山里を彩る (長尾キヨ)

 

世代を交代する木「エゾユズリハ」=16

2008/1/15 火曜日

  新しい葉が開いてから古い葉が落ちるので「譲り葉」といい、「子が成長した後、親が譲る」になぞらえたものである。
 このことから、人の世代交代もかくあるべしということで、めでたい木としてお正月のお飾りに欠かせないものとなっている。津軽でもしめ縄や鏡餅の飾りにしたり、門松と一緒にユズリハの枝葉を飾り付けている。
 エゾユズリハはユズリハの変種で、北海道から本州中部以北の日本海側の雪の多い山地に多く生える小型の低木である。津軽の山で普通に見られ、お正月になると脚光を浴びる。新旧交代の明瞭さが気分を新たにさせてくれる常緑の葉は別に青木、正月の木、ユズリッパなどとも呼ばれる。
 エゾユズリハは雌雄異株。高さ1~3メートルで、葉柄は赤く美しい。「ユズリハにも花が咲くの?」と驚く人が多いが、初夏に黄緑色であまり目立たない花がつく。秋、雌株には楕円形で長さ1センチくらいの黒味がかった藍色の果実がつく。しかし、果実のついたユズリハになかなか会えない。なぜだろう?
 子供のころはユズリハに毒があると教えられていたので、若葉はゆでると食用になると知ったときは驚きだった。

 

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染料そして薬用「ムラサキ」=17

2008/1/21 月曜日

 私の手元に大切にしている古い植物の標本がある。台紙も、はさんだ紙も鮮やかな紫色に染まっている。そう、ムラサキの標本なのである。
 40年ほど前に鯵ケ沢町の山で採集したものである。鯵ケ沢町立深谷小学校に勤務していたときであり、私が植物に興味関心を持つきっかけになった場所である。
 ムラサキという名前は、根が紫色の染料になることによる。根にはシニコンという紫色の色素が含まれ、万葉の昔から重要な染料として賞用され親しまれてきた。ムラサキの根を使った染では、紫根染めと呼ばれる草木染めがあり、江戸紫、南部紫の名も昔から有名である。
 ムラサキの根、つまり紫根は薬用としても知られる。紫根は10月ごろ、根を掘り取ってそのまま日干しにし土を払い落としたもの。江戸時代の医者、華岡青州の発明した「紫雲膏」はやけど、切り傷、湿疹などの妙薬という。
 名前がムラサキだから花も紫だろうと思っている人が多く、実際に花を見て驚く人も少なくない。ムラサキの紫たるゆえんは花ではなく、その根にある。
 ムラサキは草丈50~70センチ。夏に茎や枝の先に、あまり目立たないが、白い小さな花が咲く。
 日本では開発や長年の採集により、自生地は減少しほとんど見られなくなり、危急種とされる。

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毛あり刺あり「ケヤマウコギ」=18

2008/1/28 月曜日

 

   ここは五所川原市毘沙門地区の雪原。刺(とげ)のある低木のてっぺんに黒いかたまりが目立つ。近づいてみたらケヤマウコギ(別名オニウコギ)の実である。
 ケヤマウコギはヤマウコギに似て毛深い。高さ2~3メートルの落葉の低木。幹は真っ直ぐで枝分かれし、節には3~7ミリの太い刺がある。若い枝には密に毛があるのが特徴である。葉はヤツデに似て5枚の小葉からなり、葉柄は長く3~10センチある。
 北海道、本州、四国、九州の山地の林内に生える。秋、枝先にこんもりとかたまった小さな白い花をびっしりつける。
 ケヤマウコギの黒い実を見て思い出したことがある。以前、中泊町大沢内に住んだことがあり、隣のUさんの家の生け垣がウコギだった。秋になると、黒光りする実がきちんと同じ高さに並ぶさまは見事だった。
 ずいぶん後になって分かったことだが、ウコギは山村などで生け垣として植えられるとのことで、若葉は食用になるし、根を干したものが「五加皮」で強壮薬になるという。中国原産と考えられる落葉低木で、元々は薬用植物として来たらしい。ヒメウコギとも呼ばれる。
 ウコギは本来「五加木」と書く。「五加」の中国発音「ウコ」と「木」の日本読みの合わさったものである。古名はムコギ。

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ユニークな名前「ナナカマド」=19

2008/2/4 月曜日

 厳冬期。雪をかぶりながらも凛(りん)とした果実に会うと感動してしまう。濃い赤と白のコントラストがとても美しい。
 ナナカマド。とてもユニークな名前である。名前の由来にいくつかの説があり、「7回竈に入れても燃え尽きない」というのが一般的である。炭に焼くには7日間ほど竈でじっくり炭化させると、ナナカマドを原木とした極上品の堅炭ができることから、「7日竈からナナカマドになった」とする説が有力である。
 ナナカマドは高さ7~10メートル位になり、北海道から九州まで分布する。若葉や紅葉が美しいため、北海道や東北地方では街路樹に用いるのでよく知られている。特に北海道の街路樹として欠かせぬ木なのである。
 北海道で庭に植えられるようになったのは昭和7、8年ごろからで、高山植物採集が趣味の当時の北海道庁長官、佐上信一氏がこの木を「植えなさい、植えなさい」と大いに勧めたからだという。
 ナナカマドの実は径6ミリほどで、小鳥が好む。ヨーロッパにはヨーロッパナナカマド、アメリカにはアメリカナナカマドが分布し、赤く熟した実はジャムや酒として古くから利用されている。
 日本のものは苦くてジャムにはむかないので、私は果実酒を造ってみた。これがなかなかいい。琥珀色で、バラ科特有の甘い香がする。飲み心地もいい。小鳥さんには悪いが「ナナカマド酒」に挑戦してみませんか。

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変身「冬芽」=20

2008/2/11 月曜日

 春に萌え出る花や葉の芽は、前年の秋にはすでにできており、そのまま冬を越す。これが「冬芽」である。
 植物にとっても、雪や北風の中でさらされる冬は一番厳しい季節である。厳しい寒さと乾燥に耐えなければならない冬芽は、さまざまな工夫で芽を保護している。
 例えば、サクラは鱗片という魚のうろこのようなもので外側を幾重にも包んでいる。トチノキは鱗片で包まれているが、さらに油のようなねばねばした液で保護するようになっている。コブシは厚くてしなやかな毛がびっしりついている。
 葉に先立って花を開くマンサク、コブシ、サクラなどは花芽と葉芽が別々にできる。花芽は大きく丸っこいので、注意して見ると外側からでも見分けられる。
 さて、写真はいったい「だれ」かな?
 褐色の毛で覆われ2本の角がはえている動物の顔にも見える。津軽の山地ではどこでも見られる落葉性の低木オオカメノキ(大亀木)の冬芽である。林内の雪が消えるころ、オオカメノキの白い花が咲く。葉は大きく水平に広がる。「変身」である。丸くて顔に見えたのが花芽、2本の角は葉芽である。大きな亀の甲羅を思わせる葉がついていることからオオカメノキと名付けられた。
 防寒対策がきちんとしていれば、冬ならではの観察ができる。冬芽の観察は花や葉、実の観察とはまた違う楽しさがある。

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