創生への道 人口減少時代を生きる〈第5部 地域づくり〉

 

サブカルの可能性=3

2018/11/26 月曜日

 

ふらいんぐうぃっちの効果で来場者が増加した藤田記念庭園の「大正浪漫喫茶室」=2016年9月

 人気アニメなどサブカルチャー(サブカル)の舞台になった実在の場所を巡る「聖地巡礼」。各地の観光スポットだけでなく、一見どこにでもあるような場所ですら、観光地としての価値を持ち得るのだという可能性を示した最近の旅行スタイルだ。「聖地」を新たな観光資源として活用する自治体は全国的にも少なくない。
 2016年にアニメ化された「ふらいんぐうぃっち」(原作・石塚千尋さん、講談社・別冊少年マガジン連載)の舞台である弘前市でも、さまざまな取り組みが行われている。
 弘前観光コンベンション協会は15年に初めて、同作品を扱った聖地巡礼を企画した。舞台になった市内の各スポットを巡るマップ「チトナビ」を作成し、弘前市立観光館などで配布。弘前駅中央口には看板を設置した。
 アニメの放映が始まった16年には弘前さくらまつり、弘前ねぷたまつりとのコラボレーション企画を展開した。
 「予想以上の効果があった」と当時を振り返る同協会の白戸大吾観光振興部長。劇中で主人公らが訪れた藤田記念庭園洋館内「大正浪漫喫茶室」の来場者数は、15年6~8月が5880人だったが、アニメが放映された16年同時期は約2倍の1万2074人に達した。
 何よりも、アニメ冒頭部分で主人公が降り立つ同市下湯口のバス停など、観光地ではない場所に、多くの観光客の姿が見られるようになったのは驚きだった。
 「アニメなどと連携した取り組みは、地元にとって普段何気ない場所が観光地化する可能性を秘めている」と白戸部長は力を込める。
 放映から2年が経過した現在、ブームは沈静化している。当初の確かな効果を実感しつつも、市民からは急激な落差を指摘する声があり、現在を「つなぎ」の時期として、新たな取り組みを模索すべきとの声もある。
 同市中野で25年の長きにわたってアニメグッズ店「アニメディアブランコ」を経営する松岡保彦さん(64)は、「ふらいんぐうぃっち」アニメ化前の15年7月に同作品のグッズをプロデュースした。同店には現在も、県内外からグッズを買い求めに来店するファンが後を絶たない。
 松岡さんは「地元はブームが過ぎ去っていても、全国に根強いファンが居る。聖地巡礼で訪れるファンを大切にすべき。新たな取り組みで地元がもっと盛り上がれば効果を持続させられるのでは」と強調。「聖地巡礼で訪れる観光客は若年層が中心だろう。また訪れたくなるような仕組みづくりを」と訴える。
 実際、同作品のファンの活動は活発だ。全国各地から弘前を訪れ、交流活動に参加するファンも少なくない。市内で交流会などを主催してきた同市の会社員三浦裕基さん(23)もファンの一人だ。「作品には生まれ育った弘前の風景が登場するので、アニメに入り込んだような気持ちになる」と作品の魅力を語る三浦さん。
 「ファンの力で弘前を動かせないか」と思い立ち、17年2月に同作品にちなんだ雪燈籠を作るイベントを初めて主催した。今年2月にも行われ、全国から集まった約20人が力を合わせて作った雪燈籠が、弘前城雪燈籠まつりに花を添えた。「弘前と『ふらいんぐうぃっち』の魅力を伝えたい。活動が地元の盛り上がりにつながれば」と意欲を語る。
 ねぷた絵師としても活躍する三浦さんは、ファンが中心となって「ふらいんぐうぃっちねぷた」を制作・運行するという夢があり、実現に向けて現在計画を練っている。ファンの活動で新たな効果を生み出したい考えだ。
 「日本のアニメは世界的な人気がある。2020年の東京五輪に合わせ、各国からのインバウンドに向けた発信も行っていければ、さらなる効果が期待できる」と白戸部長。弘前観光コンベンション協会は、他作品も含めた新たな切り口での取り組みも検討している。熱烈なファンの力も生かしながら、アニメなどを活用した地域振興への模索が続く。

