昨年2月、東京での朗読劇に臨む斎藤さん
パフォーミング・アート・センターの第9期生募集パンフレットで、熱心に実習に臨む姿が紹介された

 NHK―BS2で放送中の海外ドラマ「ER緊急救命室」やBSフジのアニメ「チャギントン」などに声で出演する。本業は平川市のあらや保育園の園長。声優デビューから4年たったが、軸足は今でも保育園にある。
 10年前、息子と娘が保育園を手伝い始め、時間的余裕ができ「感性を大事にする保育を心掛けてきた。自分の感性も磨いてみたい」と思うようになり「ずっと地元にいたので、冒険したい」と、声優らを育てる映像テクノアカデミア(東京)の門をたたいた。
 この時、47歳。ほかの生徒は10~20代ばかりで「私みたいなおばさんは珍しく、東京見物、園長の道楽かと思われた」という。保育園の仕事を終えた土曜日に上京、日曜日のレッスンを受けてとんぼ返りする忙しい日々だが「すべてが新鮮。小学校入学を楽しみにする子供のようだった」ことが疲れを吹き飛ばした。津軽のじょっぱり精神で臨むと講師の内池望博エグゼクティブプロデューサーが「やる気だな」と言ってくれたように、当初の偏見も消えた。
 前向きな気持ちはさらに加速。声優活動に役立つ芝居を学ぼうと、今度は声優野沢那智さんが代表を務めるプロ養成校パフォーミング・アート・センター(東京)に入学。オーディションを兼ねる舞台で、フリーディレクター佐藤敏夫さんの目に留まりER出演が決まり、声優としての一歩を踏みだした。
 あきらめようと思ったことは一度や二度ではない。「おばさんが声優を目指すなんて間違い」と思った。周囲からのねたみなどに泣く日もあった。それでも頑張れたのは「園児、職員らが『園長頑張れ』って言ってくれた」ことや、多くの講師の支えがあったから。悔し涙と同じぐらい、うれし涙を流した10年間だった。
 オフィスPAC所属のプロとはいえ、出演料は交通費などを差し引くと赤字だが、夢だったアニメ出演もチャギントンでかない、園児らも「園長のオルウィン(役名)」と喜んでくれた。声優は「お金以上のかけがえのない時間」だという。
 「自信を持って言える。年齢じゃない。やる気があれば前に進むべきだ」。絶対にあきらめない“泣き虫園長”の姿は、生きた教材だ。保育だけでなく「地域にも何らかの形で還元できれば」と考え、持ち前の行動力で新たな舞台に立とうとしている。