選挙とカネ 平川市長選違反事件

 

2014/12/29 月曜日

 

 前市長のほか議員20人中15人が逮捕されるなど前代未聞の事件となった1月の平川市長選をめぐる選挙違反事件。逮捕された市議のうち9人はすでに有罪判決が言い渡され、辞職・失職。残り6市議は起訴内容を否認し、争っている。大川被告と実行役とされる水木被告は来年2月に判決が言い渡される。これまでの公判で「津軽選挙」という、あしき風習が根強く残ることや議員の規範意識・倫理観の乏しさがあらわになった。市長選から間もなく1年。公判で語られた市議らの証言や、相次ぐ市議の逮捕で揺れる議会の動きを振り返る。

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市長室で買収金額相談=上

 

 「立候補しなければよかった」。前市長の大川喜代治被告(69)は公判で、検察官に、逮捕されるような事態を起こさないためにどうすればよかったかを尋ねられ、後悔の念を口にした。
 2013年6月の市議会定例会では2期目へ前向きな意向を示していたが、7月下旬ごろには当時の県議で現市長・長尾忠行氏の出馬のうわさがあり、大川陣営は前回市長選でも名前が浮上していた長尾氏の出馬だけに、強い危惧を抱かざるを得なかった。
 大川被告は有力支援者の水木貞被告(67)と13年8月2日ごろ、市役所の市長室で市議の買収を打ち合わせた。水木被告から「10万円、20万円、30万円のどれにするか?」と問われたことがあり、大川被告は「あなたに任せます」などと答えた。その結果は分からなかったが、後から新聞で20万円だと知り、「任期4年のうち1年につき5万円の計算で、一つのお礼」として妥当と感じたという。「会合を設け議員のケアをしてこなかった」(大川被告)という同被告にとって、強固な後援会組織を持つ長尾氏は脅威。勝つためには「議員をまとめる必要があった」(水木被告)。支援を確たるものにするため自らの派閥にも買収金を用意した。それも、前回より多い金額で。
 水木被告はバス会社での稼ぎなど多額の資産を所有していた。二つ目の福祉施設の建設をかねてから考えており、「親戚の大川さんが当選すれば情報を得やすくなる」(同被告)といったメリットがあった。今回の選挙で陣営に約800万円も支出。資金面で手厚くバックアップし、買収金を渡す実行役も担った。
 公判で検察などは水木被告の資金源や大川陣営に第三者からの資金提供の有無を追及していた。当初「答えられない」と言い続けてきた水木被告だったが「若干あった」と認めた。だが「迷惑が掛かる」と詳細は語らなかった。
 県警は10月以降、平川市発注の工事をめぐり不正があったとみて、弘前市の業者から任意で事情を聴き、両被告の関与の有無を捜査していた。検察は追起訴の可能性に言及してきたが、12月25日の両被告の論告求刑公判では何も語らずに終わった。ある捜査関係者は「公選法違反についての捜査は終わり」としたが、発注工事の不正疑惑については「現時点で何も言えない」と語った。

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市議あしき風習に慣れ=中

2014/12/30 火曜日

 

平川市長選 選挙違反事件の構図(クリックで拡大)

