昨年10月の西目屋小統合40周年記念式典で歌う児童たち。村唯一の小学校として、地域住民とともに今後の発展を誓った

  このまま人口減少が続くと、2021年ごろには西目屋村は700人の村になってしまう―。そう危機感を募らせたのはおよそ10年前。当時人口は約1600人だった。関和典村長と村教育委員会の長利允弘教育長は、若い世代の移住・定住を図ろうと、教育環境の充実と子どもを育てやすい環境づくりに乗り出した。
 「平成の大合併」には加わらず、単独の道を選択した村は、08年に当時東北で初めて中学3年生までの医療費を無料化。09年には県内初となる3歳児以上の保育料を無料にした。その後対象をさらに広げ、17年現在で医療費は18歳まで無料、保育料無料化は0歳児から適応される。ほかにも妊産婦健診や中学生までの任意予防接種の全額負担、3年以上の居住で第2子以上への出産・入学祝い金も支払われるなど、子育てに対する支援は手厚い。
 15年春には全国的にも珍しい中学校教育の事務委託を開始し、西目屋中学校を隣の弘前市立東目屋中学校へと実質統合した。「事務委託がなければ15年度には複式学級ができていた」と長利教育長。学級数が減れば配置される教員数が限定され、専門外の教科を教えなければならない教員の負担や生徒への影響などを考慮した決断だった。
 保護者や地域の理解は深く、事務委託をしたことで生徒たちは弘前市内の中学校と同等な教育環境で勉学やスポーツ活動に励んでいる。
 村唯一の教育機関である西目屋小学校は、小規模校(12学級未満)のモデルケースとして注目が集まる。児童数は08年度の64人から16年度は45人と減少傾向に歯止めはかからないが、45人のうち約4割が村外出身家庭の子どもたちだ。
 小規模校ならではのアットホームな雰囲気で伸び伸びと学ぶ児童の後ろには「保護者からの厚い信頼がある」と長利教育長。大きな自治体では教育方針などが各学校に伝わりにくい部分があるが、村では教育委員会と現場の教員らの距離が近いため、「一つの意識で進んでいくことが強み」(長利教育長)となっている。
 教員からの人気も高い。長利教育長によると、数年前までは西目屋小への異動を希望する教員は少なかった。だが、教育に力を入れ始めてから希望数は増え、今では人気校という。
 小規模校の強みを生かした取り組みとして、西目屋小はいじめなどが原因で引きこもりや不登校になった村外の児童の受け入れにも積極的に門戸を開ける。同校の福井淳悦校長は「少なくとも保育園から中学校までの10年くらいを、村で子育てするのも選択肢としてあるのではないか」と語る。
 12年前に弘前市から村に移住した運送業の中島和也さん(45)は、妻の香さん(39)と小学5年生の長男、3年生の次男、1年生の三男との5人で定住促進住宅に住む。
 安くて広いアパートを探していたところ、村の住宅が条件に合ったため、当時4カ月だった長男を連れて移住した。「定住するつもりはなくて、軽い気持ちで引っ越した」と香さん。中島さんは「(西目屋は)遠くて不便というイメージがあったし、知らない土地で暮らす不安はあった。でも不安はすぐ無くなった」と振り返る。
 村教委が主管する放課後児童クラブで働く香さんは、PTA活動にも忙しい。「人数が少ないので何かしらの役割は回ってくる」と言うが「村に住んでいなければ、3人目はもうけられなかったかもしれない」とも。村民として「若い人たちや子どもが増えて活気ある村になってほしい」と願う。
 県内最小である村の人口は現在1400人を切った。村では昨年末、新たな定住促進住宅が完成。今回県外から初となる子ども連れの家庭が入居を予定している。白神山地の豊かな自然と「子育て応援日本一の村づくり」宣言を基盤に、人口増加へ向けて村は着々と歩を進めている。