’18弘前市長選 検証葛西市政

 

2018/3/19 月曜日

 

2月に開かれた弘前市地域包括ケア検討委員会で、望ましい中核病院の在り方を諮問した葛西市長(中央奥)

 「中核病院の問題に道筋をつけず、市長職を終えることはできない」。昨年12月、葛西憲之市長が3期目を目指す理由の一つとして強調したのが、中核病院問題だ。
 津軽圏域8市町村の医療を支える中核病院構想については県が2016年10月、市立病院と国立病院機構弘前病院を統合し、機構が運営主体になる案を提示した。
 これを踏まえ、関係機関が事務レベルの事前協議をしていたが、話し合いは難航。市立病院職員の全員雇用といった市側の要望などを含めて膠着(こうちゃく)状態に陥る中、葛西市長が打ち出したのは医療資源の集約に加え、中核病院を地域包括ケアの拠点とする構想だ。さらに市が運営主体となることが「最善」との考えを表明。関係機関からは「今までの話し合いは何だったのか」と困惑する声が上がった。
 葛西市長が中核病院構想で繰り返すフレーズが、「2025年問題」だ。団塊の世代が75歳以上となる超高齢化社会を見据え、健康寿命延伸や要介護者サポートといった地域包括ケアシステムを構築する必要性を指摘し、中核病院と一体とみなして検討している。
 市は地域包括ケアに関する調査を東京の企業に委託。一部不開示の報告書では、中核病院の病床(440~450床)の半数近くを症状の軽い軽症急性期、回復期、地域包括ケアに充てることが提案された。市内医療関係者は「仮に実行するとなれば、経営的にかなりの赤字が生じるやり方」と懸念する。
 さらに機構が運営主体となった場合、数百億円規模とみられる中核病院整備費の大半を、機構が担うとみられていた。
 市が運営主体となった場合、巨額の整備費をどのように捻出するのか。また、市立病院職員の全員雇用を求めた市側が、逆に機構側の職員全員を雇用できるのかなど、市にどの程度の負担がのし掛かるかは、不透明なままだ。
 市が新たな中核病院構想を打ち出して以降、懸念されているのが関係機関や周辺市町村からの孤立だ。
 昨年11月21日、県、機構、弘前大学医学部附属病院、市は非公開で4者会談を開催。青山祐治副知事も出席した会議で葛西市長は、市が中核病院の運営主体を目指す考えを伝えたとされる。
 会談について市は「他の出席者から特に意見は出なかった」とするが、出席者からは「葛西市長が一方的に意見を述べるだけで、話し合いにならなかった」との声が上がった。
 さらには医師不足の中、県内に医師を派遣する弘大医学部附属病院との関係性も懸念される。市立病院の外科常勤医師は、16年4月の6人から現在2人に減少し、これに伴って経営は悪化。附属病院側は医師不足の影響として理解を求めているが、「医療現場の声を聞かない葛西市長が、協力を得られなくなっているのでは」とみる関係者も少なくない。
 また2月に黒石市で開かれた津軽南市町村連絡協議会では出席した首長から、「中核病院再編に加わる余地がない」「県の構想を待ち、話し合いが進むと思ったところで地域包括ケアシステムの話。理解できない」といった声が相次ぐなど、構想をめぐって周辺市町村と距離が生まれている状況にある。
 2月に開かれた、中核病院の在り方を協議する弘前市地域包括ケア検討委員会で、弘大医学部附属病院長の福田眞作委員は「2次救急は綱渡り状態。地域の抱える課題をまず解決してほしい」とし、中核病院と地域包括ケアを切り離して検討するよう訴えた。
 市内の2次救急輪番に関わる医師は「夜は休めず、翌日から通常勤務に入ることは日常茶飯事。非番の日も待機し、いつでも病院に駆け付ける」と医師不足の現状を語り、「それでも医師たちが現場に踏みとどまっているのは、津軽の医療のため」と話す。「いつになるか分からない中核病院の完成まで、われわれがどれだけ持ちこたえられるか。そこまで考えて、取り組みを急いでほしい」

