コロナ禍の中での移住について考えるイベントに参加した葛西さん夫妻=昨年11月、弘前市

 新型コロナウイルスが流行して以降、都市部から地方に移住する動きが見られている。東京都では緊急事態宣言発令後の昨年5月、集計を始めた2013年以降初めて転出超過に転じ、6月にいったん転入超過となったが、7月以降は5カ月連続で転出が超過している。
 移住を支援するNPO法人「ふるさと回帰支援センター」(東京都)には、コロナ流行などを理由とした移住相談が増えており、同法人の高橋公理事長は「増加傾向は今後も続く」とみる。
 県や県内市町村でつくる「あおもり移住・交流推進協議会」(事務局・県地域活力振興課)によると、都内にある本県への移住相談窓口「青森暮らしサポートセンター」などにもコロナ流行を理由とした移住相談が寄せられている。
 東京一極集中の是正が叫ばれる中、地方回帰の動きは次第に活発化してきたが、その動きに都市部でのコロナの感染拡大が拍車を掛けた格好だ。
 社会に害悪を及ぼすウイルスを契機とした動きではあるが、人口減少に悩む地方にとって移住者の増加自体は否定すべき事象とは言えず、移住支援に取り組む関係者の中には「好機」と捉える向きもある。ただ、社会全体が通常と異なる状況にあり、移住者を受け入れる側に「コロナの時代」に即した意識と対応を求める声が上がる。
 昨年8月に東京都から出身地の弘前市にUターンした葛西利充さん(44)もその一人だ。青森市出身の妻春美さん(49)と二十数年ぶりのふるさとでの暮らしを楽しむ一方、本県を含め全国的に見られる、コロナに関する差別・偏見に強い疑問を感じているという。
 「私は幸い、差別を受けたことはないが、Uターンするまで不安はあった」とし、「(移住を促進するには)受け入れる側の考え方、態勢が非常に重要だ」と語る。
 その上で、県内に住む人たちに「東京イコールコロナ-ではない。憎むべきはコロナであって、人ではないはず。これがコロナを『正しく恐れる』ということなのではないか」と訴える。
 受け入れる側の意識改革、態勢整備の必要性については、移住者支援に取り組む青森市の一般社団法人「あおつな創出プロジェクト」の神直文代表(62)も強く指摘する。
 神代表によると、地方回帰の動きが叫ばれるようになり、移住希望者は増加傾向にあるが、移住先として人気が高いのは大都市圏の近隣。その傾向はコロナが流行した後も変化していない。
 もともと本県にとっては、移住を促進する上で大都市圏の隣県と異なる魅力を見いだすことが大きな課題となっており、県内の関係者はその点に悩み続けている。そこで神代表は「『人』をアピールすることが必要だ」と力説する。
 「人」とは移住者の相談に乗る人、世話役だ。移住にもUIJターンなどさまざまなケースがあることに加え、移住生活で重視する事柄も年代によって異なる傾向があり、神代表は「移住者個々への“オーダーメード”の対応が求められており、実践できる人材の確保が急務。県内各地にそういった世話役のネットワークをつくることも必要だ」と話す。
 コロナの流行に伴い、感染拡大が深刻な地域から地方への移住を希望する人が増える一方、それらの地域への差別・偏見も生まれ続けている。この状況を踏まえ、神代表は「移住者の世話役がより一層求められている」と強調し、感染拡大が深刻な地域の詳細で正確な情報発信の必要性を訴える。
 県内の各自治体・団体は、移住促進を地域の活力創造の一方策と位置付けてきたが、コロナ禍にあってその取り組み方が改めて問われている。