ふらいんぐうぃっちの効果で来場者が増加した藤田記念庭園の「大正浪漫喫茶室」=2016年9月

 人気アニメなどサブカルチャー(サブカル)の舞台になった実在の場所を巡る「聖地巡礼」。各地の観光スポットだけでなく、一見どこにでもあるような場所ですら、観光地としての価値を持ち得るのだという可能性を示した最近の旅行スタイルだ。「聖地」を新たな観光資源として活用する自治体は全国的にも少なくない。
 2016年にアニメ化された「ふらいんぐうぃっち」(原作・石塚千尋さん、講談社・別冊少年マガジン連載)の舞台である弘前市でも、さまざまな取り組みが行われている。
 弘前観光コンベンション協会は15年に初めて、同作品を扱った聖地巡礼を企画した。舞台になった市内の各スポットを巡るマップ「チトナビ」を作成し、弘前市立観光館などで配布。弘前駅中央口には看板を設置した。
 アニメの放映が始まった16年には弘前さくらまつり、弘前ねぷたまつりとのコラボレーション企画を展開した。
 「予想以上の効果があった」と当時を振り返る同協会の白戸大吾観光振興部長。劇中で主人公らが訪れた藤田記念庭園洋館内「大正浪漫喫茶室」の来場者数は、15年6~8月が5880人だったが、アニメが放映された16年同時期は約2倍の1万2074人に達した。
 何よりも、アニメ冒頭部分で主人公が降り立つ同市下湯口のバス停など、観光地ではない場所に、多くの観光客の姿が見られるようになったのは驚きだった。
 「アニメなどと連携した取り組みは、地元にとって普段何気ない場所が観光地化する可能性を秘めている」と白戸部長は力を込める。
 放映から2年が経過した現在、ブームは沈静化している。当初の確かな効果を実感しつつも、市民からは急激な落差を指摘する声があり、現在を「つなぎ」の時期として、新たな取り組みを模索すべきとの声もある。
 同市中野で25年の長きにわたってアニメグッズ店「アニメディアブランコ」を経営する松岡保彦さん(64)は、「ふらいんぐうぃっち」アニメ化前の15年7月に同作品のグッズをプロデュースした。同店には現在も、県内外からグッズを買い求めに来店するファンが後を絶たない。
 松岡さんは「地元はブームが過ぎ去っていても、全国に根強いファンが居る。聖地巡礼で訪れるファンを大切にすべき。新たな取り組みで地元がもっと盛り上がれば効果を持続させられるのでは」と強調。「聖地巡礼で訪れる観光客は若年層が中心だろう。また訪れたくなるような仕組みづくりを」と訴える。
 実際、同作品のファンの活動は活発だ。全国各地から弘前を訪れ、交流活動に参加するファンも少なくない。市内で交流会などを主催してきた同市の会社員三浦裕基さん(23)もファンの一人だ。「作品には生まれ育った弘前の風景が登場するので、アニメに入り込んだような気持ちになる」と作品の魅力を語る三浦さん。
 「ファンの力で弘前を動かせないか」と思い立ち、17年2月に同作品にちなんだ雪燈籠を作るイベントを初めて主催した。今年2月にも行われ、全国から集まった約20人が力を合わせて作った雪燈籠が、弘前城雪燈籠まつりに花を添えた。「弘前と『ふらいんぐうぃっち』の魅力を伝えたい。活動が地元の盛り上がりにつながれば」と意欲を語る。
 ねぷた絵師としても活躍する三浦さんは、ファンが中心となって「ふらいんぐうぃっちねぷた」を制作・運行するという夢があり、実現に向けて現在計画を練っている。ファンの活動で新たな効果を生み出したい考えだ。
 「日本のアニメは世界的な人気がある。2020年の東京五輪に合わせ、各国からのインバウンドに向けた発信も行っていければ、さらなる効果が期待できる」と白戸部長。弘前観光コンベンション協会は、他作品も含めた新たな切り口での取り組みも検討している。熱烈なファンの力も生かしながら、アニメなどを活用した地域振興への模索が続く。