い、県は若者の県内定着やUIJターンの促進に注力。県庁、民間企業両方の就業を体験できる全国初の「ハイブリッド型インターンシップ」、女子学生らとの交流を通じ県内就業を促す「あおもり女子就活・定着サポーターズ」(通称・あおもりなでしこ)の活動など、本県暮らしの魅力を含めた県の情報発信は「思い切った取り組み」(県担当者)も目立ち、あの手この手と戦略を練っている。
 創業者数や企業の誘致・増設数、東京都の県の相談窓口を通じた移住者数など、着実に伸ばしている数字も少なくない。しかし、本県の社会減は他県と比べても多い中、全国的な動向と同様に改善している合計特殊出生率は平均と同じ1・43にとどまり、子どもを産み育てやすい環境づくり、産業振興に向けた労働力不足への対応など、依然として課題は山積している。
 目前に迫る25年以降の超高齢化時代や技術革新の加速により、今年度スタートした5年間の県基本計画期間を「時代の転換点」と捉える三村知事。社会経済環境の変革により、人口減少対策もこれから正念場を迎える。

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農業=3

2019/5/5 日曜日

 

2018年産霹靂の新米イベントでおなじみの法被姿で宣伝する三村知事(左から3人目)=18年10月6日、青森市

 「青天の霹靂(へきれき)のおいしさを食べて実感してもらいたい。全国へ世界へ、そのおいしさを伝えたい」
 2018年産の新米が発売された昨年10月6日午前7時すぎ。青森市内にある量販店の特設コーナーにずらりと並べられた米袋の前に立った三村申吾知事は、おなじみの青い法被姿でPR隊と一緒に霹靂を宣伝した。
 トップセールスで売り込む農産物は近年、好調な数字を示す。大手量販店との通常取引額を過去5年間で見ると、13年度の261億円から毎年微増し、17年度には285億円に。前回選の公約に掲げた「農林水産業の県外取引額400億円」(同通常取引額)は未達成だが、社会構造の変化や総合スーパーの影響で通常取引額の維持が厳しい中での増額は「大健闘している」(県担当者)。
 リンゴも好調。14、15、17、18年産が「リンゴ輸出3万トン」を超えたほか、県内外や加工仕向けに出荷された生果の販売額を合計した販売額(年間)も14~17年産の4年連続で1000億円を突破して勢いを見せる。
 前述の担当者は宣伝はもちろん、取引先との関係性を重視して知事自らが社長らと商談する長年の取り組みが現在につながり「三村さんだから取引すると話す社長やバイヤーは多い」と話す。
 農産物の販売が順調な一方、生産維持の上で重要な生産者の減少と高齢化が進む。
 直近のデータである15年農林業センサスを見ると、農業就業人口(販売農家)は10年の前回調査に比べ1万5737人減の6万4746人。平均年齢も同1・2歳上昇し63・8歳。1次産業中心の本県でこの傾向が続けば、個々の生産活動だけでは地域を維持できない恐れがある。
 そこで期待されるのが、集落営農組織などが地域の中核的担い手として多様な業種・産業と連携して雇用の創出や収益性の向上させ、農山漁村を継続的に支える「地域経営」の考え方。県は12年度から地域経営体の事業に取り組み、17年度に288地域経営体が認定された。
 地域経営体は候補段階(未認定)の第1段階、地域経営体に初めて認定される第2段階(体制整備)、経営力強化や地域貢献が求められる第3段階(経営発展)、第4段階(地域貢献)に分類される。
 認定を受ける中泊町の特産物直売所「ピュア」は地域の核になる産直施設になるため、野菜などの集荷で高齢者が活躍できる場の創出や生鮮食品の配送サービスなど、人口減少に対応できる地域の持続、自立の発展に向けた活動を展開する。
 ただ、こうした地域貢献にまで発展できる地域経営体は少ない。17年度時点で認定を受ける288地域経営体のうち第3、4段階の認定は計55経営体のみ。農山漁村を将来にわたって維持する上では第3、4段階の地域経営体が不可欠になる。
 「食と命、文化のゆりかご(農山漁村)を守りたい」。三村知事がこの4年間訴え続けてきたこの言葉を実現するには、トップクラスの地域経営体の育成が急務になっている。

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