創生への道 人口減少時代を生きる 〈第1部〉

 

魅力ある教育=2

2017/1/3 火曜日

 

昨年10月の西目屋小統合40周年記念式典で歌う児童たち。村唯一の小学校として、地域住民とともに今後の発展を誓った

  このまま人口減少が続くと、2021年ごろには西目屋村は700人の村になってしまう―。そう危機感を募らせたのはおよそ10年前。当時人口は約1600人だった。関和典村長と村教育委員会の長利允弘教育長は、若い世代の移住・定住を図ろうと、教育環境の充実と子どもを育てやすい環境づくりに乗り出した。
 「平成の大合併」には加わらず、単独の道を選択した村は、08年に当時東北で初めて中学3年生までの医療費を無料化。09年には県内初となる3歳児以上の保育料を無料にした。その後対象をさらに広げ、17年現在で医療費は18歳まで無料、保育料無料化は0歳児から適応される。ほかにも妊産婦健診や中学生までの任意予防接種の全額負担、3年以上の居住で第2子以上への出産・入学祝い金も支払われるなど、子育てに対する支援は手厚い。
 15年春には全国的にも珍しい中学校教育の事務委託を開始し、西目屋中学校を隣の弘前市立東目屋中学校へと実質統合した。「事務委託がなければ15年度には複式学級ができていた」と長利教育長。学級数が減れば配置される教員数が限定され、専門外の教科を教えなければならない教員の負担や生徒への影響などを考慮した決断だった。
 保護者や地域の理解は深く、事務委託をしたことで生徒たちは弘前市内の中学校と同等な教育環境で勉学やスポーツ活動に励んでいる。
 村唯一の教育機関である西目屋小学校は、小規模校(12学級未満)のモデルケースとして注目が集まる。児童数は08年度の64人から16年度は45人と減少傾向に歯止めはかからないが、45人のうち約4割が村外出身家庭の子どもたちだ。
 小規模校ならではのアットホームな雰囲気で伸び伸びと学ぶ児童の後ろには「保護者からの厚い信頼がある」と長利教育長。大きな自治体では教育方針などが各学校に伝わりにくい部分があるが、村では教育委員会と現場の教員らの距離が近いため、「一つの意識で進んでいくことが強み」(長利教育長)となっている。
 教員からの人気も高い。長利教育長によると、数年前までは西目屋小への異動を希望する教員は少なかった。だが、教育に力を入れ始めてから希望数は増え、今では人気校という。
 小規模校の強みを生かした取り組みとして、西目屋小はいじめなどが原因で引きこもりや不登校になった村外の児童の受け入れにも積極的に門戸を開ける。同校の福井淳悦校長は「少なくとも保育園から中学校までの10年くらいを、村で子育てするのも選択肢としてあるのではないか」と語る。
 12年前に弘前市から村に移住した運送業の中島和也さん(45)は、妻の香さん(39)と小学5年生の長男、3年生の次男、1年生の三男との5人で定住促進住宅に住む。
 安くて広いアパートを探していたところ、村の住宅が条件に合ったため、当時4カ月だった長男を連れて移住した。「定住するつもりはなくて、軽い気持ちで引っ越した」と香さん。中島さんは「(西目屋は)遠くて不便というイメージがあったし、知らない土地で暮らす不安はあった。でも不安はすぐ無くなった」と振り返る。
 村教委が主管する放課後児童クラブで働く香さんは、PTA活動にも忙しい。「人数が少ないので何かしらの役割は回ってくる」と言うが「村に住んでいなければ、3人目はもうけられなかったかもしれない」とも。村民として「若い人たちや子どもが増えて活気ある村になってほしい」と願う。
 県内最小である村の人口は現在1400人を切った。村では昨年末、新たな定住促進住宅が完成。今回県外から初となる子ども連れの家庭が入居を予定している。白神山地の豊かな自然と「子育て応援日本一の村づくり」宣言を基盤に、人口増加へ向けて村は着々と歩を進めている。

∆ページの先頭へ

県立高校再編=3

2017/1/4 水曜日

 

2017年度以降の10年間で、本県の中学校卒業予定者は約3100人の減少が見込まる。高校の選択肢の幅が狭まる中で、地域で意見交換会が開催されるなど高校再編をめぐる議論は加速している

