10代の1票-18歳選挙権-

 

新有権者の声=上

2016/6/21 火曜日

 

 選挙権年齢が「18歳以上」に引き下げられる今夏の参院選(22日公示、7月10日投票)で、10代の新有権者が初めて選挙に参加する。県内では約2万4000人の18~19歳が新たに投票権を得る見込み。選挙戦が加速する中、若者たちは何を思い、どう向き合うのか。本紙が取材した津軽地方の5人からは自ら調べて候補者の人柄や公約を吟味するという声は少なく、情報収集には受け身という現状。だが投票には前向きで、それぞれが1票の重さを受け止めているようだ。

長内優作さん〈18歳、黒石市。黒石高校3年。将来は金融関係の仕事に就きたい〉
下久保拓人さん〈19歳、十和田市出身。弘前大学教育学部2年。地域振興を目指したNPO活動に興味を持つ〉
葛西彩花さん〈18歳、青森市。青森東高校3年。復興の仕事に関わりたいと公務員を目指す〉
福井千裕さん〈19歳、弘前市。4月から介護施設に勤務し、現場の人手不足を実感している〉
佐藤春奈さん〈19歳、深浦町。みちのく銀行鯵ケ沢支店勤務。入行をきっかけに税金や物価に興味を持つように〉

 黒石高校3年の長内優作さん(18)は現在の政治や選挙について「米国では若者も熱狂しているけれど、日本は盛り上がることがなく、高齢者が行くものという風潮がある。この風潮を変えていくことが必要」と主張。また、昨年熱を帯びた安保法反対のデモ活動に対して「デモをやったとしても自民党の考えだけで決まってしまい、野党の力が通らなかった。対等な二大政党だったら面白いのに」と語る。
 初めての投票を控えて「争点がこまごましていてこれといったものがない。テレビを見る限りだと、自民党が出した政策に対して野党は批判しているだけ。具体的な対抗策を出してほしい」と厳しく指摘。若者の低投票率については「年金など年配者の政策だけでなく、若者のための政策があるといいと思う。奨学金だけでは大学に入れない人もいるので、将来を担う人への投資をする政策が欲しい」と注文する。
 若者が当事者だと思えるような政策を政治家が掲げることが大事だと考える弘前大学教育学部2年の下久保拓人さん(19)も「若者が投票に参加する環境は整っているので、後は気持ちの問題。自分も含めて政治家の名前と顔、党名しか知らない若者は多いと思う。どんなことをしているのか自分で調べなければならないという状況だが、調べたいと思う人は少ないのでは」。
 一方、「政策を調べたり、ニュースを見たり、親や周りの大人の意見を参考にして誰に投票するか決めたい」と話すのは青森東高校3年の葛西彩花さん(18)。高校1年生の時に、朝の自習時間で選挙を話題にした新聞のコラムなどを読み、感想を書くという活動があった。「日頃から授業の一環として取り組めば、政治や選挙にあまり興味のない人でも考えるきっかけになるのでは」と提案し、「公約で『やる』と言ってもなかなか取り組まない政治家が多いので、きちんと実現するべき。熊本地震もあったし、特に復興には力を入れてほしい」と話した。
 弘前市の介護職員福井千裕さん(19)は、最近世間を騒がせている政治とカネの問題に触れ、国民の税金を不当に使っている政治家が目立つ政界に疑念を抱く。だが、正直なところ「政策や公約を自分で調べるまではしないかもしれない」と話し、テレビの情報や演説など、自然に入ってくる情報を参考にしたいという。高校卒業後に公選法が改正されたため、模擬投票を体験する機会がなかったが、「これからの社会を考えれば、自分たちの意見を反映してくれそうな若い候補者に頑張ってもらいたい」と期待する。
 鯵ケ沢町で銀行員として働く佐藤春奈さん(19)は就職をきっかけに経済関係のニュースを重点的に見るよう努めており、今回の参院選では「特に経済政策などに関する公約はしっかりと見極めていく」と頼もしい。候補者の人柄もまだよく分からず、いきなりの投票で戸惑いも感じるが「1票差で結果が変わる可能性もある。きちんと投票に行きたい」。

 

 

 

 

 

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現場では=中

2016/6/22 水曜日

 

