青函新時代 開業まで1カ月

 

企業進出 双方で拡大=5

2016/3/3 木曜日

 

函館の有名観光スポット、金森赤レンガ倉庫。北海道新幹線開業により人や資源の行き来が増え、青函両地域の企業進出による津軽海峡経済圏の発展が期待される

  北海道新幹線の開業により発展が期待される「津軽海峡経済圏」。本県、道南地域間の移動時間が短縮するメリットから双方で企業進出の動きが活発化する―と予想される。慎重な見方もあるものの、現在、函館に進出している本県企業や本県で新たな挑戦をする函館市の法人は「人や物の行き来は確実に増える。(企業進出は)徐々に進むだろう」と分析する。
 弘前市に本社を置くイマジングループは、2004年から函館市で湯の川グランドホテルを経営。12年にはイマジン・ホテル&リゾート函館としてリニューアル。温泉旅館のイメージから異国情緒のあるリゾートホテルに生まれ変わり、年間を通して多くの宿泊客が訪れている。
 「進出の際に銀行などがしっかり支援してくれたので、大きな不安はなかった」と話すイマジンの野崎小五郎副社長。今回の開業について「青函が1時間で移動できるのは非常に大きい。観光、宿泊業をはじめ、あらゆる分野で事業拡大できる可能性は十分にあるのでは」とみる。
 湯の川グランドホテル時代から支配人を6年務めた中村直幹人事企画室執行役員室長は「開業と同時に企業進出が急激に進むことはないかもしれないが、函館をはじめ北海道の資本が青森に入ることは確実に増える。人や物の行き来が互いに活発になることで企業進出も徐々に進み、青函が発展していけば」と期待する。
 インターネットカフェや飲食店を経営する弘前市の「グローバルノースジャパン」は昨年、函館市に食べ放題の焼き肉店「焼き肉きんぐ函館桔梗店」を出店。客足は順調で、今後はとんかつ専門店「かつや」の出店も予定しているという。
 「店の管理面からも新幹線により弘前から函館に2時間で行けることは大きく、出店を決めた」と話す松宮英寿常務取締役。函館進出について「青函は昔から交流があり、青森銀行やみちのく銀行の存在もあり、青森だから、弘前だからというように毛嫌いされることはなかった」とし「ほかの分野、企業が進出しても受け入れられやすいのでは」と話す。
 函館市からも各種企業が本県に進出している。同市の医療法人雄心会が新青森駅そばに建設中の「(仮称)新青森病院」は12年に事業を継承し、グループ法人化した青森市の2病院を統合、17年3月完成を予定する。
 「周辺からは開院を期待する声が大きい」と話す雄心会青森新都市病院開設準備室の狩野利夫室長。「移動時間が半分になることで午前中に函館、午後に青森で手術をすることも可能になる。非常勤医師にとっても駅を降りてすぐに病院があるのは大きい」とし「ほかの分野でも新幹線というツールを使うことで、できることが増えるのでは」と話す。
 狩野室長の名刺には、本県と道南地域の地図があり、津軽海峡部分には「青函圏交流」の文字が印刷されている。「建設は地元業者に頼んでおり、医療機器は青森の業者と取引する予定。函館で行っている野球教室をこちらでも検討しており、魅力ある病院として早く地元に溶け込みたい」と力を込める。

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民間連携 高まる機運

2016/3/4 金曜日

 

クラスター会議を通じて連携を深める弘前と函館。官民挙げた盛り上げを見せる「ひろさきナイト」(左、弘前商工会議所提供)
六花酒造がマツマエを使って醸造している日本酒ガスバリ

