創生への道 人口減少時代を生きる〈第3部 地域社会の再生〉

 

移住と産業おこし=6

2018/1/7 日曜日

 

多くの地元採用社員が働くマルマンコンピュータサービスのオフィス

 県の調査によると、2014年10月1日~15年9月30日の県外からの転入者数は1万9981人、県外への転出者数は2万6259人。本県の場合、景気動向などで毎年差はあるものの、常に転入者を転出者が上回る形で人口減に拍車を掛けているのが実情だ。
 一方で、首都圏から地方への移住を考える人々を支援する活動が定着しつつある。弘前市は16年10月、「ひろさき移住サポートセンター東京事務所」を開設。移住相談は16年度113件、17年度131件(9月末時点)が寄せられたが、県内での仕事探しが大きなハードルとなる。
 そのような中、地方でのIT産業の在り方が注目を集めている。
 「インターネットは地方と首都圏の間にある距離の壁を一瞬で越える。地方と首都圏の距離感を埋め、経済格差も埋められたら」
 NPO法人あおもりIT活用サポートセンター理事長で、弘前市のウェブコンサルタント会社「consis(コンシス)」代表取締役の大浦雅勝さん(45)は上京してゲーム制作に携わり、地元に戻ってきたUターン組の一人だ。
 本業の傍ら、県内若者にITを活用したビジネスの発想を教えたり、IT業界関係者との交流につなげたりといった活動のほか、本県にUターンしたIT関係者のネットワーク構築にも努める。
 「日本は東南アジアでIT後進国。さらに本県はスマートフォンの所持率も低い。触れる環境がなければIT人材は育たないが、そのためにはITに理解ある人の母数を県内に増やさなければ」(大浦氏)
 ITは特殊なものではなくインフラ(基盤)との認識を持つべき―が大浦氏の持論。「そしてIT化は必ず、グローバルな目線とセットとなる」
 近年は海外から観光客を呼び込もうとする機運が全国的に高まっているが、大浦氏は「外国人観光客にお金を使ってほしいなら、まず環境を整えるべき」と指摘する。
 外国人がインターネットで「hirosaki」と検索した時、美しい桜や城、料理といった魅力的な画像が真っ先に出てくる環境を整えるのもITの役割だ。
 一方で外国人観光客が訪れたとしても、本県は青森空港に両替機がなく、クレジットカードを使えない場所が多い。中国はスマートフォンで商品決裁するシステムが普及しているが、中国人観光客を歓迎する日本は、その動きに対応し切れていないのが現状だ。
 UターンしてきたIT関係者と協力し、彼らの技術やグローバルな目線で地方のブランド力を高め、経済効果が波及する環境を整えるのが大浦氏の目標となっている。
 「人口減少は経済問題。働く場所がないから人が流出し、お金がないから子どもを生めない。地方で可能性を切り開くワードが、ITになる」
 地方からニーズを掘り起こし、全国を市場にすることが可能なのもIT産業の強みの一つといえる。
 1984年9月に設立された弘前市のマルマンコンピュータサービス(長内睦郎代表取締役社長)は、地元建設会社の電算室からスタート。交代勤務で入れ替わりの多い、看護師の勤務計画表ソフトを紹介してほしいとの相談を受け、病院向けのパッケージソフトを独自開発した。
 現場の要望を取り入れて医療機関系業務ソフトの開発を続け、看護業務支援システムに特化したパッケージの市場占有率は国内2位にまで成長。2016年には全国の実績ある中小企業から選ばれるグッドカンパニー大賞特別賞を受賞した。
 03年には東京支店を開設。長内社長は「支店を通じて最新情報やニーズを把握しているが、オフィス自体はどこに構えても同じなのが、IT産業の強み」と指摘する。
 従業員数は16年1月で52人。産休取得した女性社員は全員復帰し、時短勤務してさらに出産した社員もいるなど、育児と仕事を両立できるよう会社がサポート。有給も消化させるなどした結果、離職率も低く優れた人材の確保が可能となった。
 14年には八戸市、東京都のIT企業と共同出資し「青い森クラウドベース」を設立。省エネ性能が高い東北最大級のデータセンターを六ケ所村に建設し、首都圏企業の膨大なデータを管理するなど、首都圏と地方のニーズを踏まえた産業おこしにも取り組んでいる。
 長内社長は、地方でもできることはある―とし、「今あるものをどのように活用するのか見据えて挑戦を続け、地域に貢献する企業でありたい」と口調に力を込めた。

