呼び込む街に 交流人口・移住者増の新視点

 

2015/11/2 月曜日

 

 地方にとっては喫緊の課題である人口減・過疎化に対し、移住定住、交流人口拡大の方策が求められている現在。その中で新たな切り口を提案する取り組みを紹介する。

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仕事旅行=上

 

(左から)中村さんと青木さんに弘前シードル工房kimoriなど弘前の見どころを案内する西谷代表。仕事旅行はこれまで足を運ばなかった層を誘客するきっかけになり得る

 9月下旬、初めて弘前市を訪れたという千葉県在住の青木沙緒里さん(24)は同市の旅行会社・たびすけが企画したツアーに参加していた。市りんご公園や岩木山などを巡り、夕方には土手町の街歩きと、着地型旅行を得意とする同社のプランを1日かけて楽しんだ。しかし青木さんが弘前を訪れた理由は観光ではない。実はこのツアーは、同社の仕事ぶりを体感することを目的にした「仕事旅行」であった。
 ツアーは仕事旅行社(本社東京都)が仕掛けたもの。仕事旅行とは普段とは違う仕事に触れ、その仕事の醍醐味(だいごみ)を体感できたり、裏側を垣間見ることやプロフェッショナルとの交流などを売りとする旅行商品。知的好奇心を満たし、楽しみながら経験や自己研さんを積む「自分磨き」に関心のある、20~30代の若年層を中心に人気を集めている。
 青木さんが参加したきっかけは、企業人事を担当する上で障害者や外国人とも接することから、バリアフリー観光をうたうたびすけの仕事ぶりが気になったことからという。この日のツアーでは、たびすけの西谷雷佐代表から地域の魅力や課題を踏まえて、どう同社が旅行商品を開発しているかなど説明を受け、その後には市りんご公園で巨大アップルパイの焼き上がりや地シードルを楽しんだり、旬の嶽きみを味わったりした。その中で同社の旅行商品の狙いや価値を体感。「今回のことがなければ弘前に来ることはなかったと思う」と話した。
 今回のツアーは同市出身のプランナー中村芽理さん(39)が西谷代表に打診して実現。10月以降も継続して開催される予定で、今後はこれまでの取り組みでは訴求できなかった青木さんのような層を、観光客として呼び込むことができるかもしれない。それだけでなく仕事旅行は、全国の自治体が躍起に取り組んでいる移住施策についても新たな可能性を示唆する「これまで足を運ばなかった人が弘前を訪れ、ファンになる。その先にあるのが移住では」と西谷代表仕事旅行で若年層が地域を訪れ、交流人口が増えることは移住施策への追い風となるだろう。
 また移住・定住希望者にとっての壁となる「働き口の確保」についても一つの取っ掛かりを見いだすことができる。本県の最低賃金時間額は695円(2015年10月16日発効)と、トップの東京都に比べれば200円以上の開きがある。その差を埋めることは現実的ではないが、仕事の面白さややりがいといった別の価値で幾分か補うことはできなくはない。その地域の仕事に対して興味を持ち、実際に足を運ぶツアー参加者であれば、なおさらそのような「見えない価値」には敏感であろう。仕事旅行は自治体が熱を入れる就農支援や農家体験ツアーとは違う形の「生業(なりわい)」を、民間が提示していくという側面もあると言える。
 西谷代表は「仕事旅行は地元の職業に興味を持ってもらうことにつながる。『仕事』というフィールドを使った、移住につながる新しいケース。それを行政ではなく民間で、企業間事業としてやっているのが面白い」と期待を込めている。中村さんは「仕事旅行はリクルートのためではない」と前置きしつつも「例えば『この職業になろう!』という切り口で企画を作ってもおそらく参加者は引っ掛からない。その意味でのぞいてみる、体験してみる、というスタンスの仕事旅行は『魅力的な場所で自分の能力を発揮したい、何かのきっかけがあればそこへ行こう』と思っているような人に対しての“何か”になるのでは」と語る。中村さんは今後も弘前の職場を舞台にした企画を展開していく意向だ。

 

 

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