創生への道 人口減少時代を生きる〈第3部 地域社会の再生〉

 

2018/1/1 月曜日

 

  厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口では、日本の人口は今後減少を続け、総人口は2053年に1億人を割り、65年には8808万人となる見通しが示された。
 本県でも過疎化、後継者不足、伝統文化消滅の危機、地域コミュニティーの喪失―などが問題視されている。時代を乗り越え、地域社会を再生するための方法はあるのか。各地域が抱える課題と関係者が試みる施策を7回にわたって紹介する。

∆ページの先頭へ

買い物難民を救え=1

 

生鮮品から総菜まで幅広い商品を購入できる移動販売車「七和楽々号」は、地域に根付き始めている

つがる市宅配サービスで商品を手渡す工藤さん(右)。宅配を通じて地域の見守りにもつながっている

 五所川原市南東部に位置する七和地区は過疎化に伴い、高齢者らが日常の買い物にも困る“孤立地帯”となっている。状況を変えようと動いたのが地域住民らで、食料品などを扱う移動販売車「七和楽々号」の運行を昨年11月に開始。買い物に悩む住民「買い物難民」の救済と地域の見守りを両立させ、住み慣れた地域で暮らせる仕組みづくりの構築を目指している。
 七和地区は人口1944人で、高齢化率は38・58%(どちらも昨年1月末現在)。近郊に市街地はあるが、移動には車で20分以上かかり、公共交通機関も充実しているとは言えない。
 解決の糸口として打ち出されたのが七和楽々号で、地域住民らで組織する「七和地区活性化協議会」が県民生活協同組合と連携して運行を始めた。移動販売と高齢者の様子を見守る役割を担い、現在は地区の2コースを週2回巡っている。
 1日の利用客は50~60人、平均売り上げも約5万円と好調だ。一方で国などの補助金なしでは赤字なこと、販売中は分単位で移動を続けなければならないことなど課題も多い。
 それでも住民からは喜びや感謝の声が相次ぎ、運転手兼販売員の柳原繁美さん(66)は「興味を持ってくれている。思ったより評判もいい」と語る。
 移動販売の在り方をめぐっては、同地区で比較的若い50~60代で設立した任意団体「七和まちづくりネットワーク」を中心に検討委員会を開き、見守り体制の構築や長期間サービスを継続する方法などを模索している。
 七和楽々号は3月まで運行。4月以降は補助金の関係で県民生協が販売元となるが、夏以降は住民主体の販売に戻る見込み。同協議会事務局長の飛嶋献さん(57)は「自分たちが住む地域の主人公は自分たち。行政に任せるのではなくチャレンジしたい」と話す。
 県内の買い物宅配サービスの先駆者的存在がつがる市のNPO法人元気おたすけ隊だ。市から補助を受けて2011年6月から、街の駅「あるびょん」を宅配センターにサービスを始め、あるびょんや宅配加盟店の商品を市民へ電話一本で届けている。
 サービスは会員登録制で、これまでは約780人が登録。おたすけ隊の長谷川靖久代表理事(58)によると、定期的な利用者は150~200人程度で、1日の宅配件数は15~20件ほどという。
 宅配の担当は工藤繁樹さん(45)。宅配を通した利用者との会話で配達だけでなく、地域を見守る役割も担うようになっている。
 サービスが始まって初の利用者になったという同市の片山ふじゑさん(80)は「便利で助かる。工藤さんと会話するのが楽しみ」と笑顔を見せる。同市の対馬はつえさん(84)も「膝を手術して自転車に乗れないのでありがたい。工藤さんは神様のような存在」と話す。
 サービスは好評だが宅配は工藤さん1人で行うため、1日の宅配件数には限度がある。工藤さんは「車をもう1台増やせばガソリン代や人件費が増える。なかなか簡単にはいかない」と話す。
 「今後はスマートフォンやタブレット端末を使った注文などができないか考えている」と長谷川代表理事。「サービスを始めて6年半。当初はあるびょんに元気に歩いて来ていた人が、サービスを使うケースも増えてきた。それだけ高齢者の方が増えてきている。高齢者に優しいまちづくりのため、地域全体で買い物弱者への対策を考えないといけない」と呼び掛ける。

 

 

∆ページの先頭へ

交通弱者の支援=2

2018/1/3 水曜日

 

