山里を彩る (長尾キヨ)

 

スカンクキャベツ「ザゼンソウ」=26

2008/3/24 月曜日

 

 雪解けのころ、白神山地や岩木山麓(さんろく)の湿地などで普通に見られる。
 ミズバショウは白、ザゼンソウは暗紫褐色の仏炎苞(ぶつえんほう)をつけている。仏炎苞とはミズバショウなどサトイモ科の花を包む大形の葉をいい、花を仏像に見たて、その後ろにある火炎形の光背に見えることから名付けられた。
 和名は仏炎苞に抱かれた花の形が達磨大師が座禅を組んでいるような姿を連想させるため付けられ、俗にダルマソウ(達磨草)といわれる。なんともユーモラスな名前である。
 ミズバショウほどではないが、ザゼンソウも群落を作る。時にはミズバショウとザゼンソウが一緒に生えていることもあり、思わず「やったね」と叫んだりする。緑色のザゼンソウも稀にある。
 ザゼンソウの英語名は「スカンクキャベツ」。これは花の悪臭から名付けられている。北米のものは悪臭があることで有名だが、インデアンが食用に利用していたことがあると聞いてびっくり仰天した。日本産のものはそれほどひどくない。根茎や若芽はブタの餌にされるとのこと。
 ザゼンソウの仲間の一つでヒメザゼンソウもあることを付け加える。

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ヤチブキ「エゾノリュウキンカ」=27

2008/3/31 月曜日

 

 「ヤチブキってなんだかおいしそうだっきゃ」
 「んだよ。山菜だもの」 「えっ、ちょっと待った。リュウキンカってキンポウゲ科でねが。トリカブトだの、ウマノアシガタだの、みんな毒だっきゃ」
 「んだ。したばって例外もあるんず。ニリンソウ(フクベラ)とリュウキンカは食べられるってわけ」
 「へえ、そうなんだ」
 見事なエゾノリュウキンカの群落の前での私と友人のやりとりである。
 エゾノリュウキンカは北海道、東北地方に分布する。山地の日の当たる湿原や流水辺に生育するが、なぜかミズバショウと一緒に生えることが多い。早春、雪解けを待ちかねるようにして花を咲かせる。
 和名は茎が直立し、花が金色であることによる。ひときわ鮮やかな金色は津軽の春をアピールし、まるで雪を解かしているかのように見える。
 若芽「ヤチブキ」は茎や葉の形がフキに似ていることから付けられた。ヤチブキは独特の苦みが特徴で、数ある山菜の中でフキノトウと同じくらい早い時期に食べられるのがいい。葉、茎、花まで食べられ、汁のみ、おひたし、酢みそ和え、佃煮、油炒めなどによい。お勧めはマヨネーズ和え(ポイントは少しからしと醤油を入れること)。中泊町今泉地区では「シオナ」と呼ぶ。

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黄色いビーズ「キブシ」=28

2008/4/7 月曜日

 

 まだ残雪があちこちに見られる早春、小さな春を見つけるため、小泊方面に車を走らせる。高気圧に覆われて青空が広がり、波も穏やかである。
 権現崎遊歩道を歩いていると、見事な黄色いビーズの一団が目についた。大好きなキブシである。どこか雅(が)趣(しゅ)さえ感じさせる独特な姿の黄色い花。舞(まい)妓(こ)さんの髪飾りにしたら、きっとすてきだろうなと出合うたびに思う。
 キブシは高さ2~3メートルになる落葉低木で雌雄異株である。花は葉が開く前、長さ4~10センチの花(か)穂(すい)に多数の鐘形の花をつけ垂れ下がる。雌花より雄花の方が長い。花は半開状に丸まって咲き、独特な姿となる。雌花は雄花よりやや小さく緑色を帯びる。花の後、初め緑色で熟すと黄色を帯びる硬い球形の実をつける。
 豆状の実はタンニンの原料となり、干して粉にし、ヌルデの五倍子(ふし)の代わりに黒色の染料として用いる地方がある。沖縄では歯を染めるのに用いたという。
 和名はその実が五倍子の代用とされたところから、五倍子と区別するため木五倍子と呼ばれるようになった。
 津軽ではズノキシバといって、材を串(くし)や箸(はし)に利用すると現役のマタギに教えられた。

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飾らない美しさ「シュンラン(春蘭)」=29

2008/4/21 月曜日

 

 日本には着生種・地生種・腐(ふ)生(せい)種など野生ランが二百種あるといわれている。
 シュンランはその名前の通り、春を代表する身近なランである。春まだ浅いころ、雑木林の木漏れ日の中に、ひっそりと咲いているシュンランを見つけた時ほどうれしいことはない。
 常緑の葉は濃緑色で光沢があり、大地に深く根を下ろしている。花は透き通るように美しく淡黄緑色で紅を含んだ花弁はすがすがしい。とはいってもシュンランは目立たない色の花だが、やはり「蘭」と呼ばれるにふさわしい気品がある。咲き始めのころは香気がある。学名はシンビジウム。
 シンビジウムというと洋ランを連想すると思う。東京ドームでの「世界のラン展」は恒例のものとなっている。シンビジウム・デンドロビウム・オンシジウム・カトレアなど温室で技術の粋を尽くして育てられた洋ランの豪華絢(けん)爛(らん)さは言うまでもないが、野生ランの楚(そ)々(そ)とした飾らない美しさはまた格別のものがある。
シュンランの別名はホクロ。これは唇(しん)弁(べん)にある赤紫色の斑点を顔のホクロに例えたというのがおもしろい。
 塩漬けしたシュンランの花を、吸い物の実にしたり、桜湯と同じく蘭茶として祝いの席で使う。てんぷらや酢の物にしてもよい。
 シュンランは寒さに強く丈夫な花であるのもお気に入り。春の野山でシュンランに会えるといいね。

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白神山地の至宝「トガクシソウ(戸隠草)」=30

2008/4/28 月曜日

 

トガクシソウ

 「一名をトガクシショウマ(戸隠升麻)ともいい、青森県から長野県の北部まで、主として日本 海側の多雪地帯で主にブナ林の下に見られる珍草である。深い雪がこの植物を太古から保護してきたものであろう。分類学上からいっても一属一種の珍種で、しかも日本の特産である」と、植物学の大家本田正次が述べている。
 昭和44年、白神山地で私は初めてトガクシソウと出合った。透けるような淡紫紅色の美しい花で、一度見たら忘れることができない。
 トガクシソウは高さ30~50 センチくらい。茎の先端に長い柄のある2枚の葉が出る。5月になると、葉の間から長い花茎のある数個の美しい淡紫紅色の花が下向きに開く。がく片は6枚、これが花弁のように見える。本当の花弁はこれよりはるかに小さく6片が鐘形をして集まり、雄しべと雌しべを囲んでいる。
 和名は長野県戸隠で初めて見つかったことによる。
 トガクシソウは絶滅危(き)惧(ぐ)Ⅱ類(重要希少野生生物Bランク)―県内では絶滅の危険が増大している野生生物となっており、生育地の保存と採取しないことが必要である。
 白神山地に入る人は多くなっても、トガクシソウを見る人は少ないだろう。しかし運良く出合ったら、一度はぜひ見ていただきたい珍しい植物である。

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