競合する大手企業が近所にやってきたらどうする?…。今回紹介するカネショウ株式会社(櫛引利貞代表取締役社長)は、大手企業の攻勢に長らく苦戦してきたが、独自の製法で差別化を図りこの困難を見事に切り抜けた。その結果として、1993年では従業員数30名、売上2億円だった会社が、2017年現在、1993年と同じ従業員数30名でなんと、売上5億円を上げている。生産性も2・5倍の会社に成長した。
 歴史をたどると同社は創業100年を超える味噌・醤油の老舗醸造元であったが、55年、石油ショックで景気は急激に悪化、苦戦が続いた。競合が激化し、中央の大手企業との競争となり、経営は赤字となった。先代は活路を見出すべく模索し、津軽のリンゴを原料としたリンゴ酢を製造販売したが、大手メーカーと製法が同じゆえ、味噌・醤油からリンゴ酢に主力製品を変えてはみたものの、苦戦は続いた。
 そこで同社が考えたのが差別化戦略。当時はそんな言葉さえ意識しなかったが、必死のもがきから考え出した。大手に勝つにはどうしたらいいか。同社の優位性は何か。価格では勝負できない。規模が違うから。そこで考え付いたことは、一つは優良なリンゴの産地、津軽に会社があること。そして、大手ができない手間暇をかけること。人海戦略を取り入れ、リンゴを丸ごとすりおろし、時間をかけ果肉を発酵させることであった。櫛引氏が社長となった95年からはさらに研究開発に力を注ぎ、マウス実験の結果、リンゴ酢には抗腫瘍効果があるという研究成果が得られた。98年にフィンランドで開かれた世界食品学会で発表。唯一無二の付加価値を得た。
 また櫛引氏は販売手法においても大手が容易に出来ないダイレクトセリング(直売)に注力した。工場直売だけでなく、DMやデパートの物産展に力を入れ、お客様に直接接して、声を聴き、40万件もの顧客名簿を獲得した。このことにより不動のカネショウブランドが誕生したのである。この積極的な経営で従業員の気持ちを束ね、新商品を次から次へと発売。2・5倍もの生産性アップが可能となった。ここに学びがある。マイケル・ポーターは、競争優位戦略として以下の三つの基本戦略があるという。コストリーダーシップ戦略。差別化戦略。集中戦略。今回は他社の製品・サービスの価値に対して、自社の製品・サービスの認知上の価値を増加させる差別化戦略と位置付けられる。
 櫛引氏は昨年、青森県中小企業団体中央会会長に就任された。青森県産を全国区、全世界国区なるべく発信されている。日本だけでなく世界の青森となる日は近い。
(青森県産流通システム研究所所長 牛田泰正)