創生への道 人口減少時代を生きる〈第4部 農業〉

 

激変するコメづくり=6

2018/7/19 木曜日

 

育苗ハウスでシャインマスカットの生育を見守る川浪さん。農業経営を維持するため、コメ作りを基軸としながら他作物の栽培にも取り組む

 半世紀ほど続いた国によるコメの生産調整が2018年産から見直された。本県では「県農業再生協議会」が独自に生産数量目標を定めたが、過剰供給によって米価が下落するのではないかという不安は大きい。コメの消費量が年々減少していく中、本県最大のコメどころである西北地方では、生き残りを懸けて売れるコメ作りに励む生産者がいる一方、コメに変わる高収入可能な農作物への移行も進められている。
 中泊町の農業生産法人ケイホットライス。代表取締役の荒関敬悦さんは1987年、生産者が農協などを通さず消費者と直接契約して販売ができる「特別栽培米制度」に県内で初めて取り組んだ。
 「農業も商売。“商品”をどうやって売るかと考えた結果」と荒関さん。生産調整の廃止について「県で独自に目標を決めるようになったので実際は変わらない」とし「コメの消費量がどんどん減る中、過剰生産すると米価は下がらざるを得ない。そうなると、リタイアする農家がたくさん出てくる」と危惧する。
 「精米より、コンビニのおにぎりや真空パックのご飯が売れる時代。そういう部分へ売り込んでいくことも必要」と話す荒関さん。それでも「やはり、国内でもっとコメを食べてもらう取り組みをやってほしい。コメを食べることで国土と農家を守ることにつながるんだと知ってもらいたい」と切実に訴える。
 生産者の中には、コメ以外の農作物に経営の活路を見いだす動きもある。水稲の育苗ハウスを活用したシャインマスカット栽培に取り組み、今年産からは市場に出荷する五所川原市の川浪由男さんは「昔と比べてコメの価格が頼りにならなくなった」と環境の変化を指摘する。
 川浪さんの主要作付けは水稲15ヘクタール(青天の霹靂(へきれき)とまっしぐら)と麦3ヘクタールで、農業経営の基盤はコメ作り。だが米価の低迷を受け、5年前から娘の真澄さんと育苗ハウスでのシャインマスカット栽培を続けている。
 水稲農家にとっての利点は、商品価値の高さと参入のしやすさ。シャインマスカット栽培は、水稲の育苗ハウスの上部を活用した「アーチ型栽培」を導入し、労働力に余裕がある水稲の農閑期に諸作業を進めることで水稲との両立が可能。
 商品として出荷できる果実が実るまでに早くても3年ほどかかるが、無理のない範囲で収入増につなげられるため、西北地域県民局は同地域での産地化を推進している。
 当初は「家庭の楽しみや娘の新規就農につながれば」(川浪さん)と始めたが、今では5棟の育苗ハウスで計50本の木を育てるなど規模を拡大。将来的な目標は年間100万円程度の副収入につなげることで、コメの出来不出来に頼らない農業経営を目指している。
 川浪さんは「コメ作りは農業用機械など初期投資が掛かる。これからの農業を盛り上げるためには、若い人が魅力を感じる仕事にならなければならないのでは」と話す。

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革新で未来につなぐ=7・完

2018/7/21 土曜日

 

ICT(情報通信技術)を活用し、リンゴ作りの労働生産性向上を図る森山さん。左にあるのが「ツリータグ」

 「リンゴを作るのにどれだけの労力を掛け、どれだけ稼げているかが一番の疑問だった」。剪定(せんてい)に始まり、摘果、摘葉、玉回し、収穫―と、多くの人手と時間を要するリンゴ栽培に独自のクラウド型生産管理システム「ADAM(アダム)」を導入する、もりやま園(弘前市)の森山聡彦代表取締役(46)。ICT(情報通信技術)の活用で作業工程を「見える化」し、労働生産性の向上を図っている。
 もりやま園は弘前の地で100年以上続くリンゴ農家。2015年2月に家族経営から法人化した現在約10ヘクタールの園地で20品種以上のリンゴを栽培する。
 もりやま園ではリンゴの木1本1本に「QRコード」の付いた「ツリータグ」をぶら下げている。専用のアプリが入った携帯端末でQRコードを読み取ると、いつ、だれが、どのような作業を、どのくらいの時間を掛けて行ったのか記録できるシステムだ。
 森山さんがこのアダムを開発、導入した理由は、リンゴ栽培に「PDCA」サイクルの経営管理手法を取り入るため。16年からアダムを本格運用するようになり、さまざまなことが明らかになった。
 同年の総作業時間は1万2319時間にも上り、アダムで集めたデータを基に「利益を生まない作業をカットした」。摘葉、玉回しなどの着色管理を中心に作業時間を削り、17年には5495時間にまで短縮した。加工用を中心に生産しているため、着色管理は「味を良くする作業ではない。見た目の問題」と割り切った。
 森山さんがアダムの開発に乗り出した08年、津軽地方は降ひょう被害に見舞われた。この年は傷が付いた多くのリンゴが加工用に回り、加工業者も予想以上の入庫量に受け入れを制限する事態に。買い取り価格は大暴落した。
 「自然災害はコントロールできないが、経営や栽培の仕方によりリスクを背負わなくて済む経営の仕組みを作らないとだめだ」。森山さんは痛感した。
 秋の収穫時のみ収入を得ていた仕組みを転換する必要がある。そこで目を付けたのは、実すぐりで樹上から落とした未熟果「摘果果(てきかか)」だ。
 摘果作業で毎年、大量の未熟果が利用されることなく捨てられる。加えて16年は摘果作業に約3000時間もの膨大な時間を費やしていた。「捨てることに手間を掛けるのをやめないといけない。何か価値を生み出さないとならない」。
 農薬の散布基準を見直すなどの試行錯誤を重ね、今年2月に摘果果を原料とする「テキカカシードル」を発売した。また、剪定した枝をチップ化して作った菌床を利用して、キクラゲの生産にも取り組んでいる。
 少子高齢化に伴う労働人口の減少により、各産業間で人材の奪い合いは激しさを増している。森山さんはこの流れの中で、労働生産性が低い産業はいずれ淘汰(とうた)される―と考える。家族経営の場合、収入が時給換算で最低賃金にも満たないリンゴ生産者も多いという。
 ICTの活用や未利用資源を使った商品開発に活路を見いだそうと奮闘する森山さんは言う。
 リンゴづくりや農業が生き残っていくためには「まずは生産者の精神構造を変えていかないといけない」。変化を恐れず、絶えず挑戦することで農業を労力に見合った対価が得られる仕事に転換していく必要性を訴える。

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