’17衆院選 暮らしと政治

 

2017/10/15 日曜日

 

 衆院選は、22日の投開票まで1週間となった。各候補者の舌戦も激しさを増しているが有権者は、そもそも政治に何を求めているのか。消費税、安倍政権の経済政策、社会保障、安全保障政策といったテーマで津軽地方の有権者の声をまとめた。

∆ページの先頭へ

消費増税=1

 

消費増税の是非に関して、県内の有権者からは、生活不安と国の財政不安の間で思い悩む声が多く聞かれた

 今回の衆院選では消費税増税の是非が大きな争点の一つとなる。自民党は2019年10月の税率10%への引き上げを予定通り行い、増収分約5兆円のうち2兆円程度を幼児教育無償化などの財源に充てる方針を示す一方、野党各党は消費の冷え込みや財政健全化の先送りを懸念し、引き上げの凍結・中止を掲げる。少子高齢化による社会保障費の増加で財政状況が悪化していく中、本県有権者の間では、消費増税に対する“生活の不安”と、国のつけを将来世代に回さないための“責任感”の間で揺れ動く姿が多く見られた。
 当初、増収分は1兆円程度を社会保障、4兆円を国の借金返済に充てる予定だった。自民党案による今回の使途変更では、政府目標である20年度までの基礎的財政収支黒字化が先送りされ、臨時財政対策債に頼る地方財政にも影響が波及することで借金依存からの脱却が遠のく恐れがある。
 これに加え、低所得者ほど負担が増す消費税の逆進性は、最低賃金が全国で下から2番目に低い本県では都市部よりも強く作用すると考えられる。本県の消費者マインドは、こうした“板挟み”の状況で消費増税の是非について思い悩んでいる。
 弘前市のパート従業員で、昨年結婚した道川真子さん(24)は「都会の人は収入が多いから増税しても生活は成り立つが青森では厳しいし、わが家も家計を切り詰めなければ…」と悩みつつ、「将来的に子どもが生まれた時に少しでも補助がもらえるなら」と、増税は「致し方ない」というスタンスだ。
 同市の無職鶴ケ谷俊彦さん(63)も「賃金の低い地方の暮らしは消費増税で厳しくなるし、私自身も年金受給まで期間があり苦しいが、東京には待機児童の問題などこちらにはない苦労がある。社会全体で考えれば仕方ないのでは」と一定の理解を示す。
 一方、増税反対の立場を取る人もその理由は一様ではない。同市の主婦吉﨑るみ子さん(65)は、「北欧では消費税率が高くても国民に返ってくる。本当に子育て支援に回すのであれば今回の増税には賛成だが、与党のこれまでの福祉政策や公約の実現性を見ると、選挙対策ではないかと思えて信じられない」と政権への信頼性の欠如から異を唱えた。
 消費の冷え込みを理由に反対するのは、同市内で洋服店を経営する50代男性。「これまで消費増税のたびに売り上げが落ち込んできた。対策として増税分を還付するようなセールを企画してきたが、結局は店の利益に響く。10%になればスーツなどの高価格帯の商品は消費税だけでもばかにならず大打撃だ」と表情を曇らせた。
 日銀青森支店は、消費税が5%から8%に上がった前回増税時(14年4月)の県内金融経済概況において個人消費への影響を「駆け込み需要は想定以上、反動減は想定内か想定より小さめに推移している」と評価大型小売店販売、家電販売、新車登録・届出台数が堅調な一方、住宅や自動車、百貨店の高額商品、飲用や日用品に反動減が見られた。
 7年前から食品や雑貨の小売店を経営する同市内の竹森幹さん(36)は、増税分の使途については「少子化対策が急務の今、子育て支援に回すのは賛成」と理解を示すが、前回増税時を振り返り「コスト削減で売価を保とうとするメーカーの努力もあったが、結局仕入れ値や配送料の関係で店頭価格を上げざるを得ず、経営者としては大変だった」と語り今回の増税に懸念を示した。

∆ページの先頭へ

アベノミクス=2

2017/10/16 月曜日

 