高校生を対象に行われた模擬投票=2月18日、弘前実業高校

 選挙で投票できる年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に引き下げる改正公選法が19日に施行され、全国で新たに約240万人の有権者が誕生した。ほとんどの新有権者は、22日公示の参院選(7月10日投開票)で選挙を初めて体験することとなる。若年層が政治に関心を持つきっかけとして期待が高まる一方、学校外での政治活動や選挙運動に事前の届け出を求めるか否かの議論が出るなど、主権者教育を担う教育環境の在り方が問われている。
 2015年6月に改正公選法が成立し、同年9月には文部科学省が選挙参加の意義や違反行為の例などを示した副教材の内容を公表。本県では同年12月ごろ、各校に副教材が配布された。また、県選挙管理委員会が高校生を対象に出前講座を実施するなど、参院選を見据えた準備が慌ただしく進められてきた。
 津軽地方では、弘前実業高校や弘前工業高校などの県立高校で出前講座や模擬投票を実施。弘前工業では全職員が主権者教育についての意識を共有できるよう、生徒と共に公開授業形式を取ったり、同校定時制では政策の比較方法を授業で取り上げたりした。しかし、現段階では投票の仕方やルール上の指導といった基本的な内容にとどまっている。
 文科省は同年10月、18歳選挙権の施行を前に、全国の県教委に対して高校生の校外での政治活動を認める通知を出した。ただ、留意点として、違法・暴力的な活動になる恐れが高い活動の制限、合理的範囲内での適切な指導を記している。
 この通知を受け、県内では弘前工業高校・同校定時制や五所川原工業高校などの県立高校15校が、事前の届け出を求める方針を示した。生徒の安全面を考慮しての方針とし、県教委も「危険な場面や危ない場所から生徒を守るという安全確保が根底にある」と説明。政治的思想を左右するものではないと強調し、その判断も各学校に委ねる考えという。
 学生が政治に接する機会の増加が予想される中で求められるのが、主権者としての自覚を促し政治への関心を高める主権者教育の充実だ。文科省が今月13日に公表した調査によると、高校3年生に公選法の仕組みを教えたり、模擬投票を実施したりした学校は94・4%に上った。県教委によると、県立(特別支援学校高等部を含む)・私立高校のうち、出前講座や模擬投票を実施したのは昨年度が38校、今年度は14校だった。
 県教委の管轄外である私立高校では、戸惑いも多い。弘前学院聖愛高校で公民科を担当する成田菜々子教諭は、主権者教育について「情報共有がほぼなく、手探り状態」と漏らす。今年2月に3年生を対象に実施した模擬投票の様子からは「選挙が近づき機運が高まった中で実施できたのは生徒にとっても刺激になったようだ」と話すが、参院選を皮切りに若年層の関心を得ようとSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の使用が高まることを踏まえ、「今回の18歳選挙権の施行を通じて、大人のモラルが一層問われることにもなるのでは」とも指摘する。
 今後必要になるのが、各高校での指導内容の深化だ。県教委は今年2月、県選管と合同で県立・私立の校長と教頭を対象にした研修会を実施するなど、支援体制の充実に力を注いでいる。県教委の担当者は「難しく考えず、関心を持った部分に焦点を当てて指導してほしい」とし、主権者教育と投票が生徒個々の成長につながることに期待を寄せる。

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有識者に聞く=下・完

2016/6/24 金曜日

 

「投票をゴールとせず、有権者として政治家の働きを見ていくスタートにしてほしい」と力を込める宮﨑教授

 参院選が22日に公示され、国政選挙における10代の有権者の政治参加がスタートした。県選挙管理委員会が昨年度県内の高校で実施した模擬投票に、教え子の大学生らと共に協力した弘前大学教育学部社会科教育講座の宮﨑秀一教授(63)に、新有権者として持つべき心構えと主権者教育の在り方を聞いた。
 社会科の教員を目指す学生らと共に模擬投票という主権者教育の現場に触れた。選挙の仕組み、投票の仕方は指導されていたが「もう一歩二歩掘り下げた教育が必要」と感じた。架空の政党名やマニフェストを使った選挙戦だったが、対象は高校生。「リアリティーを出さなければ実施する意味がない。何のために投票するのかが分からない状態だと、本当の意味の主権者教育にはならないのでは」と指摘する。
 2013年参院選、14年衆院選で本県投票率は全国最低で、若者の投票率の低下も問題視されている。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられたことで、若者の選挙への関心が高まるのではと期待される一方、新有権者たちからは候補者の選択に対して戸惑いの声も多い。そんな新有権者に対して宮﨑教授は「投票に行くことはゴールではなくスタート。もしベストな選択が分からないから棄権するというのであれば、ベターであればいい。新聞を見るなり、自分が知る限りで投票してほしい」と促す。その上で「もし自分が投票した候補者が当選したら『よかった』で終わらず、その当選者が議員としてどんな働きをしていくのかを有権者として見ていく責任がある」と力を込める。
 先ごろ、社会科の教員らが出席したシンポジウムに出席した際、中学・高校の教育が分断されていることに気付いた。今後ますます重視されるであろう主権者教育について「付け焼き刃や一過性なものではなく、継続的な取り組みが必要」として、中学・高校の連携の重要性を強調する。
 これまでも中学校の社会科では選挙について学ぶ機会はあり、教科書上の主権者教育は実施されているが、近年注目を浴び始めたのが「政治的中立性」という言葉。教育基本法の中で原則が記されているが、宮﨑教授は「現場が過剰反応している節がある」という。「政治自体にアンタッチャブル(触れてはいけない)なムードがあるが、それでは本末転倒。少なくとも高校生には議論をする場や調べる機会を与えて、多様な意見があることを学ばせるべき」と話す。
 18歳選挙権に伴い、本県では15の県立高校が校外で行う生徒の政治活動に事前の届け出を求める方針を示している。この件に関しては「『政治的活動だから』というのは理由にならない。生徒が萎縮を感じた時点でまずいのでは」と考える。届け出を求める学校の多くが、生徒の安全確保を理由に挙げているが、同じ18歳の社会人が政治的活動を自由にしている一方で、「なぜ高校生だけが制限されるのか」と疑問を呈し、「何でも学校が責任を追及される文化、風潮が背景にあるのでは」と指摘する。「届けさせたからといって、教師が生徒に同行するわけでもないし、学校のアリバイのためとしか思えない」と厳しい見方だ。
 今夏の参院選で行く末が注目される18歳選挙権。宮﨑教授は主権者教育は教科に関係なく全ての教師が関わって取り組まれるべきだとし、「まずは投票することで一歩を」と今後の行方を見守る。

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