自身が率先して動く葛西市長(右から2人目)とともに向上してきたとされる市役所の「仕事力」。一方で、職員の疲労の蓄積も懸念される

 「市役所職員が自ら考え、行動するようになり、仕事力が高まった」。葛西憲之市長が市役所の職員について語る際、よく用いるフレーズが「市役所の仕事力」だ。
 市民サービス向上のため、職員と対話を重ねて市役所の窓口改革を実現。2012年に楢木、鬼沢地区で発生した竜巻被害では、迅速に対応する葛西市長に呼応する形で、直ちに50人超の職員が現地入りし、後片付けを実施した。市役所の仕事力向上の一例として、葛西市長が紹介するエピソードだ。
 また「外部からの人材登用や若手職員の登用を積極的に進め、市のプロパー(生え抜き)職員も啓発を受け、今では市役所の仕事力は全国的に見ても高いレベルになった」と胸を張る。
 葛西市政では国、県、民間といった外部から登用した部長級職員が他自治体より目立つ傾向にある。18年3月現在、部長級30人のうち外部登用は6人で、国の補助事業や民間のネットワークを活用した取り組みなどに貢献している。
 ある職員は「市役所の考え方と、外部から来た人の考え方は異なるので、一緒に仕事をすることで刺激を受けるし勉強にもなる」と評価。一方、葛西市政を見てきた議員は「外部登用は悪くないが、プロパー職員を萎縮させた部分は、ゼロではない」と指摘する。
 葛西市政では、優秀な人材は若手も抜てきされる傾向にある。市OBは、職員を昇格させる過程の変化に対し、「良い面はあるが、長い目で見れば本人のためにならないこともある」と懸念する。
 「例えば職員が議会への答弁の仕方を学ぶのは課長補佐、課長時代。常任委員会などで議員とのやりとりをしっかり経験した上で部長級となり、本会議で予期せぬ質問にも答弁できるよう鍛えるのが、市役所の昔ながらのやり方」。経験が浅ければ、幹部職でありながら市長に意見を具申しにくい面もある。
 ある幹部職員は「かつては課長、部長に委ねられていた権限が、今は全くない。今の部長級は当時の課長ほどの権限もなく、自分の判断で対応することが少ない分、職員個々の力は衰えている」と、トップダウン方式に伴う“仕事力の低下”を指摘。「上ばかり見て仕事をする職員が増えた」と市役所内部の気風の変化を憂える。
 また、発想を生かした新しい事業への取り組みが多い葛西市政では、職員の時間外労働が慢性化。市長選に向け、市職員労働組合連合会が前市観光振興部長桜田宏氏の推薦を決めた理由は、職場環境の改善だった。
 「職員が市長や議員のために働くのは、そもそも市民のため。目先の仕事に追われるだけでなく、市民のために試行錯誤する余裕とジョブトレーニングの場を、もっと若手職員に与えてやってほしい」(市OB)。
 今月14日、蛯名正樹副市長が「自分の役割は終わった」として31日付の辞任を明らかにした。12年4月に農林部長から抜てきされたプロパー職員で、16年4月に再任。同月から元県職員で、経営戦略部長兼ひろさき未来戦略研究センター所長から抜てきされた、山本昇副市長と2人体制で葛西市政を支えてきた。
 このころから市政運営をめぐって徐々に、葛西市長と微妙な温度差が生じたと指摘する声もあるが、実直な仕事ぶりで葛西市長を支え続けてきた蛯名副市長の突然の辞任は、関係者から驚きを持って受け止められた。
 ある職員は蛯名副市長について「実務に優れて頼れるだけでなく、市役所内部での緩衝材としての役割を果たしていた」と明かし、別の関係者は「職員にとって、彼の役割はまだまだ必要だった」と惜しむ。
 「スピード感を誇る葛西市政だが、独走状態になっていないか」といった声もあり、市役所内部に“金属疲労”が起きていないか、立ち止まる必要性も指摘されている。