大鰐町のデマンドバス「スネカラバス」の高野新田線「めんちゃ号」。道幅の狭い山間部を走るためジャンボタクシーの車両を使い、高齢者向けの手すりやステップも備える

 2017年11月下旬、大鰐町高野新田の山間部を走るデマンドバスの車内では、乗客の高齢者たちが世間話に花を咲かせていた。デマンドバスが町中心部にある町立大鰐病院を出発し、高野新田で折り返して同病院に戻るまでの約1時間で乗客は10人。車がバス停で止まるたびに、乗客と運転手は親しげにあいさつを交わす。
 高野新田に一人で暮らす乗客の80代女性は「バスの利用客は常連が多く、使っているうちにみんな顔見知りになる。(バスが)小さなコミュニティーとして機能している面もある」と話す。
 同町では採算悪化による路線バスの廃止に伴い、10年に事前予約制のデマンドバス事業を開始。町中心部から8~10キロ圏内の山間部に3路線を展開している。事業主体の町地域公共交通会議から運行事業を委託される大鰐交通の船越将志さん(36)は「高齢化率が他自治体より高い大鰐では、今後さらに高齢化と人口減が進んでいく中で、公共交通の機能を維持していく上でもデマンドバスの必要性は高い」との認識を示す。
 道幅の狭い山道の走行を考え、運行はジャンボタクシーの車両で行う。高齢者の乗り降りの負担も考慮しており、乗客からは「手すりはもちろん、ステップが普通のバスより低くて高齢者に優しい」と好評だ。
 一方で船越さんは「病院や社会福祉協議会などが運営する無料バスもあり、デマンドバスの新規利用客が増えていない側面もある。いかに町と連携して公共交通網を整理・維持していくか」と課題を指摘。同交通会議事務局の成田一喜町企画観光課長補佐は「民生委員を通して各集落でデマンドバスの認知度向上を図るなど、新規利用者の獲得に向けた取り組みを考えたい」と話した。
 西目屋村では昨年12月1日から、予約型乗合タクシーの運行を始めたばかり。村役場と大秋・白沢地区(大白地区)を結ぶバス路線が利用客減少により廃止されたためだ。同地区には独り暮らしの高齢者世帯も多く、通院や買い物、通学に公共交通手段は不可欠。村は「(公共交通手段を)完全に無くすことはできない」として、乗合タクシーの導入を決めた。今年12月までの1年間を社会実験として運行し、住民の反応を見て本格運行を検討することにしている。
 「料金が安く、家の前まで迎えに来てくれるので路線バスより便利。むしろ無くなると生活が成り立たない」。予約型乗合タクシーについてそう話すのは、弘前市が過疎地域自立促進計画を策定する旧相馬村区域のうち、最も奥にある集落の一つ藍内に住む今桂子さん(80)。
 市は15年、赤字だった路線バスを廃止し、それに変わる交通手段として乗合タクシーの本格運行を開始した。現在、藍内周辺の定期的な乗合タクシー利用者は5~6人。そのほとんどが自家用車を持たない高齢者で、市内の高校へ通学する学生もいる。過疎地域に暮らす市民にとって乗合タクシーはライフラインとして機能しているが、利用者数は相馬方面への路線バス利用者を含め年間5000人台で横ばい。損益の赤字分は国と市の補助金で賄う状況が続いている。
 国は現在、地方公共団体が交通事業者と連携して持続可能な公共交通網の形成を目指すマスタープラン「地域公共交通網形成計画」と、その具体的な計画「地域公共交通再編実施計画」に取り組む自治体を支援している。本県では県や弘前市などがマスタープランを策定し、同市では同実施計画も18年度以降の策定を目指す。今後の人口減少や少子高齢化社会における交通弱者対策を見据え、より効率的な公共交通事業の運用へ模索が続く。

∆ページの先頭へ

見守りが変える地域=3

2018/1/4 木曜日

 

地域のことは地域で―。昨春から始まった地域見守り事業は、地域の薄れかけていたコミュニティーを再生し始めた

 「まみしぐしてらな」。独り暮らし高齢者の世帯を回り、言葉と笑顔を交わしながら住人に広報誌や特殊詐欺注意のチラシを手渡す―。黒石市は昨春から、独り暮らし高齢者らの見守り事業の委託先を宅配業者から地区協議会に変更した。当初は「市から丸投げだ」と住民から不満の声が少なからず出たが、開始から9カ月たち、町内会のイベントや会議への参加率が上がるなど地域に変化がもたらされている。
 黒石市は昭和30年代から、10カ所の小学校学区ごとにある公民館を拠点にした活動を行い、独特の地域コミュニティーを形成してきた。現在も防災訓練やスポーツ大会など、地区単位で参加する行事が多く存在する。
 この市内10地区のコミュニティーエリアを軸に、昨年4月から住民主体の見守り事業が始まった。町内会役員や民生委員、行政連絡員らが独居高齢者宅を訪問し、対面して安否を確認。3回訪問しても対面できない場合は、市の担当者が安否確認する―というシステムで、950人近い独居高齢者を見守っている。開始前から「行政から地域へのトップダウン」と不満が噴出誰が訪問するか決まらず4月実施に間に合わなかった地区もあるなど、足並みそろえてのスタートとはならなかったが、その効果は目に見えて表れ始めた。
 「コミュニケーションがコミュニティーになってきた」と話すのは、訪問対象者が200人を超え、10地区の中で特に多くの人数を受け持つ東地区連絡協議会の村上昭男会長。
 同地区では町内会単位で見守りを実施しており、自身も訪問者を務める村上会長は「見守りを始めたことで、訪問先の高齢者が町内のイベントに参加するようになった。協議会や町内会の会員同士も顔を合わせる機会が多くなり、親交が深まった」と早速の効果に驚く。
 西部地区連絡協議会は昨年6月から見守りを開始。村上隆彦会長は「地区の環境に合った見守りの方法や担当者を決める会議を複数回開いたため、4月に間に合わなかった」と振り返りつつ「今は警察が自宅に来ても疑う時代。地域住民は顔なじみなので、独り暮らしの人も安心して迎えられるし、会話もしやすい」と話し、独居高齢者の不安の払拭(ふっしょく)につながったと評した。
 「地域コミュニティーは黒石でも薄れてきており、都市部だけの問題ではない」と警鐘を鳴らす憲市長も「最初はなぜ自分たちが…との声もあったが、実施してよかったという声を多く聞くようになった」と評価。さらに「全国的に独居高齢者のごみ出しや除雪も問題。見守り事業を検証した上で、住民との意見交換をしながら課題解決に向けた体制の充実について協議できれば」と一層のコミュニティー力向上に向けて展望を語った。

