’18弘前市長選 検証葛西市政

 

経営型行政=2

2018/3/17 土曜日

 

次期弘前市経営計画策定に向けた庁内会議の様子。葛西市長が掲げる「経営型行政」はPDCAサイクルの循環がカギとなるが、事務作業の増加などが課題に挙がる

 葛西憲之市長の行政運営の根幹にあるのが、「管理型」から「経営型」への転換という考え方だ計画実行、評価、改善を繰り返すPDCAサイクルによるマネジメントシステムの構築市政の“見える化”に取り組み計画に基づいて各種事業施策を展開してきた
 市が行う施策や事業の根拠となるのが、最上位計画の「弘前市経営計画」だ2015年度に設置した庁内シンクタンク「ひろさき未来戦略研究センター」が計画の策定と進行管理を担っており、葛西市長は「しっかりした計画づくりは根拠に基づく必要があり、分析ができるシンクタンクを作ったことは大きい」と意義を強調する
 市経営計画の特徴に毎年度の改定が挙げられる。PDCAサイクルによる進行管理を繰り返すことで、市民ニーズや社会経済の変化などに対応、取り組みの継続的改善を図ることが狙いで、同センターの担当職員は「(最上位計画を)毎年度見直し、議会の議決を得て改定している自治体は他にはほとんどない」と胸を張る。
 改定は予算編成と連動し、各施策の進捗(しんちょく)評価に基づいて実施。施策の進捗評価は、アンケートによる市民評価や担当課の1次評価、同センターによる2次評価、市長評価、総合計画審議会の意見などを踏まえて行われ、施策間の政策資源(人員、財源)配分、事務事業群を見直している。
 経営計画のマネジメントシステムは、総務省がPDCAサイクルの質向上に資する参考事例集として取り上げられているが、市民からは「計画の指標を見てもよく分からない」「自己分析だと市に都合の良い評価になるのではないか」という指摘も少なくない。
 また計画を毎年度改定する弊害を指摘する声も。細かい事務事業群まで記載されることから、市OBは「計画の見直しには相当な労力が必要。ペーパーワークだけがどんどん増えているのではないか」と疑問を呈し、「事務作業に忙殺されるようになると、実際の事業実施に割くマンパワーが不足していく」と懸念した。
 葛西市長が次々と手掛ける事業は地方創生の先進モデルと言われることも多い。市役所の窓口改革や市民参加型1%システムなど、さまざまな分野で従来にない取り組みに挑戦。温泉熱や地下水を活用した融雪、地熱資源開発調査など社会実験的な事業が多いことも「経営型」の特徴と言える。
 「トライアル&エラー」で解決策を探っていく行政手法を批判する声もあるが、市の行政評価に携わった経験がある男性は「失敗することが悪いわけではない」とする。その上で「原因はマンパワーなのか、能力なのか、組織体制なのか分からないが、職員が市長の描くビジョンに追い付いていない気がする」との見方を示し、「経営型を掲げるなら1年間に2、3回はPDCAサイクルを回すイメージで取り組まないと事業成果は上がらない」と話した。
 弘前大学人文社会科学部の児山正史准教授(行政学)は「計画の進行管理、施策評価という点では1期目より見えにくい」と指摘。理由として「検証作業は職員の負担が大きく、最低限のことしかできないのではないか」と推察し、「効果が上がっていない施策について原因、改善方法などを徹底的に検証するなど、絞り込む必要があるのではないか」との見方を示した。

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観光政策=3

2018/3/18 日曜日

 

2016年1月に始まったシティプロモーション戦略「弘前デザインウィーク」。市民の認知度、参加意識という点では疑問の声も多い

 葛西憲之市長の先進的なアイデアは観光政策にも表れている。最も注目を集めたのは、弘前城本丸石垣修理事業に伴う弘前城天守曳屋(ひきや)だろう。2015年9月20~27日の曳屋体験イベント「曳屋ウイーク」では、一般参加者が天守に付けた綱を引っ張ることで天守を動かすという、これまでにない取り組みで大きな話題を呼んだ。
 当初、観光面でマイナスと見られていた弘前公園内での公共工事を公開型にすることで「観光資源」に転換。17年度から本格的に始まった石垣解体作業でも節目ごとに一般市民らを対象にした体験型イベントを開催しており、観光関係者は「曳屋は市民が一体となって盛り上がった。石垣解体は10年近く続く世紀の大事業。観光資源に変えた功績は大きい」と評価する。
 一方、葛西市政の観光政策について「打ち上げ花火的。一過性のイベントが目立つ」という批判も少なくない。その例として必ず挙げられるのが、15年度に始動したシティプロモーションの新戦略「弘前デザインウィーク(HDW)」だ。
 HDWは「市民一人ひとりが弘前の価値を築き上げるクリエーターとして参画する市民運動」という位置付けで、桜やリンゴをテーマとした商品や観光コンテンツの開発、伝統工芸のブランド再構築など各種事業を展開。国の地方創生に関する交付金などを活用し、毎年度8000万円以上の予算が計上されている。
 観光コンテンツ事業では、ダンスや音楽のイベントを開催。17年度はリンゴ約3万個を使った巨大モザイク画「リンゴアート」や、クリスマスフードや雑貨を扱う店が集まり、イルミネーションやオーロラ投影で会場を彩る「弘前フィンランドクリスマスマーケット」も行われた。
 有名人を招いたイベントも多く、「にぎわい創出に一役買っている」と評価する声が聞かれる一方、「デザインウィークそのものは市民に浸透していない」という批判も根強い。HDWの業務委託先は東京デザインウィークが多く、イベントに携わった30代男性は「地元の視点が欠けており、市民参加型になっていない」と話した。
 弘前市のたびすけ合同会社西谷の西谷雷佐代表はHDWについて「東京の感性やノウハウを学び、吸収することも必要だが、丸投げでは意味がない」とし、「予算が打ち切られた時に何が残っているか。地域主導で取り組むべきで、もっと工夫しなければならない」と指摘した。
 観光の取り組みを地域経済の活性化につなげることも大きな課題だ。17年の弘前市内の宿泊者総数は62万7269人(速報値)で、1990年の統計開始以降で過去最高を記録。しかし、中心商店街の小売業者らは「売り上げは増えておらず、恩恵を感じない」「地元にお金が落ちていない」と声を落とす。
 宿泊者数を押し上げた主な要因は外国人宿泊者数で、3万8132人(同)と前年実績の約3倍にも達したが、ある観光関係者は「インバウンドが増えたと言っても観光客全体の数%。インバウンドへの期待は大きいが、国内客の需要ももっと取り込まなければならない」と話した。
 西谷代表は観光政策の課題について「マーケティング。観光客が何を求めているか、何にお金を使いたいかを徹底的に分析しなければならない」と指摘。「弘前は桜やリンゴを中心に観光コンテンツが豊富だが、まだ素材の良さに頼っているだけ」とし、コンテンツ(素材)をプロダクト(商品)に磨き上げる必要性を強調した。

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