山里を彩る (長尾キヨ)

 

造形美「ノイバラ」=21

2008/2/18 月曜日

 

 冬にこんな美しいノイバラの実を見たことがあるだろうか。初雪が解けたころ、実に負けじとまるで赤い漆でも塗ったように枝まで紅葉して輝いている。
 「枯れ茨」といって、すっかり葉を落とした姿である。赤い実をつけて四方に伸びた裸枝と鋭い刺との造形美には自然で素朴な風情がある。
 室町時代には、ノイバラの実つきの枝が松とともに正月に生けられたという。これは不老長寿の祝意を表したもので、明治、大正期まで伝えられたという。
 ノイバラは北海道から九州まで分布し、野原、川原、山すそなどに見られるつる性の落葉低木である。最も普通の野生のバラで、初夏にほのかな甘い香りを漂わせて開く純白の花には、豪華な園芸種とは違った清楚な趣がある。
 花が美しく芳香を持つため、古くから愛好され、多数の園芸品種が作り出されている。園芸界のバラはヨーロッパの種類と西アジアまたは東アジアの種類の掛け合わせによる複雑な雑種であるといわれている。
 好天に誘われて散策に出た。ノイバラの赤い実が美しいので一枝いただく。お気に入りの花瓶に生け、楽しむ。実はつややかさを保ちながら新年を迎えた。
 水を換えようと枝を持ち上げたら、なんと1センチほどの白い根が数本生えているではないか。まるでさし木したみたいとうれしくなる。2月、枝に葉が出る。初々しい緑の葉と赤い実のコントラストは見事である。

∆ページの先頭へ

ガラス細工の妖精「ギンリョウソウ」=22

2008/2/25 月曜日

 

 この花と出会ったのは数十年前である。薄暗い山道を歩いていた時、雪と見まがうほど真っ白なかたまりがあった。全体が純白で草なのかキノコなのか見当がつかない不思議な姿にびっくりしたのを覚えている。

 ギンリョウソウは山地のほかの草が育ちにくいような日陰に生える奇妙な形の草で、地上に出ている部分は純白である。根は褐色で、地中にかたまりになる。自分では栄養をとることができなく、腐った落ち葉から養分を取り入れている「腐生植物」なのである。
 草丈8~15センチ。茎は真っ直ぐに立ち、1株から数本ずつ出る。葉は白く、鱗(うろこ)状に何枚も重なって茎についている。夏茎の先に包葉に包まれた花を1個つける。

 和名は花を頭、茎を胴、葉を鱗に見たて、銀色の竜が首を持ち上げた姿になぞらえた。別名の幽霊茸(ゆうれいたけ)は、暗い所に白衣をまとった幽霊のようなキノコを思わせることによる。
 2006年7月、ミニ白神で東京のお客さんをガイドした日、ギンリョウソウが大発生したのに出会う。
 「へえ、これキノコじゃないの。初めて見ました。本当にきれいな花ですね」と喜んでいただいたことが記憶に新しい。
 ミニ白神では歩道でも簡単に見られる。一度、なんとも不思議な純白のガラス細工の妖精であるギンリョウソウに会いに出掛けてみませんか。運が良ければギンリョウソウの仲間錫杖草(しゃくじょうそう)にも会えるかも。

∆ページの先頭へ

湿地が好き「ハンノキ」=23

2008/3/3 月曜日

 

 日本では古くから集落の周辺に生える樹木である。「榛(はり)」と呼ばれて薪炭材に利用されたり、果実や樹皮が染料として用いられるなど生活の中にとけ込んできた。
 日本全国の湿った低地や低山地の河川沿いに普通に生える落葉低木で15~20センチほどになる。

 ハンノキは残雪があちこちに見られる早春の山地で、ひっそりと花を咲かせるのできちんと観察できないのが残念である。花は葉が開く前に咲く。雄花は4~7センチで枝先に下がる。雌花は3~4ミリと小さく、紅紫色でとてもかわいい。春の到来を告げる花として出会いを楽しんでいる。

 平成18年4月、梵珠山での観察会の日、除雪で枝が折れたハンノキが1本見つかった。なんと雄花と雌花が並んでついているではないか。参加者一同でじっくり観察できた次第。
 「初めて見ました。雌花の美しいのに感動しました」。参加者の1人が言っていた。
 私はハンノキの樹形が大好きである。特に早春の姿がいい。昨年の果実が2、3個かたまってついていたりするとご機嫌である。

 関東地方では、田のあぜに稲木として植えられ平野の風物詩だったが、今ではほとんど見られなくなったという。
 今年の早春は是非、ハンノキの花を観察してみませんか。

∆ページの先頭へ

夏に落葉する変わりもの「エゾオニシバリ」=24

2008/3/10 月曜日

 

 名前が面白い。オニシバリの名前の由来は、樹皮が強靱(きょうじん)で手ではなかなか折れないため、鬼をも縛ることができるという意味からである。
 早春、雪解けのころ、鮮やかな黄色の花を葉の付け根につける。この花に出会うと「やあ、今年も元気で美しい花を咲かせてくれたね」とあいさつし、ジンチョウゲ科特有の芳香を楽しむのである。

 エゾオニシバリは高さ1メートル内外の小低木で、雌雄異株なのである。盛夏の1カ月間だけ、1枚も残らず葉を落とすので「夏坊主(なつぼうず)」の別名がある。雌株には初夏、楕円形で約8ミリくらいの赤い液果をつける。落葉のころにも赤い液果が残っているので、初めて見る人は「これはいったい何だ」と驚いてしまうのである。8月末から9月にかけて、新しい葉とともにつぼみが数個ずつ姿を現し、翌春に開花する。

 鬼を縛ることができるほど強靱な樹皮は、和紙の原料になるとのこと。なにか分かるような気がする。

 10年ほど前、十二湖の大崩に登山したとき、心ない人の仕業か、エゾオニシバリが捨てられていた。根こそぎ掘ったものらしい。もちろん花がついている。そこでオニシバリの皮を手で折ってみたが、どうしてどうして、強くて皮がはがれるばかり。そのエゾオニシバリはわが家の庭で毎年花を咲かせている。

 

∆ページの先頭へ

春一番「フクジュソウ」=25

2008/3/17 月曜日

 

 「あのさ、フクジュソウって、野草だの、園芸品だの。どっち?」と友人に聞かれた。
 フクジュソウという花は誰でも知っているが、素性を知っている人は少ない。
 旧暦の正月に開花するので、鉢植えにして正月の床飾りとした習慣が、新暦に替わったのちも残り、年末には鉢植えがたくさん売られる昨今である。
 フクジュソウは寒さに強く、北国では雪解けと同時に花を咲かせる。がく片は紫がかった緑色で数個ある。花弁は多数あり、黄金色で輝いている。春一番に咲く花として喜ばれる。花が終わると、金平糖にそっくりな果実をつける。6月ごろには葉が枯れて休眠する。こうしたフクジュソウの一生をじっくり観察してみるのも面白いかと思う。
 積雪の少ない海岸地帯(岩崎地区・小泊地区)からは3月の声を聞くと、「フクジュソウが咲いた」という便りが届く。
 フクジュソウは園芸目的の乱獲で激減し、危急種(絶滅の危機が増大している種)とされている。近所のスーパーでも3月下旬になると、たった今掘ってきたといわんばかりの鉢植えを売り出す。嘆かわしい。
 日本には現在、フクジュソウ、ミチノクフクジュソウ、キタミフクジュソウの3種が分布している。
 和名は、旧暦の正月ごろ咲くので、新年を祝うめでたい花としてつけられた。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード