山里を彩る (長尾キヨ)

 

山の宝石ルビー「ツルリンドウ」=11

2008/1/15 火曜日

  秋は実りの季節。猛暑、水不足、害虫発生などとたたかいながら、山里でもたくさんの実りを見た。ガマズミ、ムラサキシキブ、トチ、クサギ、ドングリ、ツリバナ、アクシバ、コマユミなどなど。私はこれらを敬愛の念をもって「山の宝石」と呼んでいる。
 初雪が降った翌日、山の宝石ルビーに会いに行った。
 いつもの所に、いつものように大きなルビーが輝いていた。いったい何カラットあるだろう。ルビーとはツルリンドウの実のことである。赤紫色の実がとても美しい。日本のリンドウの仲間で唯一、実をつける。
 秋の代表的な野草リンドウとは一味違う。同じ仲間だが、名前通り、茎がツル性で地面をはったり、草木にからみついたりして伸びる。花は8~11月に咲き、葉のわきに1個から数個つく。淡紫から青紫色のラッパ状で、先端に向かって広がる。色も姿も優しい感じで、実のように迫力はない。
 ツルリンドウというと、花より実を連想する人が多いのではないだろうか。
 ツルリンドウは低地から山地の落葉樹林に生えるほか、二次林などにも見られ、日本全土に分布する。
 お勧めのポイントは狼野長根自然公園、ミニ白神、梵珠山などで、歩道でも容易に見られるので足を運んでほしい。
  

 

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鳥の巣「ホザキノヤドリギ」=12

  冬休み、同僚たちと安比スキー場に行った。ゴンドラで移動しているとき、一人が「あれ、何の鳥の巣なの」。指差した方を見ると、すっかり落葉したシラカバに鳥の巣状のかたまりがあった。
 「あれはヤドリギという木なんだよ」
 「へえ、あれで木なの? びっくりした」
 ヤドリギはミズナラ、クリ、シラカバなどの落葉樹の樹上に寄生し、寄生根から養分や水分を吸い取るとともに自らも光合成を行う変わった常緑の木。そんなに珍しいものではなく気をつけてみるとあちこちで見られる。
 そのころ気になっていたのが、ホザキノヤドリギである。草仲間に情報をお願いしていた昭和63年冬のこと。
 「ホザキノヤドリギを見つけた。案内するよ」と、五所川原市飯詰在住のNさんから電話があった。Nさんの愛車に同乗し飯詰地区天池のほとりに着いた。立派なミズナラに寄生しているホザキノヤドリギ。つややかな黄色の実のあでやかさに感動してしまった。
 ホザキノヤドリギは高い樹上にあり、望遠レンズを持っていなかったため、その日は撮影を断念。後日、再びNさんから「若者が樹上からホザキノヤドリギを切ってくれた。今、家の庭に飾っている」と電話があった。飛んで行ったのは言うまでもない。これがそのときの写真である。

 

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津軽の正月に欠かせない「ツルシキミ」=13

  通称「深山千両」と呼ばれ、秋から冬にかけて花材とする。彩りの少ない冬の花材として貴重な存在なのである。
 津軽ではお正月の飾りにするため、暮れになると松と一緒に束ねられ店頭に並ぶのでおなじみかと思う。美しい実ではあるが、有毒なため「悪しき実」と呼ばれたものが変化して「シキミ」になったと言われる。
 梵珠山ではいたるところで見られる。ブナ林の特徴となる植物で、常緑の低木である。ヒメモチ、ハイイヌツゲ、ハイイヌガなどと混じって生える。
 これらは元々、南方の照葉樹林にあった植物だが、雪の中での生活に体を慣らして進出してきた仲間なのである。
 北海道から九州の山地に分布し、高さは50センチ内外。葉は柔らかな革質でつやがあり、裏には多数の油点(ミカン科の特徴)がある。
 4~5月ごろ、白い小さな花を枝先に多数つけ、とてもいい香がする。雌雄異株。雌株は花の後に丸い実を結び、晩秋になると真っ赤に熟してとても美しい。
 さて、皆さん。雌雄異株についてどれぐらい知っているかな。ヒント。代表選手はイチョウ、サンショウ。「我が家のサンショウ、かなり大きくなっているのに実がつかない」とぼやく人。もしかしたら、それって雄株かも。早くかわいいお嫁さん(雌株)をもらいなさい。

 

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神様のいたずら「オクトリカブト」=14

  毒草としてトリカブトほど知られているものは他にない。植物界最強といわれる猛毒だ。
 アイヌの人たちが熊狩りに使った矢毒がトリカブトであり、古代ローマでは狼狩りに、中国では戦争に使ったとのこと。
 狂言「附子(ぶす)」では、砂糖を附子といって見張りさせるくだりがある。トリカブトの根を干したものが附子である。
 瑠璃色(紫ががかった紺色)の烏帽子と呼ばれるトリカブト。晩秋に茎の上に10~30個くらいの瑠璃色をした美しい花をつける。花の形が、舞楽のとき伶人(楽士)がかぶる兜に似ているところからこの名がある。
 9月16日。私が所属している「ミニ白神ガイド倶楽部」のSさんの結婚披露宴があった。その席で倶楽部会長のYさんから耳よりの情報を得た。
 「おいの山さ、白いトリカブト咲いでらど。見たがったら草刈りする前に来てみねが」
 ファックスが送られてきた。白いトリカブトのありかが克明に書き込まれたものである。
 早速、出掛けた。地図の通りですぐに見つけることができた。
 純白のトリカブトに息をのんだ。神々しいばかりである。しかもたった一株だけ。まさしく、神様のいたずらとしか思えなかった。

 

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よくぞ名付けた「タコノアシ」=15

  「ベンケイソウ科の多年草であり、他のベンケイソウのように葉は肉質ではない。花序の分枝に花が吸盤のようにならび、タコの足を連想させるところから名付けられた。暖地系植物であり、従来は分布が関東以西のみ知られていたが、近年になって山形県、岩手県、青森県にも産地が知られ、北限が北上した。本県では日本海側で1969年(昭44)西郡深浦町追良瀬川下流川原で長尾キヨ、1970年井上守が北郡中里町の岩木川下流近くで発見し、北限の記録としている」
  (青森県百科事典p547より)
 上記にあるように、昭和44年9月7日、津軽植物の会の観察会の折、西郡深浦町(当時)追良瀬川の下流でタコノアシを発見。それが青森県の発見初記録となった。
 その日、午前中の日程を終え昼食をとっている時、見たことのない植物が目の前にあるのを見つけた。参加者全員初めての植物だった。私は植物を学習してまだ日が浅かったので知るよしもない。
 しかし、図鑑めくりが日課だったので「自信はないけどタコノアシという植物じゃないの」と言った。まぐれ当たりではあったが、それが大反響を呼んだのである。
 以来、タコノアシというと長尾、長尾というとタコノアシと言われるようになり、一生の思い出となった植物なのである。
 それにしても、小さな白い花がびっしりついているさまは、タコの足にある吸盤そっくり。タコノアシとはよくぞ名付けたものと、ほとほと感心するのである。

 

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