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SCと商店街=4

2018/11/27 火曜日

 

五所川原市のエルムの街ショッピングセンター。週末は多くの買い物客でにぎわう

 近年、国内各地で大型ショッピングセンター(SC)の進出が相次いでいる。特に地方では郊外に建設され、週末ともなれば多くの家族連れらが車で足を運ぶ姿が見られる。その一方で、大型SC進出は中心商店街衰退の一因になったとも指摘され、地域によってはシャッターを閉じたままの空き店舗が目立つ。大型SCと地元中心商店街の共存は可能なのだろうか。
 五所川原市に1997年にオープンした「エルムの街ショッピングセンター」。県内外から積極的にテナントを誘致し、フードテーマパーク「津軽ラーメン街道」をはじめ「スターバックスコーヒー」「いきなり!ステーキ」などを本県に初出店させて話題を提供してきた。津軽自動車道の整備も後押しし、現在は県内外から年間800万人が足を運ぶ。年間売上額は約200億円と、本県を代表する商業拠点となっている。
 エルムを運営する五所川原街づくり株式会社の山崎淳一副社長は「生活支援と雇用確保情報発信を方針にここまでやってきた」と振り返る「単館SCのためスタッフは異動がない。そこを強みに、フットワークの軽さを生かして全国で折衝してきた。スターバックスは(誘致実現まで)9年かかった」と明かす
 オープンから約20年たつが、集客力は衰えることがない。「時代の流れをくんで、客を飽きさせないようなテナント誘致に努めている」とその秘訣(ひけつ)を語る山崎副社長。流行に敏感に、県内でほかにはないテナント誘致を図り、客を呼び込む仕掛けづくりに挑み続けてきたからだ。
 集客力を誇るエルム誕生以降、周辺にはさまざまな店舗が進出している。近く、新たなショッピングモールも誕生予定だ。競争激化の中、山崎副社長は「時代のニーズに対応し、常にお客さまが行きたい場所、長時間過ごしたいと思える場所にしていかないと人は遠のいてしまう。それはどのお店でも同じ」と語気を強める。
 エルムとその周辺に人が集まる一方で、かつてデパートが三つもあり商都としてにぎわった同市の中心部は、活気が失われ閑散としている。JR五所川原駅から広がる中心商店街は空き店舗が目立ち、アーケードはすべて取り払われ、後継者不足などを理由に商店街の組合は解散していった。
 「エルムができてから消費者がそちらを選択する傾向が強くなった」と話すのは、1921年創業の又上佐々木呉服店の佐々木慎一郎代表取締役。創業約70年の靴店「ゴムのごとう・木靴(サボ)」の後藤厚子店主は「SCだけでなく、郊外に団地ができたことも要因だと思う」と話す。中心商店街活性化を目指し10年以上前に進められた大町二丁目地区土地区画整理事業によって、逆に営業を終了した店舗も複数あったと指摘する声もある。
 2017年に解散した大町商店街振興組合の齋藤英明元理事長は「結成当初は74人いた会員が、解散時は30人弱だった。中心市街地に居を構える人自体が少なくなっている中で(衰退の)流れには逆らえなかった」と無念さをにじませる。
 それでも、昔と変わらず商店街を利用する客は少なくない。佐々木代表取締役は「お客さんにとって必要なら今後も残るだろう。時代に合った商品を作れば必ず需要は出る」と力を込める。
 後藤店主は「はやり廃りではなく、時には海外からの物を取り扱うなどして“本物”にこだわって販売している」。今後の可能性について「エルムは主に若者をターゲットにしている感があるが、そこに当てはまらない高齢者らを大切にした商売をしていきたい」と語り、エルムとは異なる路線での商売に活路を見いだす。
 山崎副社長も「中心商店街のにぎわいは絶対に必要」と強調し「量販のSCに対し、質販とも言うべき本当の専門店は中心街でこそ需要がある。そういうすみ分けがしっかりされればお客さまの選択肢も増えていくだろう」と共存共栄の可能性を訴える。

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新・ご当地グルメ=5

2018/11/28 水曜日

 

