山里を彩る (長尾キヨ)

 

参内傘「ツルボ」=6

2008/1/15 火曜日

 よく晴れた秋の昼下がり、同僚のSさんから「実家の花壇、見にこいへ。母が分からない花あるんだど。教えてやってけ」という連絡があった。
 早速、旧森田村(現つがる市)にある実家へ行くことにした。住宅から少し離れたところに花壇がある。Sさんのお母さんは真に花好きのようで、きちんと整備され、季節ごとに美しい花を咲かせ楽しんでいるとのこと。
 「何年前か忘れたけど、出稼ぎに行った人から分けてもらって、今ちょうど花盛りだのさ」
 淡紅紫色の小さな花がたくさん集まった花穂を付けた、それは美しい花である。私は図鑑で見て知ってはいたが、実物に会ったのは初めてである。
 「ツルボというユリの仲間で、花の形が貴族が宮中に参内するときに、従者が差し掛けた傘をたたんだ形に似ているため参内傘とも言うの」
 お母さんはエプロンのポケットにラベルとサインペンを準備していて、すぐ書き込み、花壇に刺したのである。
 ツルボは山野の日当たりの良い草地に生え群生することも多い。面白いことに葉は春と秋(開花後)の2回地上に現れる。2枚向き合って付き、広線形で、へりは内側に曲がっている。
 ツルボの鱗茎(りんけい)はかつて救荒植物として利用された。外側の枯れた鱗片葉(りんぺんよう)を取って水によくさらして煮て食べたり、粉にして餅を作ったという。

 

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真っ赤なウインナーソーセージ「ツチアケビ」=7

  今年もキノコの季節がやってきた。この時期になると、ツチアケビとの出会いを思い出す。
 友人と自然観察に行ったときのこと。真っ赤なウインナーソーセージが鈴なりになっている枝が、土に刺さっているのではないか。いや、紛れもなく生えていたのである。帰宅して調べてみたところ、ランの仲間であることが分かり、驚いてしまった。
 昭和50年(今泉小学校勤務当時)、市浦村相内(現五所川原市)の牧場付近を散策していたとき、偶然ツチアケビの蕾(つぼみ)を発見。継続して観察できるまたとない機会である。牧場主の許可をいただき、「継続観察中 折らないでください」の小さな看板を立てたのである。
 そのころは、車の免許がなかったので同僚の青年教師の車に同乗し、撮影の協力を得た。おかげで貴重なツチアケビの写真が手元に残っているのである。その翌年、私も運転免許を取得した。
 ツチアケビは山地の林内にまれに生育して菌類のナラタケと共生している。高さ30―50センチ。一見して分かるように葉緑素がなく、全体が黄褐色でところどころに鱗片(りんぺん)があるだけで、葉らしいものはない。6月ごろ、光合成で稼ぐ時期がないまま花を咲かせているのである。黄褐色の花をたくさん付ける。
 秋になると、真っ赤に熟したその形がアケビのように見えるので、土から生えたアケビという名前が付いたが、アケビのように熟しても裂けることはない。

 

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アザミ?ゴボウ?「オヤマボクチ」=8

  日曜日。抜けるような青空。折しも紅葉シーズン真っただ中である。混雑する観光名所を避け、私のお気に入りの紅葉スポットへ出掛けることにする。
 五所川原市の味噌ケ沢地区にある萢の沢溜池周辺は予想以上に美しかった。その日に会ったのがオヤマボクチである。
 草丈1メートル以上もある堂々とした姿。暗紫紅色の大きな花(径4~5センチ)をやや下向きに付ける。「私は背が高すぎて恥ずかしいの」と、背を丸めて照れている少女のような美花である。
 茎は直立していて紫がかって太い。クモの糸状の細い白い毛が生えている。葉は三角状の卵形で、20~30センチと大きく、裏には白い綿毛が密生し、ゴボウの葉によく似ている。日本固有種ということで注目に値する。
 和名はヤマボクチと同じ仲間で、豪壮なことによる。ホクチは葉の裏の白い綿毛を火口(火打ち石で打ち出した火を移すもの)に利用したことによる。
 新潟県ではヤマゴボウ、富山県の山間部ではウラジロ、津軽ではヤマゴンボと呼ばれ、若い葉を草餅の材料にする。粘りがあってヨモギよりも良いという。根や若い茎も食べられる。
 アザミ、ゴボウ、オヤマボクチ。皆、キクの仲間である。

 

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古事記「ガマ」=9

  「ガマといえばカエルを連想する。ガマの穂といえば植物だと分かるよ」と息子が言う。
 古事記には、大国主命に助けられたという因幡(現鳥取県東部)の白ウサギの話が出ている。因幡の白ウサギの童謡では「蒲の穂綿にくるまれば、ウサギは元の白ウサギ」と歌われている。
 「この話によってガマという植物の名が広く知られるようになったと考えてもいいくらいである」と、植物学の大家・本田正次は言っている。
 ガマが目立つのは秋である。雄花は既に枯れて軸だけが太い針のように残り、ソーセージにそっくりな雌花の穂だけが残る。これがガマの穂である。晩秋になると熟して長い白い毛が出て、それが風に乗って舞い飛ぶ。これをガマの穂綿といっている。
 本当は傷ついた白ウサギがころがったのは穂綿でなく、ガマの雄花から出る黄色い花粉を集めて敷き散らし、その上をころがったとのこと。
 このガマの花粉のことを穂黄(ほおう)といい、古くから民間薬として火傷、切り傷などの傷薬に血止めとして使われたとのこと。
 これが日本最初の薬用植物と考えていいと、本田正次はいっている。
    

 

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冬枯れの野に彩り「キカラスウリ」=10

  「まっかだな まっかだな カラスウリってまっかだな」。これは「まっかな秋」の歌詞。津軽地方のものは黄色に熟すキカラスウリだから実感がなかったが、横浜市まで旅行した際に電車の中から真っ赤なカラスウリの実を見て歌詞の内容に納得した。
 キカラスウリは日本特有の植物で、山地の林の縁ややぶで他の樹木などに絡みついて生育する。花期は8~9月で、レースを思わせる白い怪しげな花が夕方から咲き、朝にはしぼむ。雌雄異株で花の後、雌株には7~10センチほどの倒卵形の果実がつき、秋遅く黄色に熟す。
 葉の枯れてしまったつるが、落葉した樹木に絡んで、黄色いつやつやした実を下げているさまは、まさに晩秋から初冬にかけての風物詩である。
 キカラスウリには薬用効果がある。果肉で荒れ止めの化粧水を作る。中泊町の仲間から聞いた話では、ひび割れした手につけるとすべすべになったとのこと。根からとったデンプンは、古くから汗知らずとして用いられてきた「天花粉」である。
 また、煎じて咳止め、解熱、利尿などにも用いられる。果肉は乾燥すると甘くなり食べることができる。実はちょうちんにしたりして子供の遊びにさまざま用いられる。
 日本にはカラスウリ、キカラスウリ、モミジカラスウリ、ケカラスウリ、オオカラスウリなどが生育している。

 

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