暮らしは今 12.14衆院選

 

2014/12/8 月曜日

 

 衆院選は、14日の投開票まで1週間を切った。各候補者の舌戦も日に日に熱を帯びているが、有権者は政治に何を求めているのか。消費税、安倍政権の経済政策、社会保障、農業政策といったテーマで津軽地方の有権者の声をまとめた。

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消費税=1

 

かつて黒石一のにぎわいを誇った横町。平日の風景から当時を想像することは難しい=11月26日

 4月に8%へ引き上げられた消費税。景気回復の兆しすらない地方には、収入が増えず家計を引き締めたい消費者、仕入れ値上昇などの追い打ちも受ける商業者の姿がある。かつて南津軽最大の商都だった黒石市も、往時のにぎわいはない。衆院選の結果次第では10%への引き上げが現実的になる。「所得が向上したなら分かるが、現状では厳しさが増すだけ」という声が、消費者、商業者双方から聞かれる。
 増税から半年以上経過したが、倹約傾向は変わらない。主婦須藤孝子さん(73)は「食費を削るわけにいかず、みんなチラシを見て賢く買い物している」と話す。主婦駒井佳子さん(81)は「私たちが身を切らねば。次世代にツケを残せない」と理解を示すが「まず政治家が身を切ること」が前提。再増税時期は「所得が増えてから」を望む。
 では商店街はどうか。「さほど影響はない」。こみせ通り商店街振興組合の鳴海文四郎理事長(74)の言葉は意外なものだった。しかし、これには裏がある。人口減や郊外店進出は、増税よりも深刻で「そもそも物が売れない。20年も前から『地元相手に商売していては駄目』と言われてきた」とする。
 黒石一のにぎわいを誇った横町も、店舗数は最盛期の3分の1以下。横町向上会の工藤勤理事長(46)によると、5%になった時には、客から「それぐらいまけて」と言われたが、今回はそれすらなく消費者の「諦め」を感じさせた。自身は靴小売りであり、天然ゴム長靴「ボッコ靴」メーカー。「農家のためにボッコ靴を復活させた9年前と比べ、原料価格は約2倍。しかし価格を上げると、減収の農家に買ってもらえない。作る意味がなくなる」と悩む。
 「アベノミクスを失敗とは言い切れない。経済は効果が出るまで時間がかかる」とする黒石商店街協同組合の三上知則理事長(57)。しかし現状では「景気が回復しても年金は増えない。高齢化著しい黒石は、引き上げの影響が大きい」と判断せざるを得ない。後継ぎになり得る子どもが、会社勤めをする商店も散見される。苦しい思いをさせたくない親心が廃業予備軍を増やしており、将来に暗い影を落とす。
 もちろん現状に甘んじてはいない。「このままでは街が死んでしまう」「ホームランはない。フォアボールでもデッドボールでもいい。まず出塁すること」。今を“ラストチャンス”と捉え、再興策を次々と仕掛ける。消費者にも「できるだけ地元の物を買う」「この地の将来を考えなければ」との意識はある。再増税を前に、足元を固める動きがあることは救いである。

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安倍政権の経済政策=2

2014/12/9 火曜日

 

原材料費の高騰により商品の値上げを強いられた弘前市の洋菓子店。経営者は「ケーキは300円以内で、という理念でやってきたが、今は安いものでも300円を超えてしまった」と窮状を嘆く