マグステ丼販売累計20万食突破を記念し、深浦町役場内で開かれたセレモニー。中田氏(右端)吉田満町長(右から2人目)西﨑会長(左端)に笑顔がこぼれる=10月17日
中泊メバル膳(左)と「メバせん」。さらに人を呼び込むため、中泊町の関係者はメニューのリニューアルや新商品開発などを行っている

 地産地消で街おこししようと「新・ご当地グルメ」が誕生したのは2005年7月。北海道美瑛町の「美瑛カレーうどん」を皮切りに、これまでに70以上のメニューが全国で開発された。
 本県も13年に誕生した深浦町のマグロステーキ丼(マグステ丼)を皮切りに五つの新・ご当地グルメが生まれ、リクルートの調査によると今年10月22日現在で合計約38万9000食を提供、約22億7500万円の経済効果を生み出している。
 一方で、全国70以上の料理のうち約半数は現在販売されておらず、本県関係者は「一過性で終わらないよう常に新しい情報を出していかないと」と次の一手を考案している。
 水揚げ量県内トップの深浦産マグロを使った3種もの丼を味わえるマグステ丼。販売開始から約5年4カ月後の今年10月17日に達成した20万食は、国内でも3番目のスピードという快挙だった。人口8300人弱の町が起こした奇跡に、新・ご当地グルメプロデューサーのヒロ中田さんは「これまで手掛けた中でナンバーワンの成功事例」と舌を巻く。
 町や地元商工会、漁協、提供店などが一丸となって丼を核とした多くの取り組みを展開。結果、町全体の活性化につながったとの自信も生まれ、交流人口増に期待する声も上がる。深浦マグロ料理推進協議会の西﨑朋会長は「20万食の95%が町外観光客。さらに増え雇用にもつながれば、人口減の加速を和らげることができる」と見据える。
 町観光課の鈴木マグロー課長補佐は「マグステ丼は深浦の知名度を多少高めたと思うが、地域活性化下支えまでの威力はまだない。しかし可能性は信じたい」と語る。一方で「ブームが終わったとしても、こつこつやってきたことによる誇りが生まれ『みんなでやる力』が養われたのでは」とこれまでの経験が関係者の自信につながったことを強調する。
 本県新・ご当地グルメの三男坊として15年7月に中泊町で誕生した「中泊メバルの刺身(さしみ)と煮付け膳」(略称・中泊メバル膳)。これまでに6万3000食以上を提供し、課題だった年間を通した提供についても専用の冷凍機を導入。さらにレトルトの「メバチン!」、せんべいの「メバせん」などメバルシリーズを第4弾まで開発、町への経済効果は約6億5000万円に上っている。町民の意識も変わり、小中学生が修学旅行先でPRするなど町全体でメバルの宣伝をする動きが広がっている。
 しかし関係者は「徐々にだが販売ペースは落ちている。てこ入れしないとせっかく注目が集まったのに人が離れてしまう」と危機感を募らせる。そんな中で進められているのがメニューのリニューアル。デザートを新たに追加するなどして来年度デビューさせる予定だ。
 10月に開かれた中泊メバルフォーラムでは、本県の関係者やヒロさんらが出席して新・ご当地グルメの今後の可能性について意見交換した。同町については「専門のレストランと温泉をつくれば良いのでは」といった声が上がった。
 中泊メバル料理推進協議会事務局長で鈴木メバルーさんこと鈴木統生町水産商工観光課課長補佐は「メバルを通じてどんどん新しい物、情報を発信して中泊に人を呼び込みたい」と意気込む。
 食によるまちづくりをさらに盛り上げようと「平内ホタテ活御膳」(平内町)、「田子ガーリックステーキごはん」(田子町)、「東通天然ヒラメ刺身重」(東通村)を含む五つの関係団体は「新・ご当地グルメネットワークあおもり(S―1あおもり)」を結成。地域間連携を図り「食材の宝庫」である本県を次のステージ「料理王国」にしようと、スタンプラリーなどの活動を展開している。
 ヒロさんは「五つすべてが成功しており、青森県の食の豊富さを示している。今後もスピード感を持って次の一手を考えてほしい」と期待する。

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