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男性の育児参加には企業、個人の意識改革が求められる(写真と本文は直接関係ありません) |
社会で活躍する子育て世代の女性が増える一方で、本県における男性の育児に対する意識はまだまだ低い。育児を経験する男性2人の話から、男性の育児参加の課題が浮かび上がってきた。
青森銀行法人営業部で勤務する赤石直樹さん(32)は今年2月、2日間の育児休業を取得した。行内の制度整備と職場の寛容な雰囲気が大きな後押しになったと振り返る一方、男性に必要な「当事者意識」が不足している、と問題点を指摘する。
昨年夏に双子が生まれた赤石さんは、育休期間のうち5日間が有給休業扱いになる新たな制度が整備されたことを受け、上司から該当者として申請するよう勧められた。育休初日の2月7日は乳幼児健康診査(健診)に付き添い、2日目の8日は家事と育児を手伝った。2日間の体験を通じ「子育ては大変」だと改めて痛感した。
育休を取れたのは行内の制度はもちろん、男性の育児を理解してくれる「職場や上司の存在が大きい」(赤石さん)。以前から育児や出産に配慮してくれる職場で、妻が帝王切開になる恐れがあった時も駆け付けるよう部長に言われた。職場内も同僚同士で育児の会話をするなどオープンな雰囲気だ。
赤石さんは「制度が整備されてもすぐに取れるわけでもないし、上司の理解があっても取れるものではない。両方がそろって初めて取れると思う」と話す。
一方で、育休を使う権利がある当事者意識の薄さに気付いた。赤石さん自身、上司に声を掛けられるまで制度を知らなかった。申請手続きも分からなかった。そのため「ほかの行員や支店も同様の状況になっているはず」と推測する。
赤石さんは「育休利用を促せば使う人は多いはず。でも、当事者意識は制度が整備されても『へぇ』と人ごとのような部分がある」と代弁。制度利用の権利が認識されて取得者が増え、さらに課題が出ることで「制度のブラッシュアップにつながる」と話す。
周りを見渡しても、育児に対する男性の意識に遅れを感じることがある。「会社に制度があるかどうかも関係するが、制度を意識しながら休暇を取り、妻をサポートしようとする男性は何人いるか。当事者のアンテナはまだまだだと思う」
米国出身で大鰐町在住のニック・ベランドさん(35)は、妻の睦美さん(39)と長女(4)、生後8カ月の次女との4人家族。娘は2人とも日本で生まれた。“子育ては母親がするもの”と捉えられがちな日本の子育てに疑問を持つ。
「米国ではそもそも夫婦の在り方が違って、子育ては夫婦というチームでするという感覚が当たり前。父親の家庭に対する優先度も高くて、妻の出産前後は休暇を取るし、出産にはもちろん立ち会う。立ち会わないというのは育児に興味がないと言っているのと同じ」と語る。
ベランドさんは2014年3月に弘前大学大学院を修了。現在は在学中から研さんを積んだ尺八の奏者、指導者として活動し、依頼を受けて尺八作りも行う。睦美さんは育児休暇中だが、普段は弘前市内の福祉施設で働いているため、長女の保育園への送迎など育児の大半をベランドさんが担う。ベランドさんは「仕事が得難い時代なので、夫か妻かどちらかが安定した職に就いていれば、それに合わせて夫婦で協力していけば」と考える。
留学経験のある睦美さんも米国的な夫婦感に共感しており、「(米国は)子育てを親に頼るという考えがない。その分母親が1人で負担するものでもないし、日本社会の『父親が育児に“参加する”』という姿勢がまず違う」と指摘。子育てに関しては夫婦の意見を一致させるように話し合いを大切にしていると言い、「日本は夫婦の時間を持つことにマイナスのイメージがあるけれど、子どもが生まれた後こそ夫婦の時間を大切にするべき。夫婦あっての家族だから」と強調する。