中国三亜×津軽 観光交流の可能性

 

2016/10/16 日曜日

 

  南国らしい、鮮やかな青色の海、白い砂浜、緑の色濃い山々。海岸線に沿って高級ホテルが立ち並び、高層ビルがひしめき合う街中は今なお建設ラッシュに沸いている―。

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「常夏の街」誘客躍起=上

 

高級外資グループが相次ぎ進出する三亜市東部にあるホテル。五つ星ホテルでも日本円で1人当たり1万数千円ほどで宿泊できる

 中国で唯一、熱帯気候に属する海南島。その先端に位置するのが三亜市だ。この常夏の街と北国・津軽との観光交流が動き始めようとしている。9月下旬、本県の行政、観光関係者が三亜市からの招待を受けて視察へ赴いた。狙いは双方の官民担当者同士の関係構築、それを踏まえて青森空港から三亜市へのチャーター便運航の可能性を探るものだった。
 海南島は九州と同等の面積を持つ、中国最大の島。経済特区に指定され、2010年に中国政府が国際観光島として大規模な観光開発に乗り出してからは爆発的な発展を遂げている、「中国のハワイ」の別名を持つ地域だ。島全体での人口が877万人(2011年末現在)。このうち三亜市には80万人近い人々が生活している。
 今回の視察は、平内町出身で三亜市の旅行会社・港中旅三亜旅行社有限公司の日本市場顧問である畑井又市氏がパイプ役となって実現。本県からは県と青森市の国際観光部門担当者、旅行会社代表、観光関係者らと本紙記者の9人が参加した。
 記者は畑井氏ら一団と、羽田からの便で上海を経由して三亜入り。台風の影響もあって東京で前泊しての早朝出発だったものの、到着は現地時間で午後9時すぎ。青森からの時間的距離は想像以上で、正直なところ現状での誘客は難しいとは感じ、だからこそのチャーター便なのだろうと思い知らされた。
 三亜鳳凰国際空港への着陸間際、滑走路に沿って誘導灯のように立ち並ぶビルが、すべてホテルだと気付き驚いた。明くる日に市内を巡ると、それも氷山の一角だったことに気付かされた。どこもかしこもホテルを意味する「酒店」の看板があふれている。初日の宿がある三亜市東部では高級ホテルと荒涼とした空き地が交互に広がり、目下新たなホテルが建設中。ここ10年でザ・リッツ・カールトン、ヒルトン、インターコンチネンタルなど外資高級ホテルグループが相次いで進出し、五つ星ホテルが乱立する様相には圧倒されるばかりだ。
 旅程のほとんどはホテル見学に費やされた。中国側で見てもらいたい、というのがホテルだったとのことだが、ぜいたくな造りのエントランス、オーシャンビューの客室、中には水族館様に仕立てたレストランもあるなど、なるほどどこも壮観である。ただ、目についたのは利用客の大半が中国人であったことだ。
 現在、海南島を訪れる観光客の9割は国内からという。高所得者が多い北部や沿岸地域からは、異国を感じながらパスポートなしで行くことができ、言葉も通じるリゾート地として人気があるようだ。ちょうど日本で言えば沖縄のイメージが適当だろう。
 ただ政府が国際観光島と定めてから6年、開発のペース、規模と見比べて国外からの観光客流入は思うように進んでいないようにみえる。だからこそ、順風満帆に見える海南島が旅客誘致に躍起になっていることが察せられる。
 スケールが違いすぎることもあるが、本県と比べると三亜市には、観光振興に懸ける貪欲さに末恐ろしいものを感じた、というのが正直な感想だ。

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自然や街並み美しく=中

2016/10/17 月曜日

 