 2017年度以降の10年間で、本県の中学校卒業予定者は約3100人の減少が見込まる。エリアが広いといった地域特性から高校の統廃合を進めにくいとされてきた西北地区でも、学級減や統廃合は免れず、その動きはさらに具体化していく。学校の選択肢などが狭まる中で子どもの学力や家庭環境、生活事情に合った、生徒が望む教育環境づくりをどう考えていくべきなのか、地域の議論が加速している。

 県教委は18年度以降の県立高校再編に関わる基本方針を昨年8月に決定。学校配置の考え方として、大学進学などに対応する「重点校」、専門科目を幅広く学び職業教育の核とする「拠点校」、通学困難地域に配慮した「地域校」、計18校の案を示した。
 西北地区では重点校に五所川原、拠点校に五所川原農林が選ばれ、中核的な役割を担い一定の学校規模を保つ重点校と拠点校が、他校と連携することで、教育の質の確保・向上を図るという。
 小泊地区から五所川原市内の高校に通う子どもの40代の父親は、再編方針に理解を示す。小泊地区では五所川原市内の高校に通う際、スクールバスで月2万円弱の定期を購入し約1時間半かけて通学しているといい「昔は五所川原市内の高校に通うためには下宿で月78万円掛かった。バスが通ってからは高校の選択肢が増えた」とし「学科や規模部活環境も含めて望む教育を受けさせてあげたい」と五所川原市内への一定規模の学校集約に肯定的な意見だ。
 一方、家庭の生活事情などをくみ、地域にある程度学校を残してほしいと要望する声もある。中里地区の50代男性は「生活は苦しいが子どもを高校に行かせたい地元高校存続を」とし、高校進学の意欲があり、地元に残り地域を支えたい子どもたちもいると指摘する。

 西北地区の地域校は木造深浦校舎、中里の2校。統廃合対象をめぐり、重点、拠点、地域校に名前が挙がらず、存続に危機を感じる地域もある。昨年12月、五所川原市金木地区では18年度以降の県立高校配置について、金木高校PTA、同校後援会、同校同窓会が意見交換会を開いたが、焦りや不安が出席者の口をついた。
 金木地区は作家太宰治の出身地としての知名度だけでなく、斜陽館や地吹雪体験ツアーといった仕掛けで観光や街おこしに対する意識が高い。意見交換会では「特色ある地域の高校を失っていいのか」「子育て世代が地域にいなくなると活気がなくなる」と地域の衰退へつながりかねない状況を危惧した。
 ただ、西北地区の1~3学級規模・6校の志願・入学状況(16年度)をみると、1倍に達した高校はなく、金木高校は志望者も減少傾向で第1次志望倍率が0・36倍にとどまる。学校関係者からは、定員割れの現状から「存続に向け高校の“魅力化”を進めるべき」といった生徒に選ばれる“努力”を求める声も上がった。
 基本方針では地域校について、1学級規模の学校は募集に対する入学者の割合が2年連続して2分の1未満となった場合、募集停止に向けた検討を始める―といった“条件”が示されている。中里地区の男性は「このままでは金木、中里ともに無くなってしまう」と危機感を募らせ、小泊地区の男性も「特色という意味で地域柄、漁師になりたい子どもがいるがこの地区では水産関係は学べない。必要な教育環境を考えるべき」と要望する。
 呼び掛け人の斎藤真紀子金木高校PTA会長は「閉校を待つのではなく、何ができるのか積極的に議論を尽くしていくことが大切だ」と議論の加速を訴えた。
 今回の高校再編について、県教委は昨年9月から県内6地区ごとに意見交換会を開催。17年度に、第1期実施計画(18年度から5年間)が決まる。各地域でさまざまな声が上がる中、高校再編をめぐる問題は地域の声をどこまでくみ上げることができるのか、難しい局面を迎えている。

∆ページの先頭へ

Page: 1 2 3 4

当サイトでは一部、Adobe Flash・PDFファイルを使用しております。閲覧にはAdobe Flash Player・Adobe Acrobat Readerが必要です。最新のプラグインはアドビ社のサイトより無料でダウンロード可能です。

  • Adobe Flash Player ダウンロードセンター
  • Adobe - Adobe Reader ダウンロード