参院選の争点の一つである憲法改正では、自衛隊が明記されるかどうかも注目される※写真はイメージ

 自民党が参院選の公約の一つに掲げ、安倍晋三首相が強い意欲を示すのが憲法改正だ。集団的自衛権の行使を否定する従来の憲法解釈を変え、他国も武力で守れる限定的容認へと安全保障政策が転換する中、自民党は改憲の方向性として、現行の平和主義を継承しつつも自衛権の発動を妨げず、国防軍保持を明記するとしている。
 弘前市の自衛隊OB(78)は「憲法改正は必要」と断言する。「自衛隊は昔から憲法違反の存在と言われてきたが、自衛隊の任務は戦争ではなく国と国民を守ること。憲法に従って国を守れるなら、そうなってほしい」
 陸上自衛隊弘前駐屯地に近接する同市狼森町会の齊藤英蔵町会長(69)は、周囲のリンゴ農家の作業を長年ボランティアで手伝うなど、地域と交流しながら任務に励む自衛隊員を間近にし、親しみを感じてきた。
 「東日本大震災で、自衛隊はひときわ存在感を示した。時代にそぐわない憲法なら見直しは当然。自衛隊が戦争に行かずに済むよう政治家が外交することが重要では」と話す。
 津軽唯一の米軍駐留地つがる市。米軍の早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」が2006年に国内で初配備され、航空自衛隊車力分屯基地に隣接する米陸軍車力通信所で運用されている。日米安全保障体制や自衛隊の存在を身近に感じる車力地区住民は、どのように捉えているのか。
 長年同基地の活動に協力している男性(82)は「防衛に米軍の力は必要だが、頼りっ放しなのはどうなのか。自衛権は何がどこまでできる権利なのか、議論を深める必要がある」と語気を強める。
 17年に相次いだ北朝鮮の弾道ミサイル発射時には、車力地区が標的となる不安も感じた。「だからこそ、国はしっかり国民を守る体制を整えてほしい」
 分屯基地がある同地区富萢町の男性(72)は「自衛隊員に危険な目に遭ってほしくない。周囲も現状維持が良いとの声が多い」と改憲反対の立場だ。「改憲にも一長一短があるはずだが、国がどこまで情報開示しているのか不明。最近は国への信用度が薄れている」と不安をにじませる。
 弘前市内の50代弁護士男性は改憲論議に「自衛隊に賛成、反対の議論は切り離すべき」と、そもそもの議論がかみ合っていないと指摘。改憲に対しては「端的に言えば、立憲主義の破壊につながる可能性があると懸念している」と話す。
 「憲法とは国家権力を制限するもの。自衛権の行使の限界が定められずに自衛隊だけ認めるとなれば、憲法が国家権力を制限する機能が壊されてしまう」
 憲法を専門とする弘前大学人文社会科学部の河合正雄講師も「憲法は国民ではなく国家権力を制約するもの」と強調する。「時代の変化で変えるべき部分は変えてもいいが、権力を縛る方向か、緩める方向なのかが重要」とし、自衛隊を明記した場合も制限がどちらに向かうのか考えるべき―とする。
 「自衛隊は明記されないまま合憲とされる形で、活動に歯止めがかけられてきた。現行枠で、自衛隊員が紛争に巻き込まれにくくなっているのも事実」と指摘。「憲法に明記されない自衛隊が気の毒という議論ではなく、憲法改正が実務に与え得る影響を冷静に議論すべき」とし、そこを出発点に議論を深める必要性を訴えた。