山里を彩る (長尾キヨ)

 

効果てきめん「ゲンノショウコ(現証拠)」=46

2008/9/1 月曜日

 

 「じっちゃ、まんだ下痢したんず」
 「わい、大変だ。ゲンノショウコへんつて(煎(せん)じて)けねばまいねな」
 「うん」
 「ゲンノショウコの飲めば、げろっと治るはんでな」
 祖父とわたしの会話である。わたしは幼少のころから、よく下痢をする体質だった。
 和名はこの草を煎じて飲めば、たちまち効果が表れるという事実に基づいて付けられたのである。
 ゲンノショウコは民間薬として誰でも知っている草で、至る所の山野、野道、荒れ地にいくらでも生えている雑草である。
 方言にイシャイラズ、イシャコロシ、イシャタオシ、イシャナカセというものがあるが、これは決して医者を憎んで付けた名ではない。昔から薬草として広く人々に知られ、特に下痢止めに効果があることから、〈この薬草があれば医者はいらない〉、そんな意味でこのような方言が生まれたのである。
 このようにゲンノショウコは重宝な薬草なので、ピクニックなどに行った時に採ってきて活用してみませんか。
 採集適期は「土用の丑(うし)の日」で、この時に採ったものは効き目が強いといわれている。
 ゲンノショウコは茎が50センチほどに伸び、夏から秋にかけて枝先にウメに似た小さな花を咲かせる。花の色は白、淡い紅色、紅紫色と変化し、五枚の花弁に紅色の筋があり、なかなか美しい。
 果実は細長いくちばし状で緑色から熟すと黒褐色となり、5片に裂開しておみこしの屋根のような形になるので、一名ミコシグサともいう。

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試験管洗いのブラシ「サラシナショウマ(晒菜升麻)」=47

2008/9/8 月曜日

 

 秋が深まるころ、梵珠山の登山道の両側に試験管洗いのブラシにそっくりな花が見られる。これがサラシナショウマ、別名ヤサイショウマ(野菜升麻)である。風に揺れる様は実に見事である。
 サラシナショウマは早春、まだ花茎の伸びないころの若葉をゆで、1~2日、小川の清流などでさらしておひたしなどの料理に用いる。サラシナは「晒(さら)す菜」の意味で、葉を水でさらして食べる草からきている。別名のヤサイショウマも同じように野菜として食べるからである。
 ショウマはもともと中国名からきたもので、語源ははっきりしていない。
 サラシナショウマの太くて黒い根茎を「升麻」といい、風邪の解熱やいぼ痔(じ)、切れ痔の「乙(おつ)字(じ)湯(とう)」の漢方処方として配合されている。
 サラシナショウマは山菜であり、薬草でもある。
 北海道から九州まで分布している。山地の草原や林縁、落葉樹林の中などに生える大型の多年草。高さ1.5メートルくらいにもなる。花期は山地では8月、低地では10月。尾のように長い花序に白い小さな花をびっしり付ける。花びらは小形で早く落ちるが、雄しべはたくさんあり目立つので、花びらに代わって昆虫を誘っている。花は下から順に咲くため、花と同時に実が付いていることもある。
 ショウマと呼ばれる植物には、サラシナショウマと同じキンポウゲ科のルイヨウショウマ、ユキノシタ科のトリアシショウマ、バラ科のヤマブキショウマがある。

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凛とした秋草「エゾリンドウ(蝦夷竜胆)」=48

2008/9/16 火曜日

 

 日本人は昔から秋草を愛した。なかでもハギ、ススキ、クズ、ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウは秋の七草として万葉の時代から1000年以上にわたって語り継がれてきたのである。
 高く澄んだ青空の下で、青紫色の花をつけるリンドウの姿は凛(りん)として実に美しい(なぜ秋の七草に入ってないのと思うのは私だけだろうか)。代表的な秋草として、キキョウとともに古くから日本人が好んできた花である。
 リンドウは漢名「竜(りゅう)胆(たん)」の転(てん)訛(か)で、その根を食べると胆汁のような苦味が強く、まるで竜の胆のようだということに由来している。根は漢方では竜(りゅう)胆(たん)と呼ばれ、健胃剤として用いられる。
 リンドウの花は9~10月にかけて咲く。茎(けい)頂(ちょう)や上部の葉(よう)腋(えき)に1個あるいは数個、筒型の花を咲かせる。花は日の当たるときだけ開き、夜間や曇天には閉じる。花色は普通、美しい青紫色だが、まれに白色のものもある。
 県内で見られるのはエゾリンドウで、北地に生育することに由来する。リンドウは山野の乾燥地に生え、葉は縁がざらつき緑色であるのに対し、エゾリンドウは湿地に生え、葉の縁が滑らかで緑白色である。
 連休が続きます。秋の空を溶かし込んだようなエゾリンドウを探しに出掛けませんか。