 今回の衆院選で争点の一つに上げられるのが、安倍政権の経済政策「アベノミクス」に対する評価。金融緩和による株高・円安で経済回復への期待感が生まれたが、地方にまで効果が波及したかという点では疑問が残る。円安により輸出企業や大企業が恩恵を受けた一方、中小企業主体の経済構造である津軽地方では、原材料の高騰をはじめとした円安のデメリットが顕著。少子高齢化に伴う人手不足もあり、県内の事業者からは、疲弊が続く地域経済に対しての「特効薬」が求められているのが現状だ。
 日銀青森支店が10月に発表した県内金融経済概況は「緩やかに持ち直している」と総括したが、消費増税の駆け込み需要の反動が長引いていることから「景気のもたつきが生じている」と指摘。中小企業が9割を占める県内産業に景気回復の実感は薄いといえる。
 「商品の材料から包装紙まで、店で使う物は漏れなく上がった」と話すのは弘前市内の洋菓子店を営む男性。原材料の高騰という、円安の副作用が直撃した。主だった原料では、アーモンドが今年だけで5回も値上げ。昨年の倍にまで上がり、商品価格に転嫁せざるを得なくなった。「嗜好(しこう)品を売る立場としてはつらい状況。(政府は)大企業だけでなく、末端の企業にも情熱を注いでほしい」と窮状を語った。
 「アベノミクスと震災復興で潮目が変わった」との声が聞かれるのは建設業政府の方針を受け公共事業の受注は堅調だ一方で被災地の復興や東京五輪を見据えた労働者流出といった不安材料も抱える。弘前市のリンゴ移出業者社長も「人手が足りず選果やトラックの運転手の手配が難しくなっている。周辺産業が傷んできている、という実感がある」と危惧。県内の求人状況を見ると、現在は過去最高水準にまで回復。求人数が増えている一方で、人手不足が倍率を押し上げているという側面もある。
 前出の社長は「安倍政権の政策で、経済は悪くなってはいない。ただ、低成長の中で失敗できない―と、地域の事業者のマインドは冷えている。このままでは第3の矢(民間投資を喚起する成長戦略)は飛ばない」と話す。円安による収益性の悪化に加え、人手不足が顕在化。民間投資を活発化し、好循環化に至るには土壌が整っていないのが現状だ。
 青森地域社会研究所の竹内慎司主任研究員はアベノミクスについて「円安誘導による株高をつくったことが一番大きい」と評価しながらも、一方で「大企業に頑張ってもらわないと中小企業にまで恩恵が来ない構造。地方経済への波及速度や度合いはどうしても薄まる」と分析。「中小企業への手だても用意していく必要がある」と指摘している。

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高齢者と社会保障=3

2014/12/10 水曜日

 

年金の引き下げや医療費・介護保険利用料負担増の動き―。徐々に縮小する社会保障に高齢者たちは不安を抱く

 年金、医療費、介護保険―。少子高齢化により、社会保障は先行き不透明な状態が続く。2014年度、公的年金支給額は0・7%引き下げられた一方、消費税は8%に引き上げられた。「社会保障の充実・安定化に充てる」とうたった増税。しかし実際にその“恩恵”を感じられないままに、生活費の負担増に直結。年金暮らしの高齢者にとっては収入減・支出増になり、生活は厳しくなる一方だ。高齢者の胸中には、将来への不安や不満が渦巻いている。
 「高齢者が追いやられていく」弘前市内の1人暮らしの男性(74)は、今の社会保障制度をそう語る「最初に年金をもらった時より年間3万円は削られた。今年の春は1回の給付で(昨年より)2000~3000円少なくなってしまった」と生活が徐々に苦しくなっている実情を訴える。
 生活で負担を感じているのはこの男性だけではない。弘前市が10月にまとめた日常生活圏域ニーズ調査報告書によると、現在の生活の経済的な状況について65歳以上の高齢者の約7割が「苦しい」「やや苦しい」と回答。半数以上の高齢者が現在の生活に不安を抱えている状況だ。
 2年間の安倍政権で公的年金の支給額引き下げと消費税引き上げがなされた。さらには医療費・介護保険利用料の増額や、介護保険給付の対象から要支援者を除外するなどの方針が示されており、医療・福祉の面で社会保障の縮小が現実味を帯びてきた。
 男性は過去に脳卒中を患い、今でも1カ月に1度検査のため通院。診療代や薬代などを合わせると、最低でも月に4000円は掛かるという。さらには他の病院にも通院。医療費の支払いは生活する上で避けては通れず「これが2割、3割と負担が増えると何千円も違う。本当に(高齢者に)意地悪」と不満を口にする。
 同市の通所介護施設に通う1人暮らしの女性(83)は要介護2の認定を受けており、週に1回、通所介護サービスを利用。「主人の厚生年金があるから今は何とかやっているが、負担が大きくなったら少し苦しくなる」と将来に不安を抱く。
 「私よりも自分の年金だけでやっている人はさらに大変。(政府には高齢者の生活を)人並みに考えてほしい」と、現状に合った社会保障の実現に願いを込める。
 老化により、医療機関や福祉施設を利用する機会が増えるのは自然の流れだ。財政再建と社会保障の安定のための政策だが、高齢者が抱く生活の実感との温度差は大きい。男性は「年金は削られ、保険の支払いは増えてお金が出て行く一方で、高齢者が一番標的になる。あれも払わないと、これも払わないと―と考えると、年を越せるのかと思う」と不満をあらわにする。14日に迫った衆院選投票日。高齢者は切実な思いといちるの望みを抱きながら、投票所に赴く。