 これまでの平川市議らの公判では「選挙の前に(金を)返せばよい」、「自分の所に置いておくのが怖く、早く渡したかった」などモラルを欠いた発言が多く聞かれた。“津軽選挙”というあしき風習が慣習化し、市議の感覚をまひさせたとも受け取れる。
 前市長大川喜代治被告(69)から市議の買収を任された水木貞被告(67)は、市議会最大与党会派の平新会に所属していた山田尚人元市議(60)と齋藤剛元市議(66)を通じ、当時は同じ会派に所属するも現市長長尾忠行氏支持に傾く可能性があった市議の買収を依頼した。2人は長尾氏の出馬により会が分裂することを恐れ、実行。自らも買収金を受け取った。公判で山田元市議は「自分の所に置いておくのが怖かった。早く渡さなければと思った」、齋藤元市議は「会派を壊したくなく、何とかとどまってほしかった」と理由を述べた。しかし、裁判官は判決で「平新会の分裂回避に熱心となり、何らちゅうちょなく犯行に加担した。有権者軽視の態度と非難されてもやむを得ない」と一蹴した。
 2010年の前回市長選で大川被告と戦った小笠原勝則元市議(61)には、前回市長選で多くの票を獲得したことから金額は「別格」(水木被告)の100万円が渡された。受け取った理由について小笠原元市議は「断り切れなかった」「選挙の前までに返せばよいと思った」と述べ、規範意識の低さが露呈した。裁判官が「津軽地方で通用するかもしれないが、全国からみればばかにされる」とたしなめる場面もあった。
 水木被告は「津軽選挙は(旧平賀町長を務めた)おやじの時からあった」と述べ、前回市長選でも市議を10万円で買収したことを自ら語った。大川被告も「平賀、尾上、碇ケ関、大鰐町では選挙のたびに(買収が)行われていると耳にする」とあしき風習に触れた。公判中では起訴内容を否認している古川敏夫被告(69)が「選挙の買収金で10万円は安すぎる」「足代にしかならない」といった驚きの発言をしたこともあった。
 大川、水木両被告は起訴内容を認め、25日の論告求刑公判では「平川市の名誉を傷つけた」「軽率な行為で有権者に迷惑を掛けた」とそれぞれ反省の弁を口にした。両被告の弁護士は「選挙に絡んで金が動くことに慣れている平川市議にとって、現金供与や申し込みは政治活動に何ら影響を及ぼさなかった」として情状酌量を求め、両被告の犯行を「泥水の中に泥を投げ込んだようなもの」と例えてみせた。
 起訴された市議15人のうち、起訴内容を認めた9市議は有罪判決が確定。完全否認している市議4人と受け取り額が違うなどして否認する2人の公判は年度内には判決が下される見通し。大川、水木両被告の判決は来年2月に言い渡される。

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議会と市民 感覚にずれ=下・完

2014/12/31 水曜日

 

平川市議会は、市民の声にどう応え、再生と信頼回復を図っていくのかが問われる

 「こんなんじゃ平川市は再生できない」。平川市議会12月定例会最終日、議会を傍聴していた市民は怒りの表情で足早に議場を去ったこの日議員から提出されていた逮捕議員の報酬停止案と、議員報酬削減案の2議案が否決された。報酬削減案は9月定例会に続き2度目の否決。市民と議会の間にある大きな感覚のずれと危機感の差があらわになった。
 ぽつぽつと空席が目立つ議場。1月26日の市長選投開票を終えた翌2月から断続的に続いた計15人もの議員の逮捕で、全議席が埋まることはなくなった。6月定例会は定数20人中12人のみの出席で、開会前には本会議成立自体が懸念されるほどだった。
 7月には辞職、失職議員多数により補欠選挙が行われた。8人が新たに選出され、議会は再生を目指した。
 9月定例会、補選で当選した新人議員が動いた。原田淳議員と石田昭弘議員は、5年間議員報酬を23%カットして総額1億円削減し、再度実施の可能性もある補選2回分の費用と、まちづくりや福祉向上に充てるための条例案を提出したが「金額の算定方法が正しくない」「改選時の当選議員にも影響が及ぶ5年間という期間は問題」などの意見もあり、賛成5、反対7で否決された。
 12月定例会には、逮捕議員が多く所属する第1会派・拓新会が、新たな議員報酬削減案を提案。補選に掛かった費用約1700万円を賄うべく、議員報酬を任期満了の7月まで月額50%削減する内容だったが、賛成7、反対10でまたしても否決。また、原田議員らが中心となり提出していた逮捕議員の報酬支給を一時停止する条例案も賛成8、反対9で反対票が上回る結果となった。
 議員から異論があった箇所を練り直した報酬削減案も、市民感情を考慮し出された報酬停止案も否決した市議会。「金で解決できる問題ではない」「もっと慎重な議論が必要」などと反対した議員からは声が上がった。その手段は別にしても、議会再生に向け一枚岩になれない姿がある。
 現在も公選法違反(被買収)の罪で6人が市議在職のまま公判中。金自体受け取っていない、金は受け取ったが趣旨・金額が違うなど、全員が起訴内容を否認し争っている。年明けには判決公判を控える議員もおり、仮に今後1月末までに欠員が4(2月以降は7)になれば、再び補選を行う必要性が生じる。12月定例会では、これを案じた田中友彦議長が「再補選になるようならば、議会の自主解散を」と議場で呼び掛ける一幕があり、市民からも出直し選挙を求める声は多い。再生・浄化に向けた意志をどう市民に示し、行動していくのかが問われる。
 市民からも「買収は昔からあったこと」などの声も聞かれるが、今回の事件を教訓に、一層厳しい監視の目を光らせる必要がある。

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