∆ページの先頭へ

伝統を紡ぐ中で=4

2018/1/5 金曜日

 

金屋地区の住民が伝統を守り、一から縄をない続けている年縄づくりと奉納会
子どもたちが神主と大黒天に扮し、大根子地区の家庭を回る「カパカパ」と「福俵」(田舎館村提供)

 伝統行事を若者世代や子・孫へ伝えることは、地域にとって重要な意味を持つ。しかし近年は、少子高齢化の進行や個人優先による行事への不参加などが大きな壁となり、伝統の継承は難しくなっているのが現状だ。しかし、そのような苦境に立たされる中でも、住人同士で協力し合いながら伝統を守り続けている地域もある。
 旧尾上町にある平川市金屋地区では、その年の五穀豊穣(ほうじょう)などを願い、地元の「山神社」に奉納する年縄作りと奉納会が長年行われている。同地区の老人クラブ「金屋第一、第二高砂クラブ」が中心で、地区の人たちによると、戦中、戦後の一時期に中断したが戦前から続く伝統行事だという。
 地区の農家が刈り取った稲を持ち寄り、わら打ち、縄ないを経て全長約30メートルの年縄を完成させる。この作業は同クラブが行ってきたが、近年は会員の高齢化だけでなく、未加入の高齢者や縄をなう経験がない人が増えたため、参加者の減少が問題となっている。
 そのため、3年ほど前から金屋町会が年縄づくりに参加。寄付の集金も手分けして行い、行事の継続に力を貸している。佐藤正道町会長は「長年続く伝統という面もあるが、地域コミュニティーをつくる一つとして、顔を合わせて交流する場が必要。子どもたちにも見せることで『こういう行事が地区にあるんだ』と覚えてくれたらいい」と話す。こうした活動によって、徐々に参加する人も現れたという。
 元旦に行う年縄奉納会も、以前は車を使って年縄を運んでいた
時期があった。現在では同地区の町会や子ども会育成会、囃子(はやし)愛好会など8団体が協力し、山神社までの運搬や囃子の演奏などを行っている。金屋第一高砂クラブの高橋義春顧問は「1回でも休んでしまうと、再開するのが難しくなる。こうして協力してくれるため、毎年開催できる」と感謝し、これからも地区の伝統として続けていく意欲を見せている。
 田舎館村の大根子地区で行われている「カパカパ」と「福俵」も、大切に続けられている行事の一つだ。大根子子ども会育成会(田澤健次会長)が主催。カパカパと福俵は、元は別々に行われていた行事で、カパカパは戦国時代に旅人が豊作を祈願して歩いたのが始まりとされ、ダイコンとニンジンで手作りした「カパカパ人形」を家の入り口に立てて歩く。福俵は、僧侶らが祝い事のある家で福俵を転がしていたのが成り立ちとされている。
 両行事とも、戦後の食糧難などを背景に次第に姿を消したが、1977年に当時の育成会会長が「地域にあった行事を大切にするべき」と、両行事を合わせた形で復活させた。現在は1月の第2日曜日、神主や大黒天に扮(ふん)した地区の児童たちが地区の家々を回っている。一度だけ休止した年はあったが、それ以外は毎年行っており、今年で復活から40回目となる。
 写真愛好家も訪れる注目の行事となったが、一方で「地区の子どもたちが少なくなり、厳しい状況にある」と田澤会長は語る。以前は20~30人いた子どもたちも今は10人前後。全員参加するとも限らず、中学生になった子どもたちにも手伝いを頼むなどして、行事の継続に努めている。
 「地区の人たちは行事をやることを楽しみにしてくれている。この行事は地域を表すもので、地区の誰もが知っているもの。ここで途絶えてほしくはない」と田澤会長。
 地域の連帯感や世代間交流、近所や隣人とのつながりが伝統継承を媒介により深まる。古くて新しい地域コミュニティーの在り方がそこにある。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2