 北海道新幹線開業に合わせた青函交流が各地で進む中、弘前、函館両市では民間企業・団体同士による「民・民」の結び付きが独自の事業を生んでいる。弘前商工会議所、函館商工会議所、みちのく銀行の3者により津軽海峡観光クラスター会議が設立されるなどした2011年を契機に、さまざまなイベントや商品の共同開発などが打ち出された。地元の強みを生かしながら相手の魅力を取り入れる、相互協力の在り方がその特徴。ここ数年の進展について関係者は一様に手応えを得ている。
 クラスター会議設立を機に、両商議所では観光を核とした経済交流の拡大に本格的に乗り出した。函館の冬のイベント「はこだてクリスマスファンタジー」内では11年から弘前をPRする「ひろさきナイト」を毎年開催巨大アップルパイの振る舞いでは毎年長蛇の列ができるなど、弘前独自のコンテンツが人気を呼び、この4年で定着を見たと言える。
 互いの持ち味を生かした商品造成として象徴的なのが日本酒「ガスバリ」。函館の食に関する同業異種団体「クラブ・ガストロノミー・バリアドス(通称ガスバリ)」が復刻した函館産米「マツマエ」を原料に、弘前市の六花酒造が醸造した。クラスター会議が2者の橋渡しとなり、道南にはない酒蔵という資源を弘前が補完した格好だ「試作品を作ってもらってからはトントン拍子にことが運んだ。弘前からの呼び掛けがなければ、日本酒ガスバリは生まれなかった」と話すのはガスバリ事務局長の田村昌弘さん。13年に第1号を世に出し毎年、数量限定醸造を続けている。
 「函館市場を意識してアンテナを張っている企業はここ数年で道南との連携や進出を進めている」と、弘前商議所で函館連携を担当する木下克也まちそだて課長と土岐俊二総務財政課長。海峡をまたいだ民間連携の先駆けとして、クラスター会議を通じた会員企業と道南企業とのマッチング、物産展への相互出展などを手掛けている。田村さんも「軒先だけの付き合いでなく、互いのことを知った仲となったことから格段に連携事業が増えた」と、踏み込んだ関係づくりが奏功していることを実感する。
 函館・道南との連携を強めたい県内企業。一方で函館側の企業マインドは一様に外向きだとは言い難い。函館商議所の永澤大樹・新幹線函館開業対策室長は「距離感が近くなり確実に経済連携が生まれている」としながらも「道南は“半島の島国”。クラスター会議を通じて意識が変わってきている部分もあるが、域外企業と連携しようという意識はまだまだ強くない」と語る。事実、ここ数年の弘函共同事業の大半は弘前側からのアプローチによるものだ。
 新青森―函館北斗間の高料金も経済交流を委縮しかねない懸念材料。課題含みで青函の経済連携は発展途上にあると言える。しかし、道南企業が求めるものに対し、強みを持つ津軽の企業が即応できる―その窓口が確立している意義は間違いなく大きい。「函館との連携を『交流』の域からもう一歩踏み込んでBtoB(企業間取引)に近い形に進展できれば」と土岐課長。永澤室長も「単に開業に合わせたお祝い的なものでなく、(開業効果が薄れる)5年後を見据えた連携の在り方を詰めていきたい」としている。

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県内各大学 魅力PR=7・完

2016/3/5 土曜日

 

北海道新幹線開業を契機とした取り組みを進めている県内各大学。写真は今年1月に函館市で開かれた弘大食料科学研究所の青函フルコースサミット

 北海道新幹線開業で、新函館北斗―東京間は最速4時間2分でつながる。現行の函館―東京間と比べ2時間以上の短縮で、人の往来は活発化し、体感的にも北海道がより身近な存在になる。開業を契機に、県内大学でも受験生の獲得や函館市内の大学との連携事業の充実化などに向けた動きが加速。大学関係者は「大学選びは交通の便より教育内容が優先される」と受験生の他地域への流出を危惧していないが、「首都圏の受験生が函館に目を向けた時、それまで知らなかった青森の大学に気付き、選択肢に入れる可能性もある」などの見方も示し、特色あるカリキュラムによる大学の魅力アップにも力を入れている。
 弘前大学は、北海道出身者の学生が3割を占めており、一般入試の試験場を札幌市に設置。弘大における北海道エリアの入試広報の意義は大きい。
 北海道では国公立の総合大学が北海道大のみであることから“北海道に一番近い総合大学”として魅力を発信。大学の説明会も高校ごとではなくエリアごとに変更し、道内の生徒に幅広くアピールしている。
 さらに弘大では昨年10月に入試分析や広報戦略の企画などを行う教育推進機構アドミッションセンターを入試課内に開設。北海道をはじめ全国に向けたPR戦略などを練っている。
 専任教員である小暮克哉助教によると、青函トンネルが無い1950年卒の旧制弘前高校生徒の出身別割合は、現在の弘大生の割合とあまり変わらず「交通機関の発達による人の流れの変化は高等教育機関では歴史的に見られず、新幹線開業も注視は必要だが大きな影響はないのでは」と考察。伊藤成治教育担当理事は「交通の便より、自分の将来や大学で勉強したいことで進学先が選ばれるだろうし、そういうことで選ばれる大学でなくてはいけない」と、カリキュラム充実化の重要性を指摘する。弘大では春から教養教育を強化し、課題解決型学習の地域学ゼミナールを開講予定だ。
 北海道新幹線開業を見越した取り組みは弘大の食料科学研究所でも2年ほど前から具体的に動き出した。食の津軽海峡周遊コースや青函両方の食材を使ったグルメの開発を通じた地域経済の活性化を構想。函館市の野又学園函館短期大学付設調理製菓専門学校などと連携協定を結ぶなど、青函の連携体制を密にしている。
 青森公立大学では2014年に函館市の公立大・はこだて未来大学と学術交流協定を締結。文系の単科大である青公大と、理系の単科大であるはこだて未来大が交流を通じて、文系・理系的発想など互いに無いものを補い、刺激し合うことで両大の教育内容の充実化を図る考えだ。昨年11月には同市で両大の学生がワークショップを通じて交流を深めるなど、取り組みを進めている。
 香取薫学長は「大学は学部レベルで考えると専門よりも基本的な考え方を学ぶところ。互いの良い面を補い合って教育につなげたい」とし、単位互換や教職員交流も今後視野に入れているとした。
 また、香取学長は「首都圏の私立大は地方に目を向けていて、受験生誘致のためにさまざまな施策を打ち出す動きをしている。道南、北東北の大学はお互い受験生を取り合わず、連携を図ることが重要。大学選びに関しては各々の大学が特徴を出して運営し、それを世間が評価するだけ」と、地方大学の連携強化を強調した。

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