弘前市のメインストリートである土手町通り。週末でも人通りはまばらだ=14日午後3時50分ごろ

 今回の衆院選でも争点の一つになっているのが安倍政権の経済政策「アベノミクス」だ。選挙戦では、与党が賃上げや雇用の拡大など実績を強調するが、地方への波及効果は限定的で「景気回復の実感はほとんどない」という声が大半を占める。第2次安倍政権が発足して5年近くたっており、「いつまでも道半ば。もう期待もしていない」と諦めの声さえ聞かれ始めた。
 大胆な金融緩和、機動的な財政出動、成長戦略の3本の矢を掲げて始まったアベノミクス。日経平均株価は2万円を超え、4~6月期の実質国内総生産(GDP)は年率換算で2・5%増と、11年ぶりに6四半期連続のプラス成長と「好景気」を示す指標は多い。
 しかし、賃上げや個人消費は力強さを欠き、地方にも恩恵はもたらされていない。弘前市のメインストリートである土手町通り。少子高齢化、若年層の人口流出に歯止めがかからず、かつてのにぎわいは失われたまま週末の人通りはまばらだ。
 中土手町商店街振興組合の平山幸一副理事長は「5年前に比べれば人の動きは出てきている。中央の景気が良くなっているのは確か」とし、「何もしなければ人は来ない。人口減少が続く中、交流人口を増やすことも必要。地域、商店街、店が特色を打ち出していかなければ生き残れない」と話した。
 2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた東京都心の再開発ラッシュで、首都圏の建設業はその恩恵にあずかる。しかし、遠く離れた県内に波及効果はほとんどなく、人手不足というしわ寄せも来ている。
 弘前市にある土木会社の男性社長(70)は「工事自体が少なく、入札の予定価格も低いため、利益が見込めない。従業員のために仕事を取らなくてはならないが、経費を削るのにも限界がある」とこぼす。人手不足も深刻で「中央に人を取られ、求人を掛けても全然集まらない。なり手もおらず、このままでは地方の建設業界は大変なことになる」と危惧した。
 管工事や土木工事などを請け負う建設業男性(47)も「現場監督が全然足りない。これから生産年齢人口がどんどん減っていく。人材を育てていかなければ」と危機感を募らせる。仕事で東京に行くことも多く、「景気の良さを感じる。このまま待っていては駄目。中央の仕事を取りに行くことも必要」と力を込めた。
 政権がアベノミクスの成果の一つとして強調するのが、インバウンド(訪日外国人客)の大幅な増加。県内でも今年上期(1~6月)に県内に宿泊した外国人(延べ人数、速報値)は過去最高の9万4740人(前年同期比64%増)に達した
 弘前市内ホテルの役員男性(41)は「宿泊者数は増えているのは確か」としつつ、「震災直後が底だっただけで、アベノミクスの成果なのかは分からない」と指摘。「宿泊者は増えているが、客単価が下がっているのが実情。価格を抑えないと選んでもらえない」と苦境を語った。
 雇用も指標は改善を示す。第2次安倍政権発足時に0・6倍だった県内の有効求人倍率は、昨年1月に初めて1倍を突破し、今年8月には過去最高の1・26倍に。しかし、実際に希望する仕事に就ける求職者は少なく、津軽地方で営業の仕事をしている男性(36)は「給料が上がらないため転職を考えているが、求人は建設、福祉関係ばかり。何も変わっていない」と嘆いた。

∆ページの先頭へ

安全保障と憲法改正=3

2017/10/17 火曜日

 

米陸軍車力通信所が近接する、つがる市の航空自衛隊車力分屯基地

 衆院選で争点になっている安全保障関連法と憲法改正の是非。昨年11月、陸上自衛隊第9師団第5普通科連隊(青森市)を中心とした第11次隊が、国連平和維持活動(PKO)で南スーダンに派遣されたことは記憶に新しい。
 同国への派遣は2012年からだが、緊急時に他国の部隊などを救助可能な「駆け付け警護」など、新たな任務が付与された状態では初めて。施設整備などに一定の区切りがついたとして撤収するまでの約5カ月間、同隊は道路補修や医療支援活動などに従事した。
 新任務は行われなかったが、16年7月に首都・ジュバで武力衝突が起きるなど、治安情勢の危うさは明らか。自衛隊が戦闘行為に関与せざるを得ない状況に置かれるリスクを考えると、国際貢献への関わり方は今後の課題と言えよう。
 県自衛隊家族会の会長對馬敦夫さん(77)=青森市=は息子2人が自衛隊員。憲法改正には賛成の立場だが、「むやみに血を流すのではなく、世界諸国の軍の扱いを参考に議論してほしい。国民全体の理解が大事」と慎重な姿勢も示す。
 国際状況は緊迫の一途をたどっている。北朝鮮は8月29日と9月15日、弾道ミサイルを北海道方面に発射。ミサイルは双方とも日本上空を通過して太平洋に着水したが、国内では早朝から全国瞬時警報システム(Jアラート)が作動し、列島全体が混乱と恐怖に襲われた。
 国連安全保障理事会は経済制裁を発動したが、北朝鮮は核実験を強行するなど反発。制裁の中心を担う米国は軍事的行為も辞さない態度を示しており、米朝間の緊張は高まったままだ。
 津軽で唯一米軍が駐留するつがる市には早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が配備され、航空自衛隊車力分屯基地に近接する米陸軍車力通信所で運用が続けられている。近隣には住宅街や漁業地などもあり、国際情勢の危うさを懸念する声も聞かれる。
 車力漁業協同組合の代表理事組合長を務める尾野明彦さん(55)は、Xバンドレーダーについて「国の防衛上どこかに置かなければならない」としながらも、「実際にミサイルが飛ぶのなら、ここか自衛隊の基地がある場所だと思ってしまう」と話す。漁業に与える影響について「決められた時間、日数で操業しており生活が懸かっている」とし、避難誘導に苦慮していることも明かした。
 同市で9月1日に行われた今年の県総合防災訓練では、弾道ミサイル発射を想定した国民保護訓練(住民避難訓練)を初めて実施し、参加者が指示に従って建物内などに避難した。
 参考になったとする意見があった一方、一部住民からは「建物に隠れろと言われてもどうすればいいのか。ミサイルが飛んできたら助からないのでは」などと、戸惑いの声も聞かれた。
 世界情勢の混迷に伴い、国家安全と国際秩序への関わり方は目下の課題となる。對馬さんは「北朝鮮問題は話し合いでの解決が望ましいと誰もが思っている。だが、話し合いも効果がないように思える。心配だ」とつぶやいた。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード