創生への道 人口減少時代を生きる〈第2部 子育て環境〉

 

保育士の今、働く環境=6

2017/4/19 水曜日

 

幼保連携が進む時代、保育士らは多忙な中にあっても真剣に子どもたちと向き合っている

 夫婦共働きでさらに、祖父母が遠隔地に住むという世帯も少なくない現代社会。保護者らが働いている間、未就学児に向き合っているのが保育士だ。幼保連携型の認定こども園への移行に象徴されるように、求められる保育サービスの水準が単なる託児にとどまらなくなっている中、現場の保育士・保育教諭は身を粉にして子どもたちのために―と奮闘している。施設側にもニーズの深化と時代の変化を踏まえ、在り方を模索する動きがみられる。
 保育士の仕事は保護者から預かった園児らの世話をするだけでなく、保育活動をより円滑に進めるための準備作業などもある。必ずしも余裕をもって業務全般をこなせるわけではなく、教育的要素の充実した保育には相応の対応が必要だ。
 弘前市内の保育施設に勤める30代の女性は「忙しい時は本当に忙しい。子どもたちのことを考えて思い直しはしたが、辞めたいと思ったことだってある」と話す。同市内の別の保育園に約10年間勤務した経験のある児童厚生員の女性(36)も「各法人の方針にもよるが、仕事のために作り物(紙人形などの工作物)を頑張ったからといって残業代がつくとは限らない。職員の枠の都合で、パートで働き続けている同年代の友人もいるが、自分が必要とされているのか分からないと話している」と説明。仕事には誇りを持っていても、厳しい現実に直面している人は少なくない。
 保育園を運営する側は、こうした状況の背景にあるニーズの変化を感じている。同市紺屋町にある富士見保育所(認定こども園)の藤田俊彦所長(48)は「かつての託児とは違う、教育の質に対する要求を私たちが理解し、発信できているかが問われつつある。子どもたちがここで過ごす時間の中で、何が必要とされるかだ」と説明。同保育園ではスタッフの資質と保育の質を向上するための内部研修を実施しているという。
 質の高い保育を実践する上で、懸念される問題が地域外への人材流出だ。昨年秋、弘前市保育研究会(中村得仁会長)が会員のうち47施設に行ったアンケート調査によると、募集時に示した条件は基本給で20万円以下とした施設は皆無。18万円以下が9施設、16万円以下は22施設、14万円以下も1施設だった。
 同研究会副会長の藤田所長は「どうしても首都圏、大都市の待遇には勝てず人材流出の一因になっている。養成校に対し、地元就職を促すアプローチをしていかねばならない」と指摘する。
 富士見保育所独自の取り組みとしては、新制度に対応するために中堅以下の幼稚園教諭2種の取得を進めつつ、取得者を正規雇用で処遇することにより「最終的には全員を正職員にしたい」とする。その上で藤田所長は「待遇さえ良ければいいという話でもないと思う。地元の人材で地元の子を育てようという志を持ちたい。育った川に戻ってくるサケではないが、うちを卒業して保育士として戻った先生たちもいる。子どもたちの夢を育む中で、そういう人も育てられれば」と話している。

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若者の結婚観=7・完

2017/4/21 金曜日

 

家庭もキャリアも男女が平等に得られる社会の実現が求められる(写真と本文は直接関係ありません)

 50歳まで一度も結婚をしたことのない人は男性のほぼ4人に1人、女性のほぼ7人に1人―。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所の調査で分かった2015年の「生涯未婚率」=図=に基づく数字だ。生涯未婚率は男女ともに右肩上がりで推移し、昨今の「結婚離れ」を顕著に表す。さまざまな要素が絡み合って生涯独身を選択する人が増える中、20代の若者は結婚をどう捉えているのか。

 弘前市の会社員男性(28)は「このご時世、1人で暮らすだけでもいろいろお金が掛かる。将来を考えても明るいと思えない。結婚する時もその後もお金が今以上に掛かると思うと、尻込みしたくなる」と消極的な意見。平川市に住む公務員の女性(28)は「昔は(男性と)付き合うことに大きな意味を感じていなかったが、成人するといやでも結婚を考えてしまう。気楽に(恋愛を)できなくなった」と変化を語る。結婚は「価値観が近い人、特に経済面の考えが近くないと疲れてしまう。(相手が)家事に積極的でないと負担を分け合えないので、そこを見ている」と話した。
 弘前市が設置したシンクタンク「ひろさき未来戦略研究センター」は、15年11月に公表した調査報告の中で、未婚化の背景としてある大学教授の見解を紹介。1980年代ごろと比べて、若者、特に男性の経済力が低下し、経済的格差が拡大したことが若者を結婚から遠ざける一因となった―としている。
 若者の中には男女交際に対する意欲自体が低い、いわゆる“絶食化”の意見も。弘前市の別の会社員男性(24)は「自分の趣味にお金を掛けたい。極端だと思うが、恋愛も結婚も興味はない」と割り切る。「価値観は絶対に同じにならないし、妥協し合うのも疲れる。自分の考えに付き合わせるのは相手に申し訳ない」と理由を挙げた。
 一方で、結婚に前向きな平川市在住の会社員女性(27)は「1人で生きるには病気など限界がある。寂しいという気持ちもあり、結婚はしたい」とパートナーと生涯支え合える関係を結婚に求める。「一緒にいて楽しければいいと昔は考えていたが、今はお互いの思い描く未来にお互いがいるかどうかが必要」と語った。
 「子どもが欲しいので縁があれば結婚したい」とは弘前市の会社員女性(29)。「20代前半はそのうち自然に結婚できるものだと思っていたが、この年になると少し焦る。結婚はお金が掛かるとよく言われるけれど、何よりも自分の家族をつくりたい。親に孫を見せたいという気持ちもある」と率直に語った。

 若者の恋愛や性行動、親密性を研究する弘前大学人文社会科学部の羽渕一代(はぶちいちよ)准教授は「ここ20~30年で男女ともに結婚相手に求めるものに大差はない」と分析。しかし、近年若い男性にささやかれる恋愛や性行動に対する“草食化”について、「実は先に草食化したのは女性の方。90年代終わりごろからその傾向が見られる」とし、女性の「恋愛離れ」を指摘する。
 少子化の一要因として結婚の形が様変わりしたことも挙げる。昔は地域ぐるみで若者の結婚を支援し、お見合いによって成婚するのが主流だった。これに対し、欧米式の恋愛文化が浸透したことで70年代以降は恋愛結婚が一般的に。このため、お見合い結婚を軸に日本が築いてきた「子どもを産む社会環境」が崩れてしまったという。
 女性が社会で活躍する機会が増えたことで、恋愛と仕事が充実する時期が重なり「恋愛が(キャリアの上で)リスクとなっている」場合も珍しくない。生活環境の変化や出産などが伴う結婚は「女性にとって生まれ変わるのと一緒。相当勇気がいる決断」と羽渕准教授。
 働く女性が安心して家庭を持てる―そんな社会づくりが結婚離れに待ったを掛ける鍵となるのではないか。

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