三亜市街にある高層ホテルの客室から眺める早朝の景色。海岸線が弧を描き、右奥にはシンボルである鳳凰島が見える

 日本国内における中国のイメージは決して良いとは言えないだろう。記者も中国への渡航は未経験で、それゆえ「街にはごみが散乱している」「空が灰色」などと想像していたが、三亜の街並みは実に美しいものだった。街を象徴するのは、烏帽子を思わせる個性的な五つのビルが並ぶ人工島・鳳凰島視察ではそこにほど近いホテルに滞在したが、部屋からは鳳凰島を囲うように弧を描く海岸線と、高層ビルが林立する市街地が見渡せ、その眺めに渡航前の不安は完全に消えてしまった。
 ホテルの目の前に広がるビーチでは、朝には体操や太極拳などをする市民であふれ、夜には若者を中心にブロックパーティーが各所で展開されるなど、とにかくエネルギッシュ。市民だけでなく、スクラップ・アンド・ビルドによる開発のうねりが現在進行形で広がっている、街中の活況も相当なものだ。
 2012年にオープンし14年、市中心部から高級ホテルや別荘が集中する市東部へ移転した三亜国際免税城はその代表例の一つ。鳥の巣を思わせる独創的なデザインが目を引く建物は、移転前の10倍となる7万平方メートルもの売り場面積を誇る。300ブランド10万アイテムを取り扱う、アジア最大の免税店として昼夜、観光客を中心に人が途絶えることはない。
 免税城の周辺一帯は建設整備中の空き地。聞くと河川を運河にする大規模工事を進め、並行して複数の五つ星ホテルが着工している状態とのこと。想像を絶するほどの資本が投入されているその現場は、まさに世界のリゾート開発地の最前線と言えるものだった。
 ハード面での発展が目覚ましい一方、ソフト面はその速度に追い付いておらず、国際的な受け入れ態勢としては発展途上の感がある。おそらくは海南島と気候や環境が似ており、直近に観光したことのあったインドネシア・バリ島と無意識に比較していたこともあろうかと思うが、やはり成熟したリゾート地と比べると「ホテルでも英語の通じるスタッフが少ない」「観光地やホテル内の案内表記は中・英のみ」と、至らない点がどうしても目についた。
 逆に個人的に「これは」と感じたのは、本土からの観光客が子連れ主体のせいからか、視察したどのホテルもキッズスペースが充実しており、幼児~小学校低学年の子どもを飽きさせないサービスを提供している点だ。他のリゾート地はカップルや友人同士、子どもがある程度まで成長したファミリー客といった層をメインターゲットにしている中で、三亜には幼少の子を連れていこうか悩む子育て世代にうってつけの環境があると感じた。これからの行路整備が進めば、小さい子を持つ世帯にとって、三亜は南国リゾートのファーストチョイスになり得る可能性が十分にあるだろう。
 それこそバリ島と比べても海南島、三亜は海や街並みの美しさ、南国らしい植生の多彩さは勝るとも劣らない。むしろ地理的に海と山が同時に見渡せる地域が多く、自然の豊かさを感じさせるのは三亜の方だと思う。先に挙げた不満点も目をつぶれるというものだ。

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「パイプ」構築の好機=下・完

2016/10/18 火曜日

 

青森、三亜の行政、観光関係者が一堂に会し、相互の観光振興を探った交流会

 9月23日、青森からの一行が滞在中に三亜市内のホテルでは、現地関係者との交流会が催された。三亜側からは三亜市旅遊友展委員会をはじめ観光関係約15団体の代表者が出席、本県からは県観光国際戦略局の秋田佳紀次長らに一行を加えた約10人が参加した。
 同委員会によると、三亜市を訪れる旅行客数は2015年度で1496万人。16年度は8月現在で976万人と、前年比を9・21%上回るペースで推移している。大阪やシンガポールなど14の直行便が開通しており、今後は東南アジア、ロシア、中東などに拡大する見込みという。ここに青森からのチャーター便による誘客にも期待したいというのが三亜側の思惑だ。
 交流会では秋田次長が「交流を進めるためには互いの魅力を感じて行き来することで、まずはそこから始めたい」と述べた。詰まるところ観光交流とは旅客が一方通行では体をなさない。海南島は多くの旅行客が向かう観光地であるが、一方でインバウンドで見れば1000万人近くの人口を有するマーケットでもある。津軽がこの市場に対してどう働き掛けられるのかがカギと言えるだろう。
 交流の本質は互いにないものを求め合うこと。その点、本州最北端の本県と、中国の南端・海南島のさらに南端の三亜とは好対照だ。三亜に限らず熱帯地域の人々が日本に求めるものは大きく言えば四つ―独立峰、桜、リンゴ、雪。そのすべてが津軽にはある。また雪国である本県にとって南国・三亜は魅力的な観光地であるだろう。一行に加わり商品造成を検討する日本ツアーサービスの山田伸社長に問うたところ「チャーター便が開通すれば海南島の旅客は十分、青森には呼び込める」と応じた。
 問題は青森側からの送客だ。チャーター便を通す以上、青森から三亜に向かう旅客がいなければ旅行商品の造成にコスト的な負担とリスクが掛かる。これについて三亜側では行政による費用負担の準備があると明言しているが、本県側でチャーター便に係る補助金は現段階では用意されていない。山田社長は交流会で「北東北で唯一、国際線が就航している青森空港を絡めた商品を開発して3県の旅客を引き込みたい」と述べたが「現実的には(秋田、岩手からの青森空港への誘導は)厳しいものがある」と明かした。現状では行政の補助金などによるリスクヘッジがなければ民間での商品造成は難しいと言えるだろう。
 かつて日本から中国に向かう旅客は多かったが、領土問題をめぐる緊張や大気・土壌の汚染などネガティブな印象が影響してか2000年代から減少傾向となっている。今回の視察の仕掛け人である港中旅三亜旅行社有限公司・日本市場顧問の畑井又市氏は「なにより日本の方にもっと中国の人や文化を知ってほしい。日本の報道とは違うものがある」と強調する。イメージ改善が促されれば中国へのアウトバウンドも現状とは変わってくるだろう。
 中国からのインバウンドは年々増加傾向にあるが、旅客は大阪、東京ほかに集中しており、本県が受ける恩恵は小さいのが現状だ。地方都市において大口の市場と強固なパイプを築くことは至難だが、ここにおいて三亜が接近を試みているのは本県にとっては好機である。人口減による将来の経済縮小が懸念されている津軽だが、インバウンドはその突破口にもなりえる。まずは県民に三亜、海南島に目を向けてもらいたい。そして実際に旅客が行き来する環境が整えば、双方に追い風が吹くはずだ。

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