創生への道 人口減少時代を生きる〈第2部 子育て環境〉

 

男性の意識改革=4

2017/4/17 月曜日

 

男性の育児参加には企業、個人の意識改革が求められる(写真と本文は直接関係ありません)

 社会で活躍する子育て世代の女性が増える一方で、本県における男性の育児に対する意識はまだまだ低い。育児を経験する男性2人の話から、男性の育児参加の課題が浮かび上がってきた。
 青森銀行法人営業部で勤務する赤石直樹さん(32)は今年2月、2日間の育児休業を取得した。行内の制度整備と職場の寛容な雰囲気が大きな後押しになったと振り返る一方、男性に必要な「当事者意識」が不足している、と問題点を指摘する。
 昨年夏に双子が生まれた赤石さんは、育休期間のうち5日間が有給休業扱いになる新たな制度が整備されたことを受け、上司から該当者として申請するよう勧められた。育休初日の2月7日は乳幼児健康診査(健診)に付き添い、2日目の8日は家事と育児を手伝った。2日間の体験を通じ「子育ては大変」だと改めて痛感した。
 育休を取れたのは行内の制度はもちろん、男性の育児を理解してくれる「職場や上司の存在が大きい」(赤石さん)。以前から育児や出産に配慮してくれる職場で、妻が帝王切開になる恐れがあった時も駆け付けるよう部長に言われた。職場内も同僚同士で育児の会話をするなどオープンな雰囲気だ。
 赤石さんは「制度が整備されてもすぐに取れるわけでもないし、上司の理解があっても取れるものではない。両方がそろって初めて取れると思う」と話す。
 一方で、育休を使う権利がある当事者意識の薄さに気付いた。赤石さん自身、上司に声を掛けられるまで制度を知らなかった。申請手続きも分からなかった。そのため「ほかの行員や支店も同様の状況になっているはず」と推測する。
 赤石さんは「育休利用を促せば使う人は多いはず。でも、当事者意識は制度が整備されても『へぇ』と人ごとのような部分がある」と代弁。制度利用の権利が認識されて取得者が増え、さらに課題が出ることで「制度のブラッシュアップにつながる」と話す。
 周りを見渡しても、育児に対する男性の意識に遅れを感じることがある。「会社に制度があるかどうかも関係するが、制度を意識しながら休暇を取り、妻をサポートしようとする男性は何人いるか。当事者のアンテナはまだまだだと思う」
 米国出身で大鰐町在住のニック・ベランドさん(35)は、妻の睦美さん(39)と長女(4)、生後8カ月の次女との4人家族。娘は2人とも日本で生まれた。“子育ては母親がするもの”と捉えられがちな日本の子育てに疑問を持つ。
 「米国ではそもそも夫婦の在り方が違って、子育ては夫婦というチームでするという感覚が当たり前。父親の家庭に対する優先度も高くて、妻の出産前後は休暇を取るし、出産にはもちろん立ち会う。立ち会わないというのは育児に興味がないと言っているのと同じ」と語る。
 ベランドさんは2014年3月に弘前大学大学院を修了。現在は在学中から研さんを積んだ尺八の奏者、指導者として活動し、依頼を受けて尺八作りも行う。睦美さんは育児休暇中だが、普段は弘前市内の福祉施設で働いているため、長女の保育園への送迎など育児の大半をベランドさんが担う。ベランドさんは「仕事が得難い時代なので、夫か妻かどちらかが安定した職に就いていれば、それに合わせて夫婦で協力していけば」と考える。
 留学経験のある睦美さんも米国的な夫婦感に共感しており、「(米国は)子育てを親に頼るという考えがない。その分母親が1人で負担するものでもないし、日本社会の『父親が育児に“参加する”』という姿勢がまず違う」と指摘。子育てに関しては夫婦の意見を一致させるように話し合いを大切にしていると言い、「日本は夫婦の時間を持つことにマイナスのイメージがあるけれど、子どもが生まれた後こそ夫婦の時間を大切にするべき。夫婦あっての家族だから」と強調する。

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イクメンって何だろう=5

2017/4/18 火曜日

 

葛西覚さん(右)夫妻の営む店で夕方のひとときを過ごし、閉店を手伝う長女ちこちゃん

 「イクメン」という言葉が広く認識されるようになって久しい。男女の雇用機会が均等化しつつあり、共働きの夫婦が多くなる中、子育てに占める父親の役割が一層重みを増している。とはいえ、限られた時間で仕事と育児を両立しなければならない立場の男性も多い。子育てに協力的なパパたちは、個別の職場事情も踏まえた上で「それぞれの立場で、できることからすべき」と提言する。
 弘前市坂本町でセレクトショップ「chicori(チコリ)」を営む葛西覚(さとる)さん(39)は、共同経営者である妻裕美さん(37)の黒石市にある実家で、長女ちこちゃん(2)、妻の両親と5人で暮らす。生後9カ月まで子育てを店の一角で行っていた。現在は弘前の保育園を利用するが、夕方の1時間程度は店で過ごす。
 仕事が子育てのスタイルを規定しているという。裕美さんは「うちの育児に役割分担はない。食事作りとかお迎えとか、どちらかが余裕のあるときにやる」と説明する。ちこちゃんの就寝時間は少し遅めになるが「すっかり看板娘で、ちこちゃんに会いたい―と言って来てくれる方もいる」のがうれしい。
 一昨年、県が発行した「カジダン・イクメンロールモデル集」の表紙を飾ったこともある覚さん。近所の散歩から東京出張まで、娘と出掛ける機会も多く「男親だから、年頃になるとどうなるか分からないが、嫌がられないならずっと構っていきたい」と意欲的。ただ、自分がイクメンかという点については「自分はただ家族と一緒に生活しているだけだから、特に何かしているとも言えない。仕事に飲み会に忙しいサラリーマンはこうもいかない。そういう意味で環境に恵まれていると思う」と答えた。
 勤め人の場合はどうか。弘前市役所に勤める黒沼立真(はるなお)さん(49)=同市=は、妻の久美さん(43)との間に長女・才椰(さや)ちゃん(6)を授かると、生後2カ月から育児休暇と年休を合わせて5カ月間、休暇を取得。「妻の産休が終わり次の春に保育園に預かってもらうまでの間、毎日面倒を見た」という。
 「初めての寝返りを自分がリアルタイムに見られたのは、育休を取っていたからこそ。仕事から少し離れて、いい気分転換にもなった。得難い経験」と振り返る。「体験を伝えることで男性の背中を押せれば」と思い、公民館の「イクメン講座」で講話したこともある。現在は「特別、カジダンというほどのこともしていないが、妻が仕事の関係で外せない時は家事をしたり娘と外出したりしている」という。
 子育て世代の男性の多くが、働き盛りという事情も承知しており「仕事とのバランスなどと言いながら、現実はなかなかうまく運ばない場合もある。個々ができることをするしかない。でも、今は子育て環境を整備できない企業は良い人材を雇えなくなる。少しずつ時代は変わっていくはず」とみている。「各職場で育休経験者が部下の相談を受けてあげられれば、良いイクメンとイクボスの関係ができる。そうした積み重ねで風土が少しずつ変われば、関係する制度の活用者も増えるのではないか」と将来を見通している。

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