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「変わる“終末”」=7・完

2018/1/8 月曜日

 

専求院の樹木永代供養墓の前で行われる合同供養祭の様子

 「墓は地域や時代によって変化する。本家の墓に皆が入った時代から、核家族も墓を持つ時代を経て、再び過渡期に入ったのでは」
 そう語るのは、弘前市新寺町・法涼山円明寺の下間正博住職(49)だ。
 1499年からの歴史が伝えられる由緒ある円明寺は、遺骨を一カ所に埋葬して永代供養する合同墓を、市内でも早い時期の2003年に建立した。墓の継承者不足という課題を背景に、寺という地域コミュニティーを担う立場から必要性を実感してのことだ。
 墓は維持管理者がいなくなれば撤去せざるを得ないが、「この世と縁が切れてしまうという怖さを感じる人は少なくない」(下間住職)。理屈での割り切れなさが、墓の課題を複雑化させる側面は否めない。
 「寺は亡くなった人のためだけでなく、生きるための教えを伝える場でもある。霊を慰めるという言葉があるが、生きる人を慰めるのも教え。そのためにできることを担っていかなければ」
 寺と檀家という関係を広げ、寺を地域住民のよりどころとする在り方も模索している。
 少子化に伴う今後のニーズを見越し、弘前市は焼骨3000体分を埋葬できる合葬墓の建設を弘前霊園内に計画。宗派にとらわれないデザインとし、墓を所有していない市民を優先するほか、生前予約分として約1000体を見込む。
 来年4月以降の供用開始を目指しており、市によると、生前予約を含めた問い合わせが既に数件寄せられている。
 市内で遺族の思いに寄り添った葬儀を執り行う「とーたる・さぽーと0528」の納棺師・樺澤忠志さん(41)は、「墓だけでなく葬儀にも変化が起きている」と指摘する。自分の葬儀や墓で周囲に迷惑を掛けたくない、ひっそり済ませたい―といった相談が増加傾向にあるという。
 「形式にとらわれず送りたい人、送られたい人の思いを酌み取りたい」とし、「墓を持たず海洋散骨したい、といった相談にも応じている」と話す。
 「自分が死んだ後はどうなるのか思い煩うのは苦しい。しかし人は生まれる場所は選べずとも、最後の場所は選ぶことができる」
 樹木葬の形の永代供養墓をはじめ、多様化する要望を踏まえた墓の在り方を提案しているのが、弘前市新町・専求院(浄土宗)の村井龍大住職だ。
 2013年、ハナミズキをモニュメント代わりとした樹木永代供養墓を完成させた。「最初はどれほど需要があるのかと思った」(村井住職)が、予想以上の反響があった。「桜のきれいな弘前で眠りたい」「岩木山が見える場所がいい」と県外からの申し込みも。
 墓は男性が継ぐ傾向にあり「入る墓がない」と悩む女性の相談が寄せられたことから、その後は新たに女性専用墓を設けたほか、家族同然に暮らすペットとの埋葬を望む人の墓も用意。友人同士や同性カップルからの相談にも応じている。
 花の咲くハナミズキを見て「この墓に入るのが楽しみ」といった人や、寺で開くコンサートなどに訪れる人や子どもたちが墓に手を合わせる姿に「ここなら寂しくない」と笑顔を見せる人も。いずれ同じ墓に入る人たちが合同供養祭で顔合わせし、仲良くなったケースも生じた。
 「誰にも迷惑を掛けたくないと言いつつ、墓に入った後は誰かに手を合わせてもらいたい、緩やかに地域とつながりたいとの願いを持つ人は多い」と村井住職。血縁で墓を守れない時代だからこそ、新たなコミュニティーの在り方を提唱する。
 「血縁ではなく、人のつながりによる“結縁”で墓を守っていく形にしていきたい」

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