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仕事力の向上=5・完

2018/3/20 火曜日

 

自身が率先して動く葛西市長(右から2人目)とともに向上してきたとされる市役所の「仕事力」。一方で、職員の疲労の蓄積も懸念される

 「市役所職員が自ら考え、行動するようになり、仕事力が高まった」。葛西憲之市長が市役所の職員について語る際、よく用いるフレーズが「市役所の仕事力」だ。
 市民サービス向上のため、職員と対話を重ねて市役所の窓口改革を実現。2012年に楢木、鬼沢地区で発生した竜巻被害では、迅速に対応する葛西市長に呼応する形で、直ちに50人超の職員が現地入りし、後片付けを実施した。市役所の仕事力向上の一例として、葛西市長が紹介するエピソードだ。
 また「外部からの人材登用や若手職員の登用を積極的に進め、市のプロパー(生え抜き)職員も啓発を受け、今では市役所の仕事力は全国的に見ても高いレベルになった」と胸を張る。
 葛西市政では国、県、民間といった外部から登用した部長級職員が他自治体より目立つ傾向にある。18年3月現在、部長級30人のうち外部登用は6人で、国の補助事業や民間のネットワークを活用した取り組みなどに貢献している。
 ある職員は「市役所の考え方と、外部から来た人の考え方は異なるので、一緒に仕事をすることで刺激を受けるし勉強にもなる」と評価。一方、葛西市政を見てきた議員は「外部登用は悪くないが、プロパー職員を萎縮させた部分は、ゼロではない」と指摘する。
 葛西市政では、優秀な人材は若手も抜てきされる傾向にある。市OBは、職員を昇格させる過程の変化に対し、「良い面はあるが、長い目で見れば本人のためにならないこともある」と懸念する。
 「例えば職員が議会への答弁の仕方を学ぶのは課長補佐、課長時代。常任委員会などで議員とのやりとりをしっかり経験した上で部長級となり、本会議で予期せぬ質問にも答弁できるよう鍛えるのが、市役所の昔ながらのやり方」。経験が浅ければ、幹部職でありながら市長に意見を具申しにくい面もある。
 ある幹部職員は「かつては課長、部長に委ねられていた権限が、今は全くない。今の部長級は当時の課長ほどの権限もなく、自分の判断で対応することが少ない分、職員個々の力は衰えている」と、トップダウン方式に伴う“仕事力の低下”を指摘。「上ばかり見て仕事をする職員が増えた」と市役所内部の気風の変化を憂える。
 また、発想を生かした新しい事業への取り組みが多い葛西市政では、職員の時間外労働が慢性化。市長選に向け、市職員労働組合連合会が前市観光振興部長桜田宏氏の推薦を決めた理由は、職場環境の改善だった。
 「職員が市長や議員のために働くのは、そもそも市民のため。目先の仕事に追われるだけでなく、市民のために試行錯誤する余裕とジョブトレーニングの場を、もっと若手職員に与えてやってほしい」(市OB)。
 今月14日、蛯名正樹副市長が「自分の役割は終わった」として31日付の辞任を明らかにした。12年4月に農林部長から抜てきされたプロパー職員で、16年4月に再任。同月から元県職員で、経営戦略部長兼ひろさき未来戦略研究センター所長から抜てきされた、山本昇副市長と2人体制で葛西市政を支えてきた。
 このころから市政運営をめぐって徐々に、葛西市長と微妙な温度差が生じたと指摘する声もあるが、実直な仕事ぶりで葛西市長を支え続けてきた蛯名副市長の突然の辞任は、関係者から驚きを持って受け止められた。
 ある職員は蛯名副市長について「実務に優れて頼れるだけでなく、市役所内部での緩衝材としての役割を果たしていた」と明かし、別の関係者は「職員にとって、彼の役割はまだまだ必要だった」と惜しむ。
 「スピード感を誇る葛西市政だが、独走状態になっていないか」といった声もあり、市役所内部に“金属疲労”が起きていないか、立ち止まる必要性も指摘されている。

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