DVと向き合って 尊重し合える社会を目指す

 

2015/1/26 月曜日

 

  DVに関する相談は全国で増えている。被害者のほとんどは女性で、内閣府の2011年の調査では、3人に1人の女性が夫からのDVを、10人に1人は交際相手からの暴力(デートDV)を経験していた。県内でも県警などへの相談が増加。県は、デートDVの予防活動などに取り組んでいるが、DVに対する知識が少ないために被害や加害の自覚がなく、深刻化するケースもある。被害の実態や被害根絶を目指す取り組みを取材した。

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恋愛から支配へ=上

 

被害者だった外崎さんは「DVが広がらない方向に持っていきたい」と思い、支援に携わっている
ウィメンズネット青森では、電話などで相談を受け、DV被害者を支援している

 「常に何かに追われていて、どこにいても気が抜けなかった」。県外に住みながら本県でドメスティックバイオレンス(DV)の被害者支援に携わる40代の外崎あかりさん=仮名=は、結婚後、元夫からの言葉の暴力に耐えていた。結婚前は「熱愛だった」と外崎さん。友人らからうらやましがられることもあった。だが関係が密接になると、元夫の態度が変わっていく。「寛大だったところに、いろいろな制限をかけてくるようになって」。だが元夫の行為がDVだと気が付かず「何か言われると、私が悪いと思い込んでいた」。
 高校の先輩だった元夫。社会人になってから再会し、交際を始めた。妊娠をきっかけに結婚。2人の娘に恵まれた。交際している時、元夫は残業で遅くなる外崎さんを会社まで迎えに来るなど、愛情を注いでいた。だが残業が多いことを嫌がるようになる。結婚前は仕事を続けて良いと言っていたが「夜が遅い仕事は駄目だ」と反対するなど、態度が変わった。束縛され、少しずつDVが始まった。
 「(DVという)言葉は知っていたが、自分には絶対に起こらないと思っていた」と外崎さん。自分が選んで結婚した人という気持ちもあり、責められても耐えた。つらい時は、悪いところばかりではなく、良いところもあると考えた。
 だが結婚して15年目、殴られ、病院に行くほどのけがを負ったことをきっかけに、離婚を決意。離婚のためにインターネットなどで調べているうちに、自分がDV被害を受けていると気が付いた。
 離婚調停で子どもの親権は父親へ。調停員のDVに対する理解や知識がないと感じた。離婚をすれば気持ちが晴れると考えていたが、何かに追われているような感覚が抜けるまで時間がかかった。
 娘が成長し、元夫の暴力が娘の心に大きな影響を与えていたことが分かった。精神的な障害を抱えながら生活している娘。「もっと早く離婚していれば」とも思う。 DV被害者支援などに取り組む、青森市の「パープルリボンまゆら」に相談し、夫との離婚が決まった30代前半の坂口りかこさん=仮名=の夫は、わめき散らすタイプではない。言葉遣いは上品で、物腰も柔らかい方。家でも大声を出すことはなかったが、夫が望む態度を取らなくてはいけなかった。「彼が良しとする行動をしていると機嫌が良く、仲良くできる。でも思うように振る舞わなければならない息苦しさがあった」。
 友人に会うことを制限され窮屈だったが、寂しがり屋で嫉妬深いだけだと思っていた。「束縛は強いと思ったけど、愛情表現からだと思った。結婚したし、そういうものかな」と我慢。「思いやりのある行動を取っていれば、夫も思いやりが出てくるかも。いつか分かってくれる」と考えた。だが息苦しさやつらさが募り、仕事ができなくなっていった。
 友人への相談をきっかけにインターネットで調べ、DVだと分かった。「読めば読むほど、自分と一緒」。夫に、精神的DVであると伝えた。夫は改善に向けて取り組むと言った。「変わるかも」と期待したが、結局、夫は何が悪いのか分かっていなかった。
 2人は、DVについて身体的暴力というイメージを持っていた。被害を受けていることに気が付かず、耐えていた。坂口さんは「若い時から、DVについての正しい知識が持てれば良い」と願う。外崎さんも「子どものうちからDVについて知ることが大切。DVをなくすために、一人ひとりの違いを認め合える社会にしたい」と話し、被害根絶のために活動するつもりだ。
 「被害者が、暴力を受けていることに気が付けない」。県内で配偶者らからの暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)の被害者から相談を受けるなど、支援に取り組む青森市のウィメンズネット青森の佐藤恵子理事長はこう説明する。精神的な暴力が多く、長い人は20年以上も耐え、悩んでいる。だが佐藤理事長は市民らから「被害者はなぜ逃げないのか」「なぜ暴力を振るう人と結婚したのか」といった質問を受けることも。DVへの理解が広がっていない証しだ。言葉は知られていても、実態は知られていない。
 DVの加害者は暴力的なタイプではなく、外づらが良い人も多いという。誰にでも暴力を振るうのではない。最初から暴力があるわけではなく、最初は好きになってもらおうと優しくもある。だが恋愛関係となって親密さが生まれると、加害者は「好きな人だから、妻だから思い通りにして良い」と考える。「好きだから言っている」「こう言うのはお前にだけ」と話し、支配関係を作ろうとする。
 「ご主人が何を言っても、あなたは悪くない」。ウィメンズネット青森に相談を寄せる女性に、スタッフはこう語り掛けるという。「夫の奴隷のようだった」「自分自身で考えることが許されなかった」などと話す被害者夫や彼におびえ、機嫌を損ねないように毎日を過ごしたり、自分が悪いと思い込まされていたりする。暴言を受け入れ、相談できずに抱え込んでしまう。
 さらに被害者や加害者が気が付けない理由には、男女間ゆえの難しさもある。DVに関する県警への相談が増えているが「相談してきても、これ以上関わらないでくれと言う人もいる」と関係者は明かす。佐藤理事長も「一度夫と離れても、心配になるなどして戻ってしまう被害者もいる」と指摘。脅す一方で、優しくなることもあり「このまま、優しいままでいられるのでは」と期待し、耐えてしまうこともある。
 佐藤理事長は「一人でも多くの人が、DVについて理解することが、防止や根絶につながる」と訴える。

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