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ビタミンCが豊富な山菜「ユキザサ(雪笹)」=49

2008/9/22 月曜日

 

 平成14年9月22日。晴れ。袴越岳(628メートル)から大倉岳(677メートル)へ縦走する。かねてより元気なうちに縦走したいものと思っていたが、なかなかチャンスに恵まれなかった。植物の会会員のMさんから「山、整備したはんで、縦走するいいチャンスだ。わ、ガイドするぞ」と連絡があり、山仲間Nさんと出掛けた。
 袴越岳山頂からの展望を楽しむ。背丈以上もあるチシマザサが刈られ、縦走路が続く。昼食の時に撮影したのがこの写真である。赤く熟し輝いているユキザサの実。こんな美しい実は初めてだ。
 ユキザサは北海道ではアズキナ(小豆菜)の名前で親しまれ、山菜としての人気が高いという。津軽ではあまり知られていない。ほかにおいしい山菜がたくさんあるからだろう。
 和名は笹のような葉に雪のような白い花を咲かせることからユキザサ―、ゆでた時にアズキのにおいがし、多少甘みも感じることからアズキナの名前がある。
 山菜といえば、苦味、独特の強烈なにおい、そしてあく抜き作業などが思い浮かぶ。ユキザサはあく抜きがいらない。生のまま使えるし、ゆでるのも熱湯にくぐらせる程度でよい。なんといっても、この若葉にはビタミンCが100グラム当たり80ミリグラムも含まれており、山菜の中で最もビタミンCが豊富であるとされる。
 ユキザサは山地の落葉広葉樹林の下に生え、高さ20~70センチになる多年草。茎の上の方は斜めに曲がる。葉は長さ6~15センチで笹にそっくりである。5~6月、茎の先に円(えん)錐(すい)花(か)序(じょ)をつけ、白い小さな花を多数つける。実は丸く径5~7ミリで、赤く熟す。

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気の毒な名前「クサギ(臭木)」=50(完)

2008/9/29 月曜日

 

 枝や葉を傷つけると特有のにおいがするのでクサギ(臭い木)という実に気の毒な名前で呼ばれる。私は薬品、特にビタミン剤のにおいによく似ていると思うのだが―。
 木の花があまり見られない8月、クサギの花が咲く。名前に似ず花は芳香があり、枝先一面につく。径2センチほどの白い花は元が筒状で先が細く五裂し、雄しべが長く突き出た面白い形で、紅紫色の萼(がく)とのコントラストもよく美しい。まるでクチナシの花のような甘い香りを一面に漂わせる。
 果実も愛らしい。花が終わった後も残った紅紫色で星形の萼の上に径6~7ミリの丸い果実がつややかな瑠(る)璃(り)色に熟す。実と萼との色の取り合わせもよく、形も愛らしい。クサギは花も美しいが、どちらかといえば果実が愛(め)でられる。
 熟した果実は染料として古くから使われている。貝原益軒著の「大和本草」という江戸中期に書かれた書物に「―其実碧色にして白布を染むべし―」とある。
 草木染に夢中になったころ、クサギの実でぜひ染めてみたいと思っていた。ついに実を手に入れた。染液に浸した。媒染剤を使わなくてもよく染まる。本当に瑠璃色の実と同じ色に染まったので驚いてしまった。
 「どんな小さな植物でも、一つ一つ色を持っています。何の色を持っているかといえば自然が、神が与えてくれた色なのです」と、染色家の志村ふくみ氏は言う。
 こんな素晴らしいクサギを私は勝手にルリミノキ(瑠璃実木)と呼んでいる。

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