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米価低迷と津軽の今=4・完

2014/12/11 木曜日

 

大規模経営による稲作が行われてきた津軽地方の水田地帯では、今秋の米価暴落に衝撃が走っている(写真はイメージ)

 今秋、津軽地方のコメ生産者の間に衝撃が走った。主食用米の需要低迷と豊作による供給過多が重なり、全国的に今年産米の概算金が急落したためだ。本県の「つがるロマン」や「まっしぐら」の概算金も昨年より約3割安い60キロ7000円台に下落。その後も米価低迷に関するニュースが相次いだ。かつてない苦境に、津軽地方の生産者は「国がコメ作りを助けてほしい」「これでは息子に後を託せない」と悲痛な声を上げている。
 米価は東日本大震災の発生後、市場の品薄感に支えられ一時的に回復。だが、消費者のコメ離れなどを背景とした需要の減退傾向は変わらず、今秋の豊作でコメ余りが進んだことが、大幅な下落の要因となった。
 県内有数の水田地帯に属する五所川原市で約30ヘクタールを家族で経営する小野修身さん(40)は、概算金の暴落について「安くなると予想はしたが、7000円台まで下がるとは」と厳しい表情で口を開いた。
 1万円台なら農機購入時の借金を返済し、翌年に備える余裕もできる。9000円台以下だと厳しいやり繰りを強いられ、7000円台では必要な資金が残らない。小野さんは「不安だが、今は現実を直視しないようにしている」と苦笑いを浮かべる。
 西北五地域の大規模コメ農家の多くは長らく主食用米の多収栽培で収益を確保してきたが、今やそれだけでは経営が成り立たない。小野さんは国からの補助金額をある程度予想でき、経営見通しを立てやすい飼料用米を経営に取り入れている。「国産飼料を生産しつつ良い業務用米を出荷し、農地を守るのが大規模農家の役目。自分たちはコメ作りを諦めていない。その志を国に手助けしてほしい」と訴える。
 やはり水田地帯のつがる市稲垣地区で、水稲と花きの複合経営をしている男性(65)は「うちの田は4ヘクタールだからまだいい方で、周りは面積が増えれば増えるほど苦しんでいる。親としてこんな状況で勤め人の息子に後を託せない」とつぶやく。地方への波及を期待しアベノミクスを支持してきたが「今はどこを支持するか決まっていない。農業政策も参考にする。同じような人は多いと思う」。
 弘前市岩木地区は、リンゴと水稲の複合経営を行っている生産者が多い。同市宮地の村上稔さん(55)は「リンゴは台風で落ちる年もある。そういう時にはコメの収入でカバーしてきた」と説明する。
 ただ、再生産さえ困難なレベルに米価が落ち込めば“保険”の意味を成さない。村上さんの地元の集落営農組織では、米価暴落を機にコメ作りを離れたい考えの人も現れ「脱退者が増えると、残った人での運営が難しい。組織の解散話にもなる」という。
 村上さん自身も諦めの念が強く「都市の消費者は安さを求め、私たちの声は届かない。残念だが、どうにもならないというのが本音だ。自分もコンバインが壊れたらおしまい」と吐露する。

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