こぎんのシンメトリーを鏡で表現するなど、発想の意外性で注目を集める山端さん
白の寒冷紗に刺したこぎんの作品を説明する山端さん(今年4月)

 コンピューターグラフィック、LED(発光ダイオード)、プリント―。東京都在住のグラフィックデザイナー山端家昌さん(29)は、針仕事とは無縁に見える素材や道具を使い、こぎんの新たな可能性を模索、自身のウェブサイト「kogin(こぎん)」で提案している。
 例えばLED。2500個の小型照明をこぎんの奇数律に従って並べ、光の幾何学模様を作り出した。闇に浮かぶ光は和紙を通して柔らかく見せ、手仕事の温かみを表現した。
 また、立体作品「アクリル×kogin」は、2枚の透明アクリル板に白い毛糸を通して一つの模様を制作。糸が布を通過する様を立体化し、保温と補強のために生まれた刺しこの構造の美しさを示した。
 広告デザイン会社に勤務し「商品の良さを3秒で伝えなければならない仕事」をしている。「こぎんも、どうしたら振り向いてもらえるか考えている」と山端さん。「若い人に古くさいと思われているこぎんのイメージを、払拭(ふっしょく)したい」。
 弘前実業高校に通学していた頃、展覧会でこぎんの古い着物を見た。緻密な針運びとデザインの大胆さ。紺と白が織り成す世界はニューモードと見まがう新しさを覚え、衝撃を受けた。以来とりこになり、こぎんは世界に通用する「kogin」だと確信している。
 得意のグラフィックを活用し、いずれはこぎんの世界で独立を果たしたい。地元経済が潤い、雇用が生まれたらいい―。山端さんの夢は広がる。

 

 山端さんが制作した「寒冷紗×kogin」は、農業用資材の白い麻布に、白いモドコ(こぎん刺しの伝統模様)が散りばめられている。雪原に雪が舞う風景を表した、美しくモダンな作品で「農作物を寒さから守るために使われる寒冷紗と、保温性を高めるために刺されたこぎんが、自分の中でばっちりリンクした」と話す。
 山端さんの遊び心から生まれた作品には、雪国の厳しい環境を生き抜くため、受け継がれてきたこぎんへの愛情が込められている。「こんなにきれいな刺しこ模様は、世界中探しても他に見つからない。こぎんを愛し過ぎちゃって、どっぷりです」と笑う。
 創作の原点はモドコの美。現代の若者に何とか伝えたいと考え、固定概念にとらわれずにさまざまなアプローチを試みる。「『何だこれ』と、まずは足を止めてもらいたい。最終的に古作のこぎんにたどり着くための入り口になれればと思っている。古作の魅力は揺るぎないもので、頂点だから」
 昨年12月に「第1回古作こぎん研究会」を東京都内で開くなど、古い着物などに見られるモドコの調査研究も行っている。こぎんは、女性たちが奇数律を守りながら新しい模様を考え、競い合って刺すことで完成度が高まっていったとされる。山端さんは「(モドコは)数百種類あると言われている。デジタルデータ化し、記録として残すべきではないか」と考えている。
 今春、弘前市が桜の見物客でにぎわう大型連休にぶつけ、初個展を開いた。おいらせ町出身の山端さんにとって、弘前は高校時代を過ごした第二の古里であり、ライフワークとなったこぎんとの出合いの場所であり、何よりも受け継がれてきた地元だ。
 反応は良く、8日間の会期でおよそ400人が来場。モドコを編んだニット帽や、プリントの包装紙、シールなどの商品が飛ぶように売れた他、商品開発や学校教材などの依頼、問い合わせが相次ぎ「こぎんグッズの需要は多い」と手応えを感じたという。
 「『伝統だから大切にしよう』というだけじゃなく、地元のエネルギーにしたい。地元住民の生業(なりわい)となり、経済が回る仕組